第七話「研究施設の罠と多腕の男」
『クリア、病院か...... それなら麻薬もつくれるだろうが、ネクロマンサーもいるってことか。 まあそれよりハリザってあいつ信用できるのか。 私たちを利用するつもりじゃないのか』
「わからない。 ただかなりの実力者だよ。 下手に深く追求して戦いになるよりはましだ」
『まあな。 あれは厄介そうだ。 それでカイルは何て言ってる』
「どうやらクリアは政治家とも繋がってるらしい。 あながちハリザさんのいってたことは間違ってないってさ」
『それで警察や国安に連絡して捜査できないのか』
「証拠がない。 それにあの工場に捜査員を派遣するのは危険だ。 もしハリザさんの話をきいたマフィアと鉢合わせしたら被害が大きい」
『だな。 それでここか』
町の郊外に壁に囲まれた建物がみえていた。 その門は厳重に鎖がまかれ閉じられている。
「ああ、カイル隊長の話だと、移動なんかを考えると、この町には研究している施設があるはずだって。 そのなかで特に怪しげなものがここだ。 所有者不明、人の近づかない郊外、そして大きな場所」
『確かになにかありそうだな』
「さてどう調べようか」
『私がはいってみてくるよ。 お前の紙蛾だと、もしネクロマンサーに見つかるとまずい』
「......確かにハリザさんのときのこともあるね。 でも必ず定時に報告で帰ってきてよ」
『わかった』
そういうとミーシャは壁を乗り越え敷地へ入っていった。
「カイル隊長は人員を揃えてから捜査したいといっていた。 でも早くとめないと嫌な予感がする......」
(感染症...... まさかあのリジェクトがかかわってるんじゃ)
暗くなる頃、ミーシャがかえってきた。
「どうだった」
『......ちょっとまずいことになってるな』
「えっ?」
『あのリジェクトがいやがった』
「えっ!? 本当に!!」
『ああ、しかももう一人いた。 そこにいた白衣を着た医者のようなやつ、そいつはリジェクトにディジーズと呼ばれていた』
「やっぱりディジーズか。 ユグナさんが見たローブの男かもしれないな...... 医者か、薬や感染症には詳しいだろうね」
『ああ、だが本格的にやつらは何かやらかすきだ。 早く止めよう!』
「......カイル隊長に連絡して手をうったほうが」
『そんなこと言ってる場合か!』
強引にミーシャに裾をかまれ引っ張られる。
「やっぱり連絡して待機したほうがいいんじゃないか」
ぼくたちは建物へと近づく。
『バカ、せっかくここにやつらがいるんだ。 逃げる前に捕らえればやつらの計画も組織の全容もはかせられるだろ』
「ただリジェクトはネクロマンサーだ。 おそらくかなりの使い手。 ぼくたちが二人で連携してるのもばれてる」
『まあな...... だが今すぐにでも、こいつらを止めないとまずい』
(それは確かにある。 なんでわざわざこんな面倒なことをしているのか。 その目的のわからない不気味さと、この陰謀の規模の大きさが気にかかる。 それにリジェクトが関わってるとなると......)
ミーシャと建物の裏手につく。
『外も中も警備はいない』
「なんで......」
『それだけ自信があるか、不用意に人を集めないことで、尾行などをつけさせないためだろう』
「あの工場には安易に近づけたのに?」
『......やつらは話していた、あの工場はわざとマフィアに襲わせるつもりだ』
「じゃあ、向こうは」
『......ああ、罠だ。 つけさせて、襲ってきたやつらを逆に狩るつもりなんだろう』
「そうか......」
『そんな顔をするなよ。 あいつらはマフィア、人のいき血を吸うことを生業にしてるやつらだ。 やばい仕事をする以上命をかけるのが筋だろ』
「それはそうだけど」
『いまはこっちだ。 集中しろ』
「わかった。 でも罠の可能性もある」
『ああ、最悪はな。 だがそれでもやらないといけない』
壁を越えて敷地に侵入する。 建物の裏側にいき、ミーシャが窓からはいって確認して中に招いた。
そこは無機質なコンクリートのうちっぱなしの通路だ。 左右に部屋がありそこは研究室のようだが、明かりはない。
『左右の部屋に人はいない...... どうやらやつらはこの先の部屋にいるみたいだな』
ドアのある奥の部屋をのぞきにいったミーシャはうなづいた。
ぼくは拳銃のシリンダーをはずし、弾丸を確認して戻す。 ズボンのポケットにはすぐに弾丸を込められるようスピードローダーも、胸のポケットにも弾丸もいれていた。
(よし......)
ドアをあけ中に入る。 暗いそこはとても広くおかれた棚に隠れて進む。 すこし明かりがついたところに影があった。
それはリジェクトと白衣でメガネの細身の男だった。
「やっぱりきたのねクルスとミーシャだったかしら......」
そうリジェクトは微笑んだ。
(やはり、罠!!)
「ミーシャ!」
『わかってる! 彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 石猿』
盛り上がった地面から石のサルが現れる。
石サルはリジェクトを捕まえようと両手を広げた。
すると、白衣の男が前にでてサルの手を巨大な腕でつかんで止めた。
『そんな!? 石猿の力を人間が止めるなんて! いくら腕が太くてもありえない!』
「違う! よくみてミーシャ! あいつの腕!」
白衣の男の腕が太いわけではなく、複数の腕が絡んで太く見えていた。




