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第三十一話「平和の矛盾」

「そうか...... グラードが」


 カイル隊長に報告をした。


「なるほど、五番隊の噂はそういうことか」


 ミーシャを膝にのせなでている三番隊のエマ隊長もいた。 それをカイル隊長は羨ましそうにみている。 


「それでエマ隊長、調べの方は」


「そういう可能性はいくつかあるけど、ひとつは【平和の盾】《ピースシールド》かしらね」  


 エマ隊長はそういった。


(反戦の市民団体か)


「あれか、確かに最近政府への抗議行動をおこして、賛同者をふやしているな。 調べるか、クルスとミーシャが当たってくれ」


「了解しました」


 

『ここがコルネットか、静かな町だな』


 そこは静かな町で、人通りも少ない。 ぼくは刺激しないよう制服ではなく私服できていた。


「そう、ここに平和のピースシールド本部がある」


『平和のピースシールドって、反戦の市民団体だよな』


「うん、一応」


『一応?』


「武装闘争をじさない極端な活動家って話もある」


『それのどこが反戦なんだよ』


「思想が偏る人間なんてどこの側だろうが同じようなもの。 自分が正しいと証明したいだけだよ」


『ふーん、私にはわからないな。 あっ、あそこ』


 そこには大きな看板が掲げられていて、平和のピースシールドとかかれている。


「ここか......」


「どうしたのかしら? ここになにかよう?」


 そう建物に入ろうとしていた優しそうな中年の女性に話しかけられた。


「ええ、実は......」


 入会希望を伝えるとふくよかな女性は手を叩いて喜んだ。


「そうそう、そうなのね! どうぞ! こちらにきて!」


 建物へと招き入れられた。 ミーシャはいつのまにか姿を消していた。


「こっち、こっち今から代表のお話が始まるから、聞いてみなさい」


(代表? 確かシンカーとかいう...... 新聞で読んだな)


 そういって部屋にはいった。 大きな部屋があり、そこでは椅子を並べて大勢の人たちが座っている。


 ぼくもおばさんのとなりに座った。


 前に一人の男性がマイクをもってたっている。


「皆様には平和のために政府による、帝国侵略の策謀をくじくための日々の活動には、このシンカー大変感服しております」


 そう男がいうと、会場から拍手が起きた。


「シンカー代表は平和のために、身を粉にして働いてらっしゃるのよ」


 そううっとりしておばさんはぼくにいった。


(侵略してきたのは帝国の方なのに......)


「それでは、今後の我々の活動を説明します」


 それからシンカーによる軍施設、首都への抗議活動や輸送の妨害などの計画の説明があった。


「これらを行い。 戦争をさせないため、我らは結束しましょう。 もし彼らが我らを排除しようとするならば、自らの身を挺してその意志を伝えるのです!」


「おお! 政府の傲慢をうちくだけ!」


「そうだ!! 戦争はさせない!」


「邪魔はさせるな! 正義のために!」


 そう会場から同意の声があがった。


(この抗議活動は一般にはほとんど影響はない。 これをして何になるんだろう?)


 そう思いながら、発言にわく会場の人たちの顔をみる。 なにかにとりつかれたように熱狂している。


「悪の政府を我らが打倒します!」


「私たちで平和をつかみとりますわ!」


「戦いはやめさせます!」


 その会議は終わり人々が口々にそうシンカーに話しかけ、シンカーが演説のように大袈裟に感謝をのべる。


「シンカー代表、ただ声をあげるしかないのですか。 それでは政府には届かないのではないでしょうか」


 そう一人の女性がシンカーに不安げにきいた。


「ふむ、確かに声をあげるだけでは、彼らは引き下がらないでしょう。 その時はやむを得ない。 力には力、実力行使も必要でしょうね」


「あの、それだと不戦と相容れないのでは」


 ぼくがそういうと、シンカーは真剣な顔をした。


「むこうがそうならば、それもやむをえません。 これは正義のための行いなのです」


「仮にそれで要求が通ったとして、あなた方に反対するものたちが声をあげたら、どうされるのですか?」


「ふむ、そうですね。 そのときは我らの思いを伝え説得するしかありません」


「それでも納得せず、武力を行使したら」


「残念ですが、排除します」


 そう事も無げにいってのけた。


「我らの行いは正しい行いなのです。 前の大戦を考えてみてください。 ほとんどの家庭で死者がでました。 あのような愚行はもはや起こさせてはならない。 悲しきことながらそのためには実力行使もやむを得ない」


「ですがそれは帝国にも言わなければならないのではないですか? あちらに抗議はしないのですか?」


「彼らは閉ざされています。 我々にできることは、この国をかえることなのです。 我らが変われば彼らもかわるでしょう」


 そうシンカーは自分によったように熱っぽく語る。


(本当にこの人は正しいことをしてると信じているのか......)


 ぼくは熱く語っている人たちの集団をぬけて外にでた。


『どうだった?』


 建物をでて路地にはいると、いつのまにかそばにミーシャがいた。


「......うん、取りあえず政府への抗議活動を行おうとしていた。 シンカーという代表がいたけど、よくいる活動家だったよ。 別段おかしなところもなかった」


『私もこの町を調べてみたけど、それらしい組織や隠れ家はなかった』  


「やはり、ただの噂なんじゃない。 政府に批判的だから、カイル隊長たちはそう思っただけじゃないかな」


『過激な抗議をしてるからな、その可能性はある...... ただ資金の出所とか気になる点はあるな』


「たしかにここ以外に支部もあるようだし、どうやら人も資金で募ってるようだった。 ということはお金の出所を調べる必要があるか......」


『でもどうする? 私たちに調べられるか?』


「ぼくたちは一応公権力側だよ」 


『?』


 ピンときてないミーシャをつれぼくは歩く。


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