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第五十九話「ミーシャの決断」

「どうしたミーシャ!?」


 ミーシャは答えない。


『............』


「そのものは死を望んでいるのだ」


「そんなわけが......」


『私は......』


 ミーシャは言葉に詰まる。


「そうなのか。 やはり、ディシーストになったのが...... ぼくが間違ったから」


『ちがう! それは...... ちがう。 でも罪がなくなるなら、救われるかもしれない』


「そうだ...... 生きていくことに苦痛な者は多い。 そなたはそのものにもこの先苦しみを背負わすのか」


「それは......」


(ネコにされたミーシャが苦痛なのは、ぼくのせいだ。 だが)


「まだ、体は生きている。 もとに戻れる可能性があるんだ」


『クルス、ちがう......』


 ぼくはメシアにむかって走り近づくと、ナイフをメシアの体に突き立てる。 


 ガキンッ!!


 だが硬質化したその肌に弾かれる。


(やはり、肉体を結晶化できるのか! だが戦闘技術があるわけではない! これさえ貫ければ勝機はある!)


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 鍬形スタックビートル


 ナイフを投げるとクワガタになり、メシアへむかいかじりついた、


「楽園に先にいくがいい...... 石熊ストーンベア


 メシアが石床に触れると、現れたクマはクワガタをはたきおとした。 そのクマはこちらに向かいせまる。


(あんな大きな動物まで簡単につくれるのか!)


 巨大なクマは目の前で立ち上がるとその腕を振り下ろした。


(盾で受けると折れる! 避けられな......)


 その瞬間ミーシャがぼくにぶつかり直撃はかわすが、クマが地面を砕いた衝撃で飛ばされた。


「がっ!!」


『ぐぅ!!』


「ミーシャ...... ミーシャ!!」


『ぐっ、大丈夫だ......』


「抵抗すれば苦しむ。 その場で静かにしていれば楽園に送ろう」


 そう悲しそうな顔をしてメシアはいう。


(ここで諦めれば、メシアが更に自我のあるディシーストを産み出し、いずれ人々を滅ぼす) 


「......ミーシャ、ぼくは君がどう思おうと、君が生きていてよかったと思っている。 それがどれ程の大罪だとしても......」


『クルス...... 私は』


「ぼくはメシアを倒す。 彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 護謨甲虫弾アイアンクラッドビートルゴムバレット!」


 ぼくの放った弾は甲虫となり、クマにあたった。 


「グオオオオッ」


 頭を砕くと結晶がわれクマは後ろに倒れ崩れた。


(やはり、地面から産み出しているから、頭に星幽石がある。 メシアの体ほどの強度はない。 あれは星幽石を圧縮してあの強度なんだろう。 それなら!) 


「抵抗すれば、苦しむだけだ...... 安らかな死を受け入れよ」


 メシアはあわれむようにこちらをみていった。


「あなたは人間をみてきたのだろう。 それならみんな悪ではないことも知っているはず」   

  

「無論...... だがこれからも悪意はつづき、罪なきものも罪をおかし、更なる苦しみの連鎖にみなが苛まれよう」


「それならば、ぼくたちか生まれてきたことすら罪なのか」 


「そうだ。 そなたたちは苦しみを受けるためだけに生まれた」


「ちがう...... みんな罪をおかしても、その苦しみに抗って生きている。 生きたいんだ!」


「抗う必要などない...... 苦しまず楽になればいい。 人間が私を産み出したのはそのためだ。 苦しみから逃れるがゆえに、人は罪をおかし更に苦しむ、その悪しき循環を断ち切るために私は産み出されここにいる......」


 リボルバーの最後の弾を入れた。


(これで弾は終わり......)


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ...... 蜂鳥弾ハミングバードショット


 うちだした弾をハチドリとなってまいメシアへと向かう。


「無駄だ......」


 ぼくは走り出すと、浅蜊刃クラムナイフでメシアの首を狙う。


「何をしたとて......」


 ガキンッ 


 その首にナイフがあたりはじかれた。


「いけ!!」


 その瞬間逆側からハチドリが首にあたった。


「ぐっ...... なに」


 ハチドリが首を撃ち抜く。


(体を硬質化してる以上、動かすには柔らかい箇所が必要! だから逆は強度がない!)


「......だがこの程度の傷など......」


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 【銃鵙剣】《シュライクブレイド》!!」


 ぼくはリボルバーをモズの剣に変えて、穴があり固くなれない首を叩ききった。


「がっ......」


 地面にメシアの首が転がる。


「......ミーシャ」


『話さないといけないことが...... クルス!』


 後ろを振り向くと体になにかが貫く感覚があった。


 みると首のないメシアの体が結晶の剣でぼくの体を貫いている。


「ぐっ......」


『クルス!!!』


「......当然だろう。 私は星幽石からできた体だ。 首を落とされたとて死ぬこともない。 死ぬこともできない」


 地面に落ちたメシアの首がそう話した。


(ダメだ...... ミーシャ逃げ......)


 薄れゆく意識でミーシャをみる。


『彷徨える魂よ、その魂よ、輪廻の理を狂わせ、この新たな器へとその魂を呼び戻せ!』


 一瞬でとんだミーシャがメシアの体に触れるのがみえた。


「なにを...... まさかその術......」


 メシアの体は星幽石へとかわっていく。


(あれは魂をうつすネクロマンシー。 やったのかミーシャが...... 確か、前にも......)


 昔のあの時のことを思い出したながら、そのまま意識をうしなった。

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