第五十六話「シニアの真意」
「この奥がいくつもの大きな部屋になっていて、そこに議員たちは避難しているはずだ」
通路を走ると奥に部屋がみえた。
「あぶない!」
エルダリィーさんにおされると、目の前を光るものが通りすぎた。
「またはずしたか......」
『お前!!』
そこにいたのはグールだった。
「こいつは俺がやるよ」
エルダリィーさんが前にでた。
「一人じゃ!」
『そうだ! こいつは殺人を楽しむやつだぞ!』
「いや、白き聖者がやってることを阻止するには、お前たち二人の方がいい」
「三人とも殺すに決まってるだろおぉ!」
体中からヒレを出したグールがせまる。 エルダリィーさんはポケットからいくつものゼリーの容器を投げた。
「なめるな!」
そうグールがヒレで容器をきる。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【膠化海月】《ゲルジェリーフィッシュ》」
ルケイドさんは飛び出したゼリーに針を投げる。 ゼリーは集まり巨大なクラゲとなり、グールをとらえた。
「な、なんだ! 切れない!」
「後輩の前でいいとこみせさせろよ。 さあ、二人とも早くいけ」
「いこうミーシャ」
『わかった!』
ぼくたちは先を急いだ。
先に進むと、そこは石柱が何本もたち、神殿のようになっていて、政治家たちが精気のない顔で座り込んでいる。
「来たわね...... まだ儀式の途中なのに」
そこに人狼となったリジェクトがいた。
「メシアを復活させるつもりか」
「そうよ」
「メシアを復活させてどうするつもりなんだ......」
「私たちをお救いしてもらうのよ。 あなたたちもそうでしょう。 同じ哀れな人外......」
「なにを......」
「殺してまたすぐに甦らせてあげる!」
リジェクトは地面を蹴り、目の前に迫る。
『彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 骸黒豹』
「グゥッ」
ミーシャはクロヒョウとなり、腕に噛みついてとめた。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 蟻散弾」
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 【甲殼鎧】《シェルメイル》」
リジェクトの体が殼に包まれ、アリをはじいた。
(体に仕込んだディシーストか!)
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 【猿腕】《ゴリラアーム》」
リジェクトから新たにサルの腕がでて、ミーシャをつかんで投げた。
『くっ!!』
(あの体ハリザと同じ...... もうスズメバチはない。 ライミーアさんもいない。 これで......)
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ」
ぼくはリボルバーで六発の弾丸を撃ち込んだ。 それはリジェクトにあたるが効いてはいない。
「弾けなかった。 なにかを仕込んだみたいね。 でもこの甲殻を貫くのは無理よ」
そうミーシャをつかみながら、リジェクトは笑う。
「いいや...... いけ【紋花蝦蛄】《ピーコックマンティスシュリンプ》」
バチンッバチンッと大きな音がする。
「なんだ...... この音、私の中さっきの弾丸! ぐっ! がっ! これは」
「その殼は骨でつくったもの、内部は筋肉のはず。 そのモンハナシャコは捕脚は時速80キロで跳ねる。 例え骨でも壊す」
(シーナさんからもらったディシーストだ)
次々と音がなり、リジェクトは苦しんでいる。
『彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 甲虫爪!!』
ミーシャはそのすきをつき、首をそのカブトムシの爪で切り裂いた。
「ガフッ、や、やられちゃった...... わ...... でもあなたたちも...... すぐにね」
そういうとリジェクトは動かなくなった。
バン! バン! バン!
「なっ! 政治家が!」
風船が割れるような音がすると、腹部が膨らんだ政治家たちが、次々弾けるように破裂した。
『これは真人教の時と同じ』
「そうだ......」
そういうと、奥からシニアが杖をついて現れた。
「やはりあなたは白き聖者の一員か...... なぜこんなことを!」
「......決まっている。 この件が片付いたとき、帝国と戦争するためだ。 こやつらは生け贄になってもらう」
「そうまでして、なぜメシアを甦らせようとする」
「......この国のためだ」
「皇帝は白き聖者が操っていただろう!」
「......それでも不満をもつものはでる。 それをさせないため出る杭はすべてうち、この国が帝国含め全土を平定する。 お前も軍人ならば、それに従うのが筋だろう」
『ぬかせ! そんなものいずれ崩壊する! 白き聖者が絶対なら、とっくにそんなことはできているはず!』
「あれはロードの邪魔が入ったからだ。 我らの同胞の血であがなって独立したこの国を守らねばならん......」
「この国のため...... 白き聖者はそんなことは望んでいないだろう」
「そうだな。 だがお前たちが全てを倒してくれた。 もはやそれを止める白き聖者などいない。 あとはお前たち黒き使徒だけだ......」
老人とはおもえない、強い目でシニアはこちらを見据えた。




