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第三十話「罪と後悔の真実」

 そこに現れたのは五番隊のグラード隊長だった。 


「隊長...... ちょうど都合がいい。 あなたを一番殺したかったのだから!」


「やはり、お前はあの町の......」


「死ねぇえええ!!」


 何本もの触手がグラード隊長へ叩きつけられる。


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ」


 何かがぶつかったような大きな音がし土煙がまった。


「くくくっ、つぶれた!! やったか!」


 土煙がはれると、グラード隊長はその場にたっていた。


「なんだと!?」


 グラード隊長の右腕には蟹のような巨大なハサミがある。


「......【小手蟹】《ガントレットキャンサー》」


 振るわれた巨大なハサミはその触手を切りさいた。


「きゃああああ!!!」


「あきらめろ。 殺したくはない...... 投降しろ」


「こ、殺したくないですって、よくいうわ! 私の町の人間を皆殺しにしたやつが!」


 そう叫ぶと、リリーエ副隊長は立ち上がり、すべての触手でグラード隊長を叩きつける。


 だがグラード隊長はそれらすべてを受けきり、その触手を切り裂いていく。


「がぁああ!」


 リリーエ副隊長は悶えながらも、立ち上がる。


「無駄だ......」


「そ、そうね。 確かに無駄のようね...... でもお前だけは必ず殺すわ。 あの子達には悪いけどね」


 そうリリーエ副隊長は悲しげにこちらをみた。


(まさか!?)


「ミーシャ......」


 ぼくが叫ぶのと同時に、爆発が起こる。


「うっ...... ミーシャ」


『大丈夫だ。 ほら』


 みると、体全体を蟹の甲羅にしたグラード隊長がぼくたちの前にいた。


「怪我はないか......」


「え、ええ、でも」


「私は大丈夫だ......」


 そういうと、グラード隊長は煙が上がり、穴が空いた地面をみていた。



「すまなかったな...... 君たちを巻き込んでしまった。 こちらの不備だ」


 ぼくたちは五番隊の本部に来ていた。 前にはグラード隊長がいる。


「これはリリーエ副隊長の策謀だったんですね」

 

「ああ、この国への工作。 彼女が帝国兵であることは、把握していた。 彼女と十数名の隊員による共謀だ」


『それで放置してたのかよ』


「帝国の動きを知るため、泳がせていた......」


 そういって目を伏せた。


「それだけじゃないですよね...... リリーエ副隊長は虐殺のあった町の住人だ。 だから」


「......ふぅ」


 そうグラード隊長は深くため息をつく。


「でも、ぼくたちをかばうような人が虐殺などするわけがない。 その時、何があったんですか。 教えてください」


 ぼくが聞くと、グラード隊長は一瞬沈黙して、静かに語りだした。


「......あの時、私は仲間たちと共に占領した町にいた。 町の住民は帝国からの解放を喜んでいた。 帝国の圧政による解放、私たちは優しく迎え入れられた。 だが......」


 そういいながら顔に手をおいた。


「......ある夜のことだ。 何者かに襲撃を受けた」


「帝国......」


「違うな...... あいつらは異質だった。 私たちも応戦したが、どれ程攻撃を加えても死ななかったんだ」


「まさか白き聖者ホワイトセイント


「おそらく...... あまりに圧倒的な力の差だった。 戦いの最中、私は爆発を受け茂みの溝に落ち気を失った。 朝、目が覚めると町の住民も同僚たちも皆殺されていた」


「リリーエ副隊長はそこの出身だった......」


「ああ、町の住民リストにあったのを思い出した。 だからこれは私への復讐なのだと考えた。 殺されてやるべきなのではと...... それがこんな事態を生んだんだ。 本当にすまない」 


 グラード隊長は唇をかみ、あやまった。



『ふりだしか』 


「ああ、ここには白き聖者ホワイトセイントはいないな」


『なんでグラードはリリーエに真実を話さなかったんだ』


「もう遅かったんだろう。 気づいたときにはリリーエ副隊長は罪を犯していた。 もし告げれば、そのおかした罪や憎悪が意味のないことに気づいて後悔するだろう。 意味を失った彼女は死ぬかもしれない」


『だから自分を悪者にしたのか』


「自分を罰したかったんじゃないかな。 ぼくたちも戦場で仲間たちを見送ったとき、罪悪感はあっただろ」


『......ああ、自分たちだけが生き残ったからな』


「だからだと思う。 きっと後悔してるんだよ。 生き残ったことも、止められなかったことも」


(ぼくのように......)


 その時強い風が吹いた。 そして樹木がゆれ笛のような音があたりに聞こえる。 それはリリーエ副隊長たちの悲しみの声のようにも聞こえた。



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