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第四十六話「蝶の舞う地下」

 ぼくたちは巨大な都市にいた。 石造りの町は古い歴史のありそうな建物が整然と並び、荘厳な雰囲気を醸し出している。


「さすがに圧倒されますね」 


『要塞みたいな町だな』


「そうね。 実際昔は要塞として使ってたから」


「本当に城に潜り込むつもりですか?」


「白き聖者ホワイトセイントを調べる、私たちはそのためにきたのよ」


「でも...... 帝国のネクロマンサーがいる上に、白き聖者ホワイトセイントまで、とても忍び込めるとは思えませんよ」


『だな。 猫の子一匹はいれそうにない』


 ぼくたちは衛兵が周囲に目を光らせている城の門を遠巻きにみながらいった。


「だからこそよ。 こんなところに入り込むなんて誰も思わないでしょう。 用意してくるからまってて」


 そういうとホテルを指定して、ライミーアさんは歩いていった。


「本当になんとかなるのかな」 


『ライミーアは大胆だからな。 かなり無茶するんじゃないか』


(ミーシャにいわれるなら相当だな)



「おまたせ!」


 しばらくしてライミーアさんがホテルの部屋に戻ってきた。


「どこにいってたんですか」


『はらへった』


「まあ、それは食事をとってからにしましょ」


 なぜかこちらをみて微笑んでいる。


(なんだ...... とても嫌な予感がする)


 ぼくたちは食事を取った。



「よし! できた! よく似合うよ!」


『ぎゃははははっ』


 ミーシャは笑い転げている。


「これで本当に入り込むつもりですか......」


 ぼくはメイドのような衣装を着させられていた。


「ええ城での侍従募集があるの。 早速応募してきた」


「でもなんで女装なんですか!」


「しかたないじゃない。 女性限定なんだから、大方暗殺なんかを恐れての条件なんでしょ。 その姿なら誰もクルスだとは気づかないわ。 化粧ばえもするしね」


『ぎゃははははははっ! 似合う、似合う!!』


 ミーシャは床で笑い続けている。


「だとしたらライミーアさんがいってくださいよ!」


「私の体を鍛えてて筋肉質過ぎるの。 すぐに軍人だとばれるわ。 クルスは、声も高いし私より小さいし細いでしょ」


『たしかに筋肉がつかない体だもんな。 見た目も声も女の子みたいだし......』

 

 ミーシャは気にしてることをはっきりいう。


「くっ...... わかりました。 それで本当にはいれるんでしょうね」


「ええ、この情報はエルダリィーから伝えられてるから間違いはないわ。 大勢の独り身の若い女性を侍女を募集している。 さっきも町に張り紙があったくらいよ」


『ぷっ、そんなに集めてなにするんだ。 ぷっ、ふっ』


 笑いをこらえながらミーシャがきいた。


「帝国皇帝【カエルム】の妻、皇妃【フィーメイル】の身の回りの世話らしい」


「皇帝って、先の妻を二人なくしてますよね」


「ええ、それに皇子が一人いたけど、病でなくなったみたいね。 今は後継者もいないはず...... クルスとミーシャは中で白き聖者ホワイトセイントのことを調べて、私は逃走経路を確認するから」


「わかりました......」


 ぼくはミーシャとともに城へとむかう。



「......なるほど募集をみてきたのか。 衣服の入ってる鞄だけか。 まっていろ」


 門番は口頭で出自と家族構成をきくと、たいしてしらべもせず、中へと連絡する。 そして城にはいることを許可した。


(この警備の割にずいぶん簡易な検査だな。 まあ暗殺などがあれば即戦争だからな。 さすがにそれを共和国がやるとも思ってないか)


 城内は町以上に壮麗で、壁や柱には精緻な彫刻が至るところにある。 ただ衛兵の姿は少なく、ひっそりとしていた。


(皇帝の城にしてはずいぶん人が少ないな。 まあ普段はこんなものか。 見知らぬものが大勢いたら暗殺者も紛れ込むからな)


 前から人があるいてくる。


「あなたが連絡のあった人ね」


 そう年老いた女性がそう話しかけてきた。


「はい、クルスです。 よろしくお願いします」


「クルスさんね。 あなたの仕事は皇妃さまのお世話をすることです。 でもいきなり皇妃さまの前で、失敗させるわけにはいかないから城の掃除をお願いね」


 そう侍女長──マイルダは優しく微笑んだ。


 それから仕事を丁寧に教えてくれた。


(とはいえ与えられるのは城の掃除など当たり障りのないものだな。 まあ失態でもすれば、本当に首を飛びかねないからかな)


 遠目からフィーメイル皇妃をみる。 それは若くてとても美しくはかなげな女性だった。

 

(白き聖者ホワイトセイントのことを調べたいけど、聞くと不自然だな。 それに)


「あ、あの」


「なにかしら」


 自分より前に雇われたという少女──ムーアに話しかける。


「ずっと、城の中を蝶が飛んでるんですが」


「ああ、それはネクロマンサーが使ってる術らしいわ。 私も気になって雇われたとき聞いたの」


 そうムーアさんは答えた。


「ネクロマンサー...... 術を使う人たちとは聞いたことがありますけど、この城にいるんですか」


「ええ、城の地下にいるはず、前に見かけたから...... でも気になったからって付いていっちゃだめよ。 私もすごく怒られたの」


(城の地下か...... 監視があるならネクロマンシーは使えない)


「それにしても女性が多くないですか?」


 城でみたのは女性ばかりだった。


「そうね。 兵士は城の周囲にはいるわ。 ネクロマンサーが警備してるからね。 でも侍従はこれだけいてもなんだかみんな辞めちゃうみたいなの。 私の前に入っていた人も次々辞めていっちゃった。 おかしいわよね、皇妃さまも侍従長も優しいかたなのに」


 そうムーアさんは首をかしげている。


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