第三十三話「銀の蛾の暗殺者」
「ここですか、エルダリィーさん」
「ああ」
ぼくたちは夜に歓楽街のある大きな町にきていた。 大勢の人達がいきかっている。
『こんなところに、何があるんだよ。 酒くさいし、たばこくさい!』
ミーシャは不快そうにそういった。
「ここにはゴールドウィンが所有するカジノがある。 ほらあれだ」
そこには昼のようにネオンが眩しく輝く巨大なカジノがあった。 そこには小太りの男の黄金の像がある。
「これがゴールドウィンの社長ニーディーか」
『悪趣味な像だな。 典型的な成金ってかんじだ。 それでこのカジノがどうしたんだ?』
「ニーディーはこのカジノで商談を行っているという話をきいている」
「商談、違法のものですか」
「ああ、臓器の密売だ」
『臓器売買か...... 裏社会と繋がりがあるなら当然だろうな。 でもこの国でも臓器の移植はまだ難しいはず。 帝国は進んでいるのか」
「こっちよりは医学は進んでいるけど、臓器移植となると...... その上臓器の出所が不明ときている。 それらを勘案すると」
「そうか、裏社会といえど、そう簡単に臓器を用意できるわけではない。 もしゴールドウィンが白き聖者とつながっているなら、部位だけつくるのは可能か......」
「そしてそいつらなら術で生体移植なども可能だ。 帝国のお偉いさんにだって、臓器が必要なものは多いだろうしね」
『それをエサに帝国に食い込むこともできるってことか』
「それがここで行われているはずだ。 じゃあ行くよ」
「でも、ぼくは子供ですよ。 カジノなんて入ることもできませんよ」
『私もだぞ』
「いや、ミーシャちゃんはこの雑然とした中なら、なんとか潜り込めるでしょ。 クルスくんは単純に必要なんだよ......」
エルダリィーさんがいやな笑顔を見せた。
「ワイズマンさま。 今日はどうされますか」
そう店のカジノマネージャーがエルダリィーさんに話しかける。 ぼくたちは最上階にいた。
(ワイズマン偽名か。 それにしても名前が共和国の初代大統領って......)
「ああ、VIPルームでプレイしたいんだけどね」
「失礼ですが、この間も負けたばかり。 ここはかなりのレートになりますが......」
「だからほら」
そうぼくの背をおした。
「......なるほど、わかりました」
そういうとカジノマネージャーは通してくれた。
「エルダリィーさん...... まさか」
「いやー もう調査費用がなくてね。 大丈夫、クルスくんはかわいいし、かなりの金額を借りられるよ」
そう小声でエルダリィーさんはいった。
「そういう問題じゃ......」
「じゃあこの子を預けるよ」
「かしこまりました。 つれていけ」
ぼくは、カジノマネージャーにそう命じられた黒服の男たちにつれていかれる。
「ここでまっていろ」
そう小さな部屋においてかれ、ドアに鍵をかけられた。
「人身売買もやってるのか。 窓すらないな。 通気孔だけだ。 よし、彷徨える魂よ、我が声に答えよ」
ポケットから金属の紙を取り出すと、術をかけ金属箔蛾を通気孔から移動させる。
(感覚共有でみることはできる。 それに紙とは違い、今回は金属箔だ。 多少の強度もある。 ただ気を付けないとここにもネクロマンサーがいないとも限らない)
慎重に飛んで明るい部屋の通気孔を確認する。
「まず、臓器を確認しよう」
ゆっくりとびながら、各部屋を確認する。 各部屋ではカジノやありとあらゆる娯楽が行われていた。
「ドラッグ、酒、女性、男性、賭け事、なんでもある。 富豪たちの遊び場か...... この部屋は」
通気孔からひとつの部屋にはいると、そこはひんやりと冷気が漂うのを蛾から感じる。
「ここは......」
そこは箱のようなものが台にのせられ並んでいた。
その時、なにかが飛んできて、体にかすった。
「痛っ、なっ!?」
再度飛んできて、なんとか直撃は回避した。 みると銀色の蛾が何匹もそこにいた。
「蛾、これはディシーストか!」
一匹の蛾がホバリングしていった。
(こいつ、ネクロマンサーか! ぼくと同じように感覚共有している!)
他の蛾がぼくに飛んでくる。
「はやっ!! うっ!!」
ぶつかられて痛みが伝わる。
(感覚共有を解除するにはすこし時間がいる! いまは逃げないと)
なんとか通気孔に向かうがかわせず何度もぶつかられる。
なんども蛾ぶつかられる。
(くっ、反撃しようにも、どの蛾が本体かわからないし速すぎる! 特殊な蛾だ。 殺し屋か! この威力人間の体だったら穴が空いている......)
その時、視界に金色の満月がみえた。
「よし......」
ぼくはライトに向かってぶつかった。 ぶつかられながらもライトを壊した。 部屋が暗くなる。
それでも執拗にぼくを狙って蛾がとんでくる。
(蛾はすこしの明かりでもみえる...... だけど)
その瞬間バチッバチッと音がする。
みると蛾が次々と地面に落ちている。 ミーシャが次々と蛾を叩き落としていた。
ぼくは解除して部屋に戻ると、ミーシャがきた。
『大丈夫か』
「ああ、ミーシャ、遅いよ......」
『すまん。 人が多いから見つからずに動くのは難しかった。 だが見えない中、なにか匂ったぞ』
「ああ、ぼくの蛾の鱗粉香、オスがもつ香りの鱗粉だ」
「なるほど、それであいつらに匂いが...... ライトを消すことが目的じゃなかったのか」
「ああ、ミーシャの目がみえたからね。 匂いさえつければいい。 それより、あそこにあったのは」
『ああ、間違いない台の上の箱を見ると人が入っていて、チューブかなにかで繋がっていた。 死体、いやディシーストだ。 胸のあたりに星幽石が埋め込まれていた』
「それから臓器を取り出して売買してるんだろう。 あとはエルダリィーさんをまつか」
ぼくたちはその場でしばらくまった。




