第四十七話「皇妃の正体」
『地下か...... ただ普通に忍び込むのは難しいな。 そこら中に蝶が見張ってやがる』
ミーシャはベッドの下に隠れてそう話した。
「白き聖者はなぜここにいるんだろう。 共和国を滅ぼして、帝国に統一させるためかな」
『......だろうな』
(ただ歴史上、災厄を起こしたとされる。 帝国が起こる前からいたはずなのに...... それを含めて調べないと......)
『私がいってくる』
「危険だけど、ミーシャのあのディシーストならいけるか」
『ああ、まかせとけ。 彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 写鏡蟻」
ミーシャの首の鏡が分割され蟻が生まれると、ミーシャの体にのった。 するとその姿は見えなくなった。
「すごいな見えない」
『ああ、これは文字をコピーするだけじゃなく鏡で光を屈折させて見えなくできる。 これで門番に鞄にいても怪しまれなかったからな。 さすがシーナだ』
そういうミーシャの声だけした。
ミーシャがでていってしばらくたつと、慌てた様子で侍従の女性、カリナさんが部屋にはいってきた。
「どうしたんですか?」
「......あ、あの、私」
ただならぬ雰囲気のカリナさんを落ち着かせる。
カリナさんは、ムーアさんの前に入った人らしい。
「落ち着いてください。 何があったんですか」
「実は......」
彼女がいうには、夜トイレにおきて部屋をでると、城内に場違いな白いローブの子供がいて、おかしいと思い後をつけたのだという。
「ち、地下まで追いかけると、そこの部屋では台に大勢の人間が寝かされていたの。 そこに前にここで働いていた侍女たちが何人もいた」
そう震えながらいった。
(侍従が...... でもなぜだ、カリナさんは見つからなかったのか。 ディシーストの蝶が監視しているはず...... 今は使えないのか)
「辞めたなんて嘘なんだわ! わたしたちは殺される......」
そう混乱しているカリナさんをなだめる。
「大丈夫です。 明日、この城から理由をつけて脱出してください」
「わ、わかった」
落ち着かせると、そういいきかせ部屋へと帰した。
『......どうやら、間違いないみたいだ』
いつの間にかミーシャが帰ってきて、ベッドのしたにいた。
「みたの?」
『ああ、間違いなく侍従がいた。 それにあのリジェクトもいた』
「リジェクトが! カリナさんがみた子供っていうのは彼女か......」
『それにその場に他にもいた...... この国の皇妃、フィーメイルだ』
「そんな皇妃!? 一体なんのために、まさか!!」
『ああ、皇妃も多分、自我のあるディシーストだ...... やつらは生きた人間から何かを取り出し、自分の体へとうつしていた』
「それって...... 魂のようなもの」
『ああ、多分...... ここの侍女たちは生け贄なんだ』
「そんな......」
『どうする?』
「ライミーアさんと連絡をとるのは難しい。 でも皇妃を殺しては......」
『一気に戦争だ』
そのとき、部屋に気配がした。
「なにかいる......」
『なんだ!?』
見ると天井に蝶が止まっていた。
「まさか......」
ぼくが構える。
蝶はゆっくりと目の前にきた。
『共感させているのか』
「何者だ...... 敵ならこんなにゆっくりは近づいては来ないな」
蝶にはスピーカーのようなものがある。
「これは四番隊の......」
「私はサン」
『サン、二番隊の隊長か!』
「今、やつらが術を使っている間がチャンスだ。 そのまま階段を登り、二階のバルコニーの扉をあけろ」
ぼくは部屋をでて素早く階段を上ると、城のバルコニーに続く扉の前にきた。
『本当に信じるのか!』
「信じるしかない...... 攻撃も通報もしていない。 わざわざゆっくり目の前にきたのも敵意のないことを示すためだ...... いまは情報がほしい」
ぼくが扉を開けると、そこからサンともう一人フードをかぶった人物が入り込み部屋へと戻った。
「助かった。 あれは中からしか開けられん。 しかも触れた者の指紋を取るように、毎日ディシーストの鱗粉がつけられる。 入ったことが発覚すると警戒され、やつらは尻尾を出さないだろう」
そうサン隊長はいった。
『お前は何をしようとしている』
ミーシャは警戒を解かず、いつでもクロヒョウになれるように構えている。
「......まあ、うたがうのも無理はないな。 私たちはその情報も隠していたからな」
「それだけじゃないでしょう隊長」
そうフードの人物がフードをぬいだ。 それはハリザさんだった。
「ハ、ハリザさん」
「久しぶりだなクルス」
『どういうことだ!?』
驚くぼくたちに、サン隊長は話をし始めた。




