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第三十八話「防がれたテロと一番隊の影」

 深夜、トンネル奥の弾薬庫の扉があいた。 暗がりのなか、数人が足早にはいり、ためらわず爆弾の保管されているところへとむかった。


「ない! ここにあった爆弾が!」


 男のあせる声がする。


「いるのだろう...... クルス」


「ええ」


 ぼくは姿を現す。 そこにはリースと他数名、そしてティナ長官がいた。


「お前たちは爆薬をさがせ......  ネクロマンシーで動かしたはずだ。 今日の夕方には確認しているから、この部屋にある」


「はい!」


 男たちは走っていった。


(ミーシャ頼むぞ)


「やはり、ばれていたというわけか。 どうしてだ?」


 そうティナ長官はきいた。 


 ぼくはティナ長官とはなしたあとミーシャと話していた。


『なるほどな。 監視...... 黒き使徒ブラックアポストルはそうやってできたんだな』


「ミーシャの方は成功した?」


『ああ、お前のいった通りやってきた。 彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【写鏡蟻】《コビーミラーアント》』


 首輪についた鏡が小さく分割してアリとなり、紙の上を歩くと、文字のようになっていった。


『各兵士宛の手紙から写し取ってきた』


「これは違うな。 これも......」


『やってはみたけど、こんなもの手に入れてどうすんだ?』 


「どれほど優秀だろうとも、たった二年前に工作員になったんだ。 それなら...... これは......」


 そしてぼくは工作員を割り出した。



「......いまこの基地にいるのは専門に鍛えられた工作員じゃない」


「なるほど暗号がばれたのか......」


(そう、すぐに熟練の工作員などつくれない。 それなら、彼らに指示をするには簡単な暗号ぐらいしか覚えさせられないはずだった......)


「やられたな。 わざわざ警戒して、君に情報を流した上に、拘束していたのに、他にも隊員が潜入していたのか。 あれだけ調べて見つけられなかったとはな」


 そうティナ長官は笑う。


「あなたたちは帝国のスパイなんですか」


「......ああ、今だけはな」


「今だけ...... 戦争のときあなたちはこの国の兵士として戦っていた。 それは間違いない。 それがなぜこの国を裏切るような真似を」


「裏切る...... ふふっ、裏切ったのはこの国だろう」


「国が......」


「私たちはこの国を信じていた。 国民を命をかけても守りたいとね。 だが戦争が終われば、国民には貧困がまっていた」


「それは、戦後だから......」


「違うのはしっているだろう? 富めるものだけが肥え、貧しいものはより貧しくなった。 私たちはなんのために命を懸けたんだ? 貧しいものはその身すら売るしかない。 多くの兵士の家族がそうなった」


「だから帝国につくというのですか」


「帝国との契約だ。 現政府を倒したあと、我々が起こす国を新たな自治領として認めるとね......」 


「そんなもの本当に守るとでも?」 


「それなら帝国にまっているものは、私たちのテロの地獄だ。 帝国とて磐石ではない。 何かきっかけがあれば容易く国が崩壊する。 それは彼らもわかっているだろう。 のまざるをえまい」


「そんなものに頼るんですか。 彷徨える魂よ、我が声に答えよ」


「そんなものに頼るしかないんだ。 彷徨える魂よ、我が声に答えよ」


 ぼくとティナ長官は対峙する。


機銃弾蠕虫マシンガンバレットワーム


 ティナ長官は、もっていた機銃で連射してきた。 ぼくは浅蜊盾クラムシールドで防ぎつつ逃げて壁に隠れた。


(この盾じゃそれほど長くはもたない! あんな機銃この国にはない! 帝国から持ち込んだのか!)


「......かくれんぼをしている時間はない。 あきらめてくれないか」


「ひとつ聞かせてください。 一番隊の話は本当なんですか」


「......そうだ。 奴らはほとんどが裏切り者だ。 我々がこの計画が成功したら、奴らも血祭りにあげるから、心配せず死んでくれ」


 そういってマシンガンをうちまくった。 壁がどんどん削れていく。


「くっ...... 何て威力」


(自動装填で連射、これが噂の新兵器か...... しかもネクロマンシーを使っている)


 落ちた弾丸はミミズとなって壁を食べて侵食していく。 

 

(このままだと壁がなくなって蜂の巣になる)


「このまま撃ちつづけて、君が死んだら、そのあと他の隊員も消えてもらう」


「そんなことはさせない...... 彷徨える魂よ、我が声に答えよ」


「無駄だよ。 その位置からこちらには死角だ。 顔をだしたとたんその頭を吹き飛ばす」

 

 ぼくは真横に弾をうちだす。 壁に当たった。


「なんのつもりだ...... ネクロマンシーされた生物がその距離で曲がれるわけないだろう。 つぶれて終わりだ」


「【甲虫護謨弾】《アイアンクラッドビートルゴムバレット》」


 当たったゴム弾が甲虫となりとんだ。


「ばかな! がっ!!」


 ティナ長官が吹き飛ぶ。

 

 ぼくはティナ長官に向かって更にうちこんだ。


「がはっ!」


 ティナ長官は地面を転がった。 


「なっ...... そんな、あの距離でつぶれない弾丸だと......」


(このアイアンクラッドビートルは、昆虫のなかでもっとも固い。 それをゴム弾にしてうちこんだ)


 気絶したティナ長官を拘束して、ミーシャの応援にいく。


『遅いぞ。 待ちくたびれた』


 奥でミーシャは全員を拘束していた。 


「よく、みんな捕まえたね」


『爆薬を背にしたから、こいつら銃器は使えなかったからな。 簡単だ。 それに』


 ミーシャがみる方向に、うずくまるシュリエさんがいた。


「シュリエさん!」


「あ、ああ」


 そうからかおうとするミーシャの動きを牽制しながら、シュリエさんはいった。



「皆よくやってくれた。 各地の軍事施設でも爆薬を確保して、テロリストを捕縛できた」


 カイル隊長はそういう。 各地にむかった隊長たちによって、捕らえられ、テロリストは作戦に失敗した。


「まさか、ティナまで裏切っていたとは......」


 そうエマ隊長も肩をおとすと、レンブラント隊長もうなづく。


「ああ、あれほど国への忠誠心があった模範的軍人が裏切るとは......」


「......もはや国自体が悪化の一歩をたどっているように感じるな」


 グラード隊長がいうと、沈黙がつづいた。

 

「......だが、テロは未然に防いだ。 それは喜ぼう。 それに一番隊の情報もえられた」


「うむ、それがわかれば対処のしようもある」


 グラード隊長がそういった。 


「帝国がこの作戦失敗により、かなりの戦力を失い、計画も頓挫したわね」


「ああ、当面は全面戦争は回避された。 今のうちに軍、政府内を調べよう」


 エマ隊長とレンブラント隊長がいう。

 

(ひとまずの危機はさったけど、一番隊という敵の存在が明かになった)


 ぼくはその事を考えると不安で喜べなかった。

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