第六話「キャリアの影と感染症の謎」
「それで、あそこはなんだったの」
『......薬の工場だ』
ミーシャはすこし言いづらそうに答えた。
「薬、キャリアの工場。 それであそこにいたのは誰、マフィア?」
『何かの組織だ。 多分マフィアとは違う......』
「どうしてそう思うの?」
不思議に思い聞いた。
『あそこにあったものをみた』
「あそこに...... 何かの機械と何かの肉片」
「ああ、あれはディシーストだ。 ベースが人間のものだ』
「嘘でしょ! あれが人間! そんな簡単に作れるわけない!」
『ああ、普通の人間ならな』
「普通の人間...... まさか」
『ああ、あれは頭だけだった。 いや正確には脳だな』
「脳...... 一部分ってこと!? それじゃ麻薬の正体ってまさか......」
『ああ多分、脳内から成分を抽出している』
「いや、脳内物質なんて直接接種しても分解される。 麻薬になんてならない...... いや」
『そう普通ならな。 あれはネクロマンシーを使って甦らせた異質な脳だろう...... それを特殊な精製方法で脳内物質を薬物にしてるのかもしれないな』
「術を使った麻薬、それを使って依存者を作っている。 お金を稼ぐわけでもない。 なんのために」
『まだわからないが、最初に黒スーツの男が話していたことがある......』
「なんていってたの」
『【ディジーズ】というやつへの伝言だ。 依存性と肉体への感染実験の成果......』
(ディジーズ......)
「感染、なにか病気か。 取りあえず隊長に報告しよう」
ぼくたちは隊長へ連絡することにした。
「連絡してきたよ。 あっ!」
連絡をおえ、公園にかえってくるとミーシャはいつの間にか、ベンチでソーセージを食べている。
「だめだよ! そんなに塩分のあるもの! ネコは腎臓が弱いんだから!」
『こっちは毎日味のうすいものばっかりなんだぞ! この体はどうせ死体なんだからちょっとぐらい平気だ!』
そういうとミーシャはソーセージを腕で隠して食べきった。
「全くもう...... そのソーセージどうしたのさ」
ミーシャのみるほうにフライパンをもつ怒った人がいた。 精肉店の店員らしかった。
ぼくは平謝りして弁償した。
『で、カイルはなんだって』
ミーシャは満足そうに手をペロペロなめるとそう聞いた。
「調べてみると、キャリアって裏社会にかなり広がりつつあるらしい。 もちろんマフィアたちが黙ってるはずもなくて、それを扱う売人を狩っているそうなんだ」
『そりゃ、そんなものただで与えられたら商売できないしな。 それで』
「ただ、そのマフィアたちも失踪や死んでたりしている。 だからマフィアはかなり神経質になっているそうで、野良のネクロマンサーを雇ってしらみつぶしに探ってるそうだ」
『みたいだな......』
ミーシャが毛を逆立てている。 みると公園の地面の土が盛り上がり何かがでてきた。
「あれは蝉......」
蝉が地面からでてくると弾丸のように飛んできた。
ベンチに隠れると蝉はベンチの背もたれを撃ち抜いた。
「くっ! ネクロマンシー、ミーシャはいつものように!」
(どこから攻撃している! 操ってる蝉の数からおそらく近い!)
周囲を見回す。 正面の木に人影がみえた。
(あれか!!)
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ...... 跳蛙弾!」
はなった弾丸は蛙となり、木の裏をうちぬく。 何かが割れた音がした。
「なんだ...... うっ」
後ろから頭に何かを突きつけられる。 おそらく銃だ。
(いつの間に後ろに......)
「......動くなよ。 動けば頭を吹き飛ばす」
そう低い声がする。
「あなたもね」
「なに......」
振りかえると、こちらに銃をむける白いスーツと帽子の男がいて、その後ろからミーシャの土のサルが、男のその首に手を掛けていた。
「いつの間に......」
「すぐ殺さなかったということは、情報がほしいのでしょう。 互いに情報を教えあいましょう」
「......どうやらあいつらの仲間ではなさそうだ。 わかった。 話をしようか」
そういって男は銃をさげた。
その人はハリザといい、マフィアに雇われたネクロマンサーといった。
「なるほど、キャリアをおって...... その若さで元ネクロマンサー部隊とはな。 恐れ入るぜ」
情報をえるため状況を嘘を交えて話した。
(この人も動きが普通じゃない。 多分元軍人だな。 向こうにいたのに急に後ろに...... あれはどうやったんだろう?)
「それでハリザさんもあれをおって」
「ああ、マフィアにとっては死活問題だ。 ただであんなものをばらまかれる上に、使用者をつかいものにならなくさせられてはな」
「それでマフィアは探ってたんですか」
「ああ、それで手下やネクロマンサーを雇ってアジトや工場を探させた。 だがことごとくやられた。 俺もやっとのことであの工場を見つけた。 そこで君が蛾で調べてるのを見た」
(みられていたのか、全く気づかなかった。 殺す気があったら死んでたな。 紙はあまり使わないようにしよう)
「それがまさかネクロマンシーを使った薬とはな。 まああの薬の効果からまともなものじゃないとは思っていたが......」
そういってハリザさんはベンチに座るとタバコに火をつけた。
「それで、他にわかったことはないんですか?」
「そうだな。 あの薬の常習者は、何らかの感染症を患っている」
「感染症......」
「ああ、とはいえ感染力は弱い。 せいぜい風邪程度だ。 何かの実験だろうが、詳しいことまではな。 ただ【クリア】という病院に関わっていることまでは調べた」
「そこまで話していいんですか」
「俺の任務は終わったからな。 工場の位置の特定で契約は完了だ。 あとは雇い主に伝えてさよならだ」
そういうとハリザさんは手を振り去っていった。




