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第四十三話「荒れ果てた帝国」

「帝国が......」


 カイル隊長は眉をひそめる。 エルダリィーさんが本部にきていた。


「そうっす。 国安が保護した帝国からの亡命高官の話では、かなり経済状態が悪化していて、それを鎮圧するのに必死なんすね」


 エルダリィーさんがゼリーをたべながら、軽い感じで深刻な話をしている。


「だから、あんな作戦をやってきたって訳ね」


 ライミーアさんがいうとシュリエさんはうなづく。


「国内政治の失策を戦争で塗りつぶそうとしたのか」


「まあ戦争になれば、一時的には国民の感覚は麻痺するからね。 多少はごまかせんじゃないすかね?」


 スプーンをくるくるさせてエルダリィーさんがいう。


『そんなことしても、いずれ破綻するだろ』


 あきれたようにミーシャはいった。


「それで調べさせていたことは......」


 カイル隊長はエルダリィーさんにきく。


「ええ、やはり帝国内にも白き聖者ホワイトセイントらしき影が見えますね。 高官の話だと、怪しい新参者が帝国中枢、しかもかなり深くはいってるらしいっす」


「やはり...... か。 両国への関与、災厄をもたらす存在。 何かしようとしている。 いくつかの計画の頓挫したいまなら調べられるか、あの話、ライミーア頼めるか」


「わかったわ。 まかせてよ」


 ライミーアさんはそう胸をたたくと、こちらをみた。


「じゃあ二人ともいってみよう!」


「えっ?」  


『えっ?』


 状況を理解できないまま、ライミーアさんはぼくたちを連れ出した。



『ひょー ここが帝国か』


 ミーシャは能天気に外の景色をみて尻尾をふり喜んでいる。 ぼくたちはライミーアさんと車で国境をこえ帝国領内にいた。


「ライミーアさん、本当に大丈夫なんですか。 ぼくたち軍の特殊部隊なんですけど」


「平気よ。 表向き停戦してるからね。 この間のテロも上にも表にもだしてないから、外交上はなにもかわってないわ」


 車を運転しながら、ライミーアさんは答えた。


「それで帝国でなにをするんですか?」


『そうだぞ。 ほっとくと、シニアとかが何か画策するかもしれない』


「そっちは隊長が対応するわ。 私たちは帝国の反政府組織レジスタンスと接触するの」


「レジスタンス?」


『そんなのあったのか』


「当然よ。 私たちの国に反乱分子がいたのだから、帝国もあるに決まってるじゃない」


「確かにエルダリィーさんも反発がひどくなってるとはいってましたけど」


「ええ、昔からこの国には【反帝国民主同盟】という小規模の武装組織があったの」


『そんなのじゃどうにもなんないだろ』


「現状での不満で、いまはかなりの人員がいるらしいわ」


「そうなんですね。 それでその人たちと手を結ぶのが今回の任務ですか」


「ええ、いままでも何度か打診があったの。 ただ罠の可能性があって全面的に信頼できる訳じゃなかった」


「今回の大規模暴動で真実味がでてきた、ということですか」


「そういうこと」


「なるほど、でもぼくたちたった三人では不安ですが」


「心配ないわ。 あなたたちは共和国のネクロマンサーでもトップクラスの力をもってる。 そこまで複数のディシーストを操れる者はいないわ。 自信をもちなさい」 


『そうだぞ』


(そうだな。 ミーシャを元に戻すには白き聖者ホワイトセイントを調べないといかないからな)


 ぼくはミーシャを見ると、ミーシャもなにかいいたげにぼくをみていた。


『......それにしても荒れた田畑だな』


 車からみえた畑の作物はとても小さい。


「貿易が限られてるから、化学肥料なんかが輸入できないしね。 元々痩せ細った土地だし、だから肥沃な土地が多い私たちの国をえたいと思ってるのかもね」


「共和国も元々は帝国の領土でしたからね」


「ええ、帝国が全土を統一してから、百年後、いくつかの独立国ができて、【ワイズマン】初代大統領が独立させてできたのが私たちの国」


『もう何百年も前の話だろ。 また攻めてくるなんて、帝国のやつらは何を考えてんだ』


「帝国では共和国が何度も侵略してきたという話になっているらしいからね」


『はあ?』


「それは情報操作ですか? 侵略に正当性をもたせるため?」

 

「わからないわ。 もしかしたら、我々の方が情報を操作されていた可能性もあるからね」


「......そうか、その可能性もあるのか」


『そんな!」


「軍や報道も正確な情報をだしてるとは限らない。 それはあなたたちも知ってるでしょ」


『それは......』


(たしかに、シニア、ヤングマン、リスト。 彼らのことを考えると否定しきれないな)


「そしてもうひとつの可能性......」


「白き聖者ホワイトセイントですか......」


「ええ」


『確かに戦闘が始まってから、町を蹂躙したとグラード隊長がいっていた。 一体なんのつもりだ。 星幽石を集めているのか?』


「わからないわ。 帝国に戦争の正当性をあたえさせるためか、はたまた別の理由があるのか......」


 ライミーアさんも困惑していた。


「でもずいぶん帝国に詳しいですね」


「ええ、私は帝国の生まれだもん」


『えっ!?』


「十二年前の戦争で共和国に亡命したの」


「じゃあ......」


「別に恨んではないわ。 戦争だもの。 ただ無駄な戦争を止めたくて軍に入った。 まあ子供だったしね。 他に考えられなかったの」


 そうあっけらかんと笑った。


「そうだったんですね」


『戦争以外で戦争を止める方法はないのかな』


「......あればいいけどね」


 そうライミーアさんはいうと、それきり黙ったまま外の景色をみていた。



 ぼくたちは国境近くの町ホグスへとやってきた。 そこは閑散としていて人の通りも少ない。 とても寂しい町だ。


『なんにもないな。 観光客相手の土産屋もない』 


 つまらなそうにミーシャはいった。


 裏路地には力なく横になっている人たちが何人もいた。 そこにはタバコのようなものを吸い、焦点の会わない目で壁と話しているものもいる。


(麻薬か、みんなかなり疲弊している。 戦争のせいか。 共和国よりもひどいな)

 

『みんな人形みたいだ......』


「いきる気力もないって感じね」


「それで、彼らはどこに......」


「この町のバーで待ち合わせよ。 一応戦闘の準備はしておいて」


 そう真剣な顔でライミーアさんはいう。


(罠の可能性か......)


 バーの見える場所まできた。


「私がはいって、10分たってもでてこなかったら、そのときは突入して」


『了解』


「はい」


 ライミーアさんはドアを開け店にはいった。



 ぼくたちは店の見える場所にあるパン屋でパンを買った。


「固っ!」


 地面のミーシャも両手でもってガリガリとかじっている。


「ははっ、固いか。 この辺りじゃ日持ちする固いパンをつくるんだよ」


 そうパン屋さんの店主がいう。 


「なるほど、そうなんですね」


「......あんた、共和国の人間かい」 


「えっ? あっ、はい......」


「構わないよ。 別にあんたに恨みがあるわけじゃない。 いま、共和国はどんな風だい? 飢えるものはいるのかい」


「えーと、この国ほどじゃないですけどいることはいます」


「その程度か...... やはりね。 まあ国は共和国は地獄の様なところだと吹聴してるけど、嘘だと皆知ってる...... 亡命するものも後をたたないしな」


 そうため息混じりに店主は話した。


「皆それでも不満はないんですか」


「昔は兵隊に殴られたり、刑務所にいれられたり、他の人間が密告するから、誰も愚痴すらいわなかったよ。 ただ最近各地で暴動がおきはじめた。 皆限界だったんだろうな」


 そう悲しそうに微笑んだ。


(やはり、帝国の内部が不安定になっているな...... そろそろ10分)


 店からライミーアさんが普通の女性とでてきて、こちらに合図する。


「まずは我々のアジトまでお連れします」


 そう女性はいい、車にのって町をでた。 



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