第二十七話「生屍の襲撃」
『なんかサリカは隠してるな......』
「ああ、ぼくもそう思った。 五番隊の話もしなかったし、なにかあるね」
ぼくたちはサリカさんの家からでてホテルにいた。
『明日にでも尾行するか』
「そうだね...... なんだあれ! 伏せろ!」
パリンッ! パリンッ!!
なにかが複数当たり窓ガラスが割れた。 みると入ってきたのは白いハトたちだった。
「白い...... 毛の色じゃない!」
毛と思った体は固そうな黒いなにかでおおわれている。
「まさか、これはトゲ!? グールと同じようなものか!」
『みたいだな! こいつがトールの言ってたばけものか!』
ハトは首を曲げ、異常な動きをしていた。 そしてぎこちなく羽ばたくとこちらに弾丸のようにぶつかってくる。 それをかわすと次から次へととんできて壁へ穴を何個もあけた。
(なんだ!? まさか......)
『彷徨える魂よ、我が声に答えよ。【丸綿羊】《コットンシープ》』
ミーシャの右足に巻き付けたアームカバーから大きなヒツジが現れ、ハトたちの突進を止めた。
「かわいそうだが、しかたない」
ポケットにいれたナイフをぬいた。 ナイフは柄に星幽石が埋め込まれている。 それはシーナさんにつくってもらった合金だった。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【鍬形】《スタックビートル」
ナイフを投げると、クワガタムシとなり、ハトを貫いて地面に次々とおとしていった。
『窓の外にはもういないな』
ミーシャが窓の縁にたって辺りをみている。
「遠距離から操作したんだろう」
ぼくは床に落ちているハトの砕けた黒い破片を見た。 そこには小さな星幽石が埋め込まれてあった。
「やはり、普通の動物の骨に星幽石を埋め込んで、何かディシーストを使って操ってるな。 これはウニか。 いやがってるように見えたからそうじゃないかと思っていたけど」
『悪趣味だな......』
「生きてるものへのネクロマンシーは禁忌だけど、いままで試したものがいなかった訳じゃない。 かつての戦争だと【生屍】《リビングデッド》と呼ばれていた」
『生屍生きてるものへの術か。 何度か戦場でみたな。 その動物は信じられない身体能力をもっていてとても厄介だった。 でもあまり数がいなかったな』
「ああ、かなりの戦力だったけど、ただあまり重用されなかった。 星幽石を多く各部位に埋め込んで操作するから、操作がむずかしく投入する数はすくなかったんだ」
(それをこの数、正確に操作できるのか...... かなりの使い手だな)
地面に落ちたハトたちをみておもう。
『確かにディシーストを複数動かすんだからな。 でも今のやつはそれを使ってきた』
「ああ、なにか実験ためか、ぼくたちを狙ってきたのか。 どちらかはわからない」
(サリカさんの会った感じだと、密告するような感じではなかった。 もし狙われたのなら、会ったところをみられていたか)
『まあ、外からの人間は私たちだけだしすぐにわかる。 それでこれからどうする?』
「やはり、サリカさんが気にかかる。 工場を調べよう」
ぼくたちは工場近くにやってきた。
遠巻きにみても、そこは特にかわったところは見受けられなかった。
「ここが、サリカさんの働いている工場」
『鶏肉の加工工場っていってたな。 取りあえず中をみてみるか。 私がいってみる』
「ぼくは近くにいると不自然だから他をすこし調べてみる。 食肉工場だから絶対、見つかったらだめだよ」
『ああわかってる。 じゃあいってくるぞ』
ミーシャは金網を抜けて入っていった。
ぼくは、疑われないようにそのまますこしあるくと、その先に焼け焦げたまま放置された建物が見えてきた。
(戦争時に、焼かれた建物か)
ガサガサと音がすると、茂みから体に殻をつけたようなネズミが現れた。
「こんなネズミはみたことない...... これも生屍か!」
ネズミは飛びかかってきた。
ぼくは事前に準備していたナイフで、固い殻のようなネズミを切り裂く。
(さすが、シーナさんが作ってくれた合金ナイフ! ぼくの【浅蜊刃】《クラムエッジ》で簡単にきれた)
「グルルルルゥ!!」
目の前に大きなイヌが現れる。 やはり殻をみにまとっているようだ。
(これは貝かなにかをみにまとっている! 牙もありえないほど大きい!)
その犬は地面をかけると、ぼくに一気に近づいて噛みつこうとした。 その牙は長くナイフのようだった。
「くっ!!」
すごい力で押さえ込まれ、何とかナイフでふせぐ。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 鍬形」
もう一本のナイフをぬき、放ったクワガタムシは後方からイヌの背中を切り裂く。
「ギャウウウウウ!!!」
「なっ!」
犬は苦しみながらも押してくる力が弱まらない。
「くっ!」
(そうか! 意志はなくとも体は操られているからか!)
「ぎゃあ!!」
遠くで声がする。 すると犬の力が弱まり、そのまま息を引き取った。
「かわいそうに......」
犬をゆっくり横に寝かせて、声のする方に向かう。
そこで地面で足を押さえて悶えている男がいた。
「確か五番隊のギデルか......」
「て、てめえ...... はめやがったな!」
「なるほど、君が生屍を操っていたネクロマンサーか。 なぜぼくを襲った」
そのとき、遠くから真っ白い牛が走ってきた。
その背には大柄な男ーーガームがのっていて、ギデルを片手で引き上げるとそのまま去っていった。
「このままじゃすまさねぇ! 必ず殺してやるぞ!」
ギデルはこちらをにらみながら離れていった。
「やはり五番隊が関わっていたか...... 空に【金属箔蛾】《メタルホイルモース》を放っておいてよかった。 シーナさんにつくってもらって体力の消耗が少なくなったとはいえ連続で三体はきついな」
ぼくはすぐにミーシャのもとにむかった。




