第五話「麻薬キャリアと工場の影」
ぼくたちは地方都市、アルケンにきていた。 カイル隊長からこの町の調査を命じられたからだ。
『なんで私たちがこんなとこに来ないといけないんだ』
そうミーシャはぶつくさいっている。
「ぼくは子供だからね。 制服さえ着ていなければ警戒されづらい。 それにミーシャは狭いところにはいれるし、諜報にはもってこいの人材、いや猫材だからだよ」
『......のわりには、給料も安いし、納得いかない』
「まあ、国の財政も苦しいからね。 公務員の給料も簡単にはあげられない。 ただでさえ高い国民の不満を今の政府じゃおさえられないんだからさ」
『はぁ、こっちは命がけなんだぞ......』
ミーシャはため息をつきとぼとぼ歩く。
「それより、あれだ」
町の路地裏の暗がりで、何人も恍惚の表情でたばこのようなものを吸うものがいる。
『麻薬か......』
「うん、新種らしい。【キャリア】っていうらしいよ」
『特性は』
「依存性はかなり高い」
『まさににもってこいだな。 いくらでも金を巻き上げられる』
「いや、依存性が高すぎるから、すぐ廃人化して死ぬらしい」
『は? そんなものマフィアがあつかうか? それじゃ金を手に入れられないだろ』
「ああ、だからどうも出所がわからない。 ただかなり高度な技術でつくられてるらしい」
『そこらの弱小マフィアなんかじゃ作れない代物だな。 だけど麻薬なら警察なり自警団なりが調べればいいだろ』
「やってるらしいけど、失踪者がでてる」
『まあ、裏社会が相手じゃな。 それでも私たちが調べるものか?』
「......実は国家安全局の人間も失踪してる」
『国安の職員が!』
国家安全局──この国の情報機関。 治安のための情報収集や捜査を行う。 政治家、官僚なども逮捕できる強い権限をもつ。 軍や警察のエリートから選ばれる。
『戦闘技術もある。 私たち軍の特殊部隊と双璧だろ。 それが失踪......』
「そう、だからただのマフィアと違う。 あのネクロマンサーの組織なのかもしれない。 それでぼくたちだ」
『なるほど...... それでどう調べる』
「出所を調べたいけど、ぼくたちが手に入れるのは無理だ。 怪しまれるからね」
『なら私の尾行だ』
「まって。 ぼくの蛾の方がいい」
『お前のそれは危ないだろ。 私がいくから、遠くから追跡しろ』
そういってミーシャが中毒者の一人をマークする。 ぼくは紙から【紙蛾】《ぺーパーモース》をつくり、ミーシャの上空から追わせる。
ネクロマンシーで作ったディシーストは、視覚など五感の共有できるが、繋げると衝撃もフィードバックされ、共有ダメージにより死ぬこともある。
(紙の素材だから攻撃には気を付けないと、もう少し強度があるものを使いたいけど、この星幽石から生成した特殊な紙でしか、飛ばせないしな)
上からみると中毒者はふらふらしたり、突然静止したりしていた。
(急に止まるのはかなり重度の中毒だな。 最初は快楽でも、あとからは苦痛の緩和させるために使うって、ライミーアさんがいってたっけ。 彼らは何から逃れようとしたんだろう......)
それから夕方になると、中毒の男は路地の奥へと進んでいく。
他の中毒者らしきものたちも、わらわらと集まってきた。 そして先にはスーツを着ている男がケースをもって現れた。 すると我先にと手を出す。 男はケースから錠剤をだすと皆に配り始め、何事か伝えるとすぐにきた方向に帰った。
「これが売人...... でもお金を受け取ってる風でもない。 金銭目的じゃないのか」
ミーシャは男のそのあとをおう。
(ぼくも近づいて追跡したいが、尾行に気づかれてもまずい。 だがあまり遠くにいくと、ぼくの術の範囲外になる。 そのギリギリを追跡しよう)
ぼくは男のでてくる方向の表通りを、店をみるふりをして歩く。
男が現れると、店頭で食べ物をかいやり過ごし、男が動くとそれをもって公園へと向かう。
ベンチで男の様子を伺うと、黒い車が現れ、すぐに男は乗ると去った。 ミーシャはその屋根へと乗るのがみえる。 そのまま映像は途切れた。
「まずい! 範囲外になった! あの方向、町の外」
離れていった車の方向に、止めた客車にのり町の外へとでた。
(くっ、どこにいった! 飛ばしてもらったから、もう追い付いてもいいはず)
別の町にきて周囲をみるも、止まっている車はない。
(どうやっておうか。 男がのっていたあれは珍しい車だったな)
更にもってきた紙に術をかけ直して上空にとばし、町をみる。
「あった!」
あの黒い車が建物の前にとまっている。
ぼくはその場所にむかった、そこは工場区域のようだ。 近くにあった公園のベンチに座る。
(これ以上近づけない。 工場は子供がはいるには不自然な場所だ。 紙蛾で調べよう)
蛾を工場へと近づけさせる。 その工場の扉は閉ざされていて、窓際にいくと隙間から銃をもつ者が複数みえた。
「すごい厳重な警備だな。 やはりマフィアなのか」
工場の通気孔を通り中にはいる。 そこは薄暗い場所で電球がチカチカついていた。 やはり上からみても何人も警備しているものがいる。
「暗い...... ミーシャはどこだ」
機械の音が聞こえている。 なにか機械の奥で容器にはいった赤いものがみえる。
「なんだ......」
よく目を凝らすと、そこは並べられた無数の何かがみえる。
「あれは!!?」
その時、ゆっくり上から捕まれた。
「なんだ!?」
『動くなよ、おまえは感覚共有してるだろ。ここはまずい』
小さな声でミーシャがいった。
『帰ってから話す......』
しばらくしてミーシャは公園にきた。




