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第三十二話「ゴールドウィン財閥の影」

「ここだね」


 ぼくたちは町から離れた郊外の森へときた。 電話で呼び出されたからだ。


『本当にここか、何かあるのか』 


「ここに先行して調べてる人がくるんだ」


『さすが、陰湿な公務員だな。 市民団体を調べてんのかよ』


「ぼくたちもその公務員なんだけど」


「おーい、待った。 ちゅる」


 そうやたら派手な服装の青年が、何か容器をもち食べながらやってきた。


『こいつか! おせーよ!』


「エルダリィーさん、お久しぶりです」


「おーっす、ミーシャちゃん、クルスくん、久しぶりー」


 軽い感じで挨拶をかわす。


 彼はエルダリィー、人当たりのよい青年で、右目の下にほくろがある。 同じ六番隊隊員だ。


『お前なにたべてんだよ!』


「ゼリーだよ。 ミーシャちゃんも食べる?」


『いらんわ! いやほしいけど...... 甘いのは太るから。 それより本当に大丈夫なのかよ。 こんなテキトーなやつで』


「もちろんさ。 こんな感じだから怪しまれず調べられるんだぜ」


 エルダリィーさんはウインクした。 ミーシャはすごくいやな顔をしている。


「それでエルダリィーさん、平和のピースシールドの資金の出所はわかりましたか」


「寄付とされているが、どうやら【ゴールドウィン】みたいだね」 


『なるほどあの新興財閥のゴールドウィンかありえるな』


「ああゴールドウィンは帝国との大きな貿易をして、成り上がったからね」


 エルダリィーさんはそういった。


「前から噂はありますよね。 国家安全局こくあんはマークしてないんですか?」


「それだ...... マークはしているが、どうも政治家にも官僚にも金がわたってるらしくてうまくは動けてない」


『上と繋がってる。 おいおい、やっぱり上層部も帝国側の内通者もいんのかよ。 いよいよだな』


「まあ、それもあるが、単に帝国への政治ルートとしていかしてる可能性もある。 国安も調べてはいるが、まだ立件できるほどの確たる証拠はないしね」 


 国家安全局は国の安全保障を担う機関で、国内の情報収集と捜査を行っている。 エルダリィーさんはその機関の職員としても活動している。 いわゆるスパイでもあった。


『それならエルダリィーに任せて、私たちは他を当たろうぜ』  


「いや、ミーシャちゃん、クルス君、二人の力を借りたいんだよ」


「どういうことですか?」


「さっきいってたように政府内にも敵がいるのは確実だ。 だから国安の俺たちは動きづらい。 そこで平和のピースシールドと、ゴールドウィンと政治家との繋がりをしめす証拠をみつけてほしい。 ちゅるる」


 そういって軽くいうとエルダリィーさんはゼリーをたべる。 ミーシャが舌を出した。


 

 夜、海の匂いが漂う港にきていた。


 ぼくたちはエルダリィーさんからいわれて、ゴールドウィンのものという倉庫を港で張っている。


『本当に証拠なんて見つけられるのか』


「わからない。 でも貿易している物品に違法なものを見つければ合法的に捜査できる」


「それって湾岸警備にも内通者がいるってことだろ。 この国はどうなってるんだ」

 

「まあ、どこでも腐敗はあるよ。 ミーシャなら入り込めるからだって」


『ちっ、人のことをこき使いやがって』


「少しでも危ないと感じたら逃げてよ」


『わかってるよ。 じゃあいってくる』


 ミーシャは倉庫横につまれた鉄製の荷箱を飛びつつ、屋根の上に飛び乗った。 通気孔があったのかミーシャは姿を消した。


 しばらくしても帰ってこない。


「なんだ...... 遅くとももう報告にくるはずなのに。 さすがにおかしい」


 ぼくは腰の拳銃を抜くと、倉庫の横についた。


 だが、倉庫は窓も固く閉ざされて中をみることもできない。 


(中をみないと...... しかたない)


 ポケットからナイフを取り出す。


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【鍬形】《スタックビートル》」


 ナイフがクワガタムシとなり、その合金のアゴでその窓をかみ切っていく。


(よし、すこし明かりが漏れてきた。 もうすこし......)


 窓の下にすこしの隙間ができ、そこからのぞく。


「こいつで終わりか」


「ああ、確認した。 明日にはメルトへと送れる」


 複数の男たちが箱の蓋をあけた。 その中からライフルや手投げ弾などを取り出して確認している。


(武器!! メルト...... 抗議活動の場所か!)


『どうやらあれで暴れるつもりらしい』


 いつの間にか、そばにミーシャがいた。


「ミーシャ!」


『すまん、上の通気口から入ったが、でる場所がなくて困ってたんだ。 さすがに暴れるわけにもいかないしな』


「そうだったか、いや早くエルダリィーさんに伝えないと、これはもはやテロだよ」


『そうだな。 明日までに動かないと、死人がでそうだ』


 ぼくたちは港から離れて、カイル隊長とエルダリィーさんと連絡を取った。



「いやー おつかれー」


 朝軽い調子で宿にエルダリィーさんが現れた。


『おまえ! なに今ごろきてんだ! 私たちは朝まで倉庫の見張りをしてたんだぞ!』


「でも、捜査官がいったっしょ」


「......ええ、でも死者がでないように、ネクロマンシーでサポートしてて、ふぁぁ、なんとかいま帰ったんです......」


「さすがクルスくんとミーシャちゃん、仕事熱心だねぇ。 ほっとけばいいのに、向こうもプロだよ」


『おまえがいいい加減なだけだ。 それで倉庫の奴らは捕まったけど、どうなってる』


「もちろん、ゴールドウィンはしらを切ってるね。 もちろん、平和のピースシールドもね。 確かに所有者は別の名前になってるし、証拠を残すへまはしてないね」


『あれ所有じゃないのかよ!』


「そらそうっしょ。 そんなヤバイもん扱うのにそのまま名義を使ってるわけないよ」


 そうエルダリィーさんは軽く答えた。


『だったら無駄じゃないか!』 


 ミーシャは牙をむく。 いまにも噛みつきそうだ。


「ま、まあ、おちついて、武器は押収したし、被害もでなかった。 尻尾をつかめなかったのは残念だけど、これで奴らも簡単に動けなくもなったしね」


「まあ、確かにすぐに動くのはやめるでしょうが...... ゴールドウィンが反政府団体に資金や武器を援助してどうするつもりなんですか? 武器を売り付けるならわかるけど」


「......まあ考えられるのは帝国内との貿易ってとこだろうけど、さすがに武器の手配は予想外だったね。 もっとしたたかなのかもね」


 そう真剣な顔をしている。


「それって、両者に武器を売り付けるつもりってことですか」


「あり得なくもない。 社長のニーディーは金にがめつい男のようだ。 あらゆる商売に手をだしていて、裏の世界とも繋がりがあるからね」


『でも探ってるのは平和のピースシールドなんだぞ。 ゴールドウィンを調べでも意味がないだろ』


「そうでもないさ。 国安以外のルートも使って調べたが、ゴールドウィンは急に経済界に頭角をあらわした新興の財閥だ。 その新しい企業がなぜ、帝国と関係が深いのかおかしいと思うだろ」


「まあそれは...... でも白き聖者ホワイトセイントと関係あるんですか?」


「我々の調べでは、帝国も白き聖者ホワイトセイントとの関係があるかもしれないんだ。 いま内偵を進めているが、ゴールドウィンにはおかしなところがある」


「ゴールドウィンを探ると、なにかでてくるかも知れないんですね」


「そういうことだ。 かなり怪しい場所がある。 一緒に来てくれ」


 エルダリィーさんはそういった。

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