第三十六話「軍施設への潜入」
「ヤングマン、リスト、シニアか。 もはや誰が敵か味方かもないな。 ガリッ」
シュリエさんは氷を噛み砕いてそういった。
『これが報道に政治なのかよ』
ミーシャがあきれながらいった。
「だが、このテロは止めないと本当に戦争になる」
『そうだが、話からはどこでなにが起こるかまったくわからない。 どうするんだ?』
「......テロの詳細をなんとか入手する。 このまま俺はカイル隊長に連絡し、他の隊員とアイディアタイムス本社を調べる。 二人はこのままのリストをおってくれ」
シュリエさんは氷をかみながら、たちあがり部屋をでた。
ぼくたちは車を呼びリストをおった。 前を走るリストの車を追っている。
『だが、リストを追う意味があるのか? 私たちもタイムスの記者たちを探る方がいいんじゃないのか』
耳元でミーシャがいった。
「そこはみんなに任せよう。 このままリストはシニアにあうのかもしれない。 情報をえるのは悪くない」
『おっ、車がとまるな。 あの屋敷か』
そこは、木々に囲まれた大きな屋敷だった。
「しってますかお客さん。 ここはシニア議員のお屋敷ですよ。 どんな悪いことをしたらこんなお屋敷にすめるんでしょうね」
そう通過するとき車の運転手は皮肉をいって教えてくれた。
(やはり、シニア議員と会うのか。 さっきの報告か)
すこし離れた場所に降りると、ぼくたちはシニア邸へと近づく。
そこから金属箔蛾をはなつ。
『私もいってくる』
下をミーシャがかけていく。
屋敷へとちかづき、屋根の煙突から入り部屋へとはいる。
そこにはリストとみたことのある白髪の老人が座って話をしていた。
(あれはシニア議員だ。 ぼくの方がはやかったか。 ミーシャは、誰かが部屋を開けないとはいれないからな)
「首尾は......」
「ええ、大丈夫よ。 これでヤングマンは必ず動く」
「そうか。 これで用意は整ったな」
(なんだ...... この二人、なんか対等に話しているな。 とても記者と政治家の間柄じゃない)
「あとは、テロが起これば......」
「そうね。 でも黒き使徒と国安がかぎまわってるわ。 まさかとは思うけど、テロを止められないわよね」
(!? どういうことだ...... まさか、テロは自作自演!!)
「くくっ、無論だ。 国安も黒き使徒もこちらに情報は筒抜けだからな」
(やはり筒抜け...... カイル隊長たちは上に情報をあげなかったのが正解だった)
「でも、カイルとか言う隊長は厄介だと聞いているけど」
「ロードの部下だった一番隊の男か。 かなりの強さだときくが、しかし所詮は一介の軍人、それほどのことはできまい......」
そういってワインを口にする。
『クリス...... こっち』
小さな声が後ろから聞こえた。 戻っていくと、ミーシャがいる。
「もう少し、調べたいんだけど......」
『......いや、早くでるんだ』
その反応から感じ取ると、ぼくたちは屋敷を離れた。
「なにかあったの」
近くのホテルにきた。
『部屋の中にはいれなくて寝室に向かった...... そこに手紙があった。 彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【写鏡蟻】《コピーミラーアント》』
そういうと首輪の鏡が分解してアリの姿になり、おかれた紙に歩きだすと文字となった。
「それが新しいアリのディシーストか」
その文章をよむ。
「これは!?」
『ああ、帝国の暗号伝令を解析したものだ』
そこには帝国軍による諜報員の工作計画がかかれていた。
「九日後の深夜、国中の至るところを同時爆破工作...... 混乱に乗じて首都を制圧する電撃作戦」
『早くいこう!』
「ああ」
ぼくたちはその暗号を直接カイル隊長に届けた。
「これは......」
その写し取った紙をカイル隊長にみせた。 レンブラント隊長、エマ隊長、グラード隊長が集まっている。 ぼくたちは部屋でそのまま待機するように命じられた。
「厄介なことになったわね」
「ここまで周到に用意していたのか」
エマ隊長とレンブラント隊長が驚きの声をあげる。
「さて、どうするカイル、シニアへ黒き使徒の情報が筒抜けだと、全部隊への連絡もままならん......」
グラード隊長がきく。
(そうだ...... もう誰が敵なのかもわからない。 シニア議員の自作自演ではなかったようだけど......)
「ああ、連絡を使えばシニアに気づかれるな」
「だが、全てを見つけ出すのはむりだぞ」
「二番隊はなにをやっていたの!」
エマ隊長は苛立っていった。
「......その二番隊が怪しいのかもしれない」
レンブラント隊長がメガネを直してそういう。
(確かに諜報部隊の二番隊の影がない。 やはりシニアたちの手にあるのか。 それとも帝国)
「......今はそれより、この作戦をどう阻止するかだ。 起これば戦争へと確実に向かう」
「しかも阻止しても、知られれば帝国への憎悪がまして、こちらから戦争へと向かうわ」
エマ隊長が腕を組む。
「動かせるのは、三番、四番、五番、そして俺の六番隊か......」
「一番隊もだろう? 総隊長とその精鋭は...... おい、まさか」
グラード隊長がいうと、皆がカイル隊長をみる。
「いや、総隊長はちがう」
(もしそうなら、あの人がカイル隊長に六番隊をつくれなどいわないだろう。 総隊長も中に裏切り者がいると知っているということか)
「部下の中に裏切り者がいる...... 副隊長を含め可能性はあるね。 各隊の情報を統括してるのが一番隊だ」
レンブラント隊長の言葉にみなうなづいた。
「......しかし、国全体を四部隊だけでは、工作員どころか、工作場所を見つけ出すのさえ無理だな。 いや、全部隊を動かせばそれこそ気づかれる」
グラード隊長が腕を組む。
「ああ。 だが手はある。 爆破が目的なら、工作員を国に入れられたとして、治安維持の三番隊の目を潜り爆薬の確保をどうするつもりなのかということが問題になるからな」
カイル隊長がいうと、エマ隊長がうなづいた。
「......そうか、なるほど。 ここに持ち込んだり、製造するよりネクロマンサーがいるならもっと簡単ね」
「この国の軍の保管した爆薬をつかうつもりか」
グラード隊長がいうと、カイル隊長が大きな地図をだした。
(確かにネクロマンサーなら爆弾そのものに術の使用も可能だ。 爆弾の場所さえわかれば忍び込んで術を仕込めばいい)
「ああ、あと九日。 もう軍の施設の爆薬の管理場所へ潜入しているだろう」
「ということは軍施設を押さえればいいんだね。 でも連絡をすればその場で起爆もあり得るな」
「そうね...... 内部まで入り込まれているなら、誰が敵なのかもわからない」
レンブラント隊長の言葉にエマ隊長も同調した。
「そうだ。 だから少数だけで、爆薬を保管する軍施設に潜入させる」
「......しかないか」
「ああ」
「どうやら、その手しかない」
四人はそう作戦をきめた。




