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第二十六話「ばけものの町」

 それは銀色の髪をしている青年で、こちらを冷たい目でみていた。 


『あれは...... 確か』


「ああ、あれは【サン】二番隊の隊長をしている」


 ソアラさんが教えてくれた。


『あんな若さで、隊長かよ。 私たちの三つ、四つしか違わないだろ。 シュリエと同い年ぐらいだ』


「ああ、どんな功績をあげたかはわからないがその座にいるな」


『二番隊だ、どうせろくなことはしてないな。 それでこれからどうする? 白き聖者ホワイトセイントを探さないといけないぞ』


 そうミーシャがいう。


「ソアラさん、最近、三番隊で噂になっていることなどはないですか?」


「そうだな...... 二番隊とやはり五番隊の噂だろうな」


「二番隊」 


「帝国出身じゃないかって噂がまことしやかに伝わっている。 合同作戦ですこし話したやつが、言葉なんかが、少しくせがあるとかなんとか」


「くせか。 確かに帝国とはすこしだけ言葉のニュアンスがちがうことがあるときいたっけ?」


『そして五番隊は元犯罪者で構成される部隊か...... 副隊長はまともそうだけどな』


 そうミーシャはこちらをじっとみる。


「ああそうだ。 総隊長の話の時、いかつい隊長が下にいたろ」


 あの時、確かに片方の目に傷のある屈強な男性がいたことを思い出した。


「......名前は【グラード】元犯罪者だ」

 

 ソアラさんは軽蔑するようにいった。


「確か住民の虐殺に関わったとは聞いたけど」


「ああ、元軍人だった男だ。 十二年前の帝国との戦いで、帝国の町の住民を皆殺しにしたんだと、その戦争犯罪の罪を問われて死刑囚となったがこの前の大戦で復隊した」


「確か、今は大戦の功績で総隊長に隊長として迎えられたらしいですね」


『そんな悪党、外にだすなよ!』


「戦争だからね。 戦力になるなら誰でもいいんだよ。 ましてや劣勢だったあの戦争なら、それほど残虐なことができる人物なら使わない手はないんだろう」


『そんなことをすれば、正義を掲げる戦争が台無しになるだろ! 私たちがなんのために戦ってたと思うんだよ!』 


 ミーシャは唸るようにいった。


(気持ちはわかるけど、戦争はそんな美しいものじゃない。 敵味方も罪を犯して生きるために戦う。 ぼくたちもあの時、多くの罪を犯した...... )


 そう思い出して後悔が押し寄せてくる。


「まあわかるが、思い詰めんなよ。 私たちにはしかたなかったことさ」


 そうソアラさんが声をかけてくれた。


「ああ、うん...... それでその五番隊がどうしたの?」


「あいつらが裏で非合法なことをしているという話があるだろう」


『そういえばそんな話があったな。 ヤバイことをしてるってここを歩いてたとき、他の隊員も噂してた』


「そうだ。 それはネクロマンサーを使った人体実験だといわれているんだ」


「人体実験......」


「監獄事件のとき、魔刃グールが骨からディシーストをつくっただろ」


『ああ、そういえば』


「あんな風に肉体からディシーストを作り出す実験をしてると噂になってる」


『そんなの噂だろ』


「それが、肉体が変容した動物が人を襲う事例がいくつかある。 しかも多くの身代金目的ではない誘拐事件もおこっている。 それが五番隊の本部近くの町だ」


「それって......」


『いくしかないな......』


 ぼくたちはカイル隊長に許可をえて、五番隊本部の近くの町、カンセルトへとむかった。



 数日かけ、カンセルトへついた。


 そこはゴーストタウンといったほうがいいほど、人の往来もない。 ただひっそりとしていて、歩くぼくたちの足音がきこえるほど、死んだように町は静かだった。

 

『住人がいるのか?』


「いるようだ。 建物に生活感はある」


 洗濯物などはあり、家には誰かいるようだが、庭にすらでてきてはいない。 


「話を聞きたいけど」


『こんな状態じゃな。 ただでさえ国家機関のものは煙たがられる時代だしな』


 その時、路地裏に人を見つけた。 隠れるようにこちらをみている。 それは小さな男の子だった。


「あ、あの」


「............」

  

 男の子は無言だが、ミーシャのことを気になるのかみつめている。 


「ミーシャ」  


『はぁ、わかったよ』


 ミャーとなくミーシャが男の子の方に歩くと、男の子はゆっくりしゃがみミーシャを嬉しそうになで始めた。


「ネコすき?」


「......うん、まえにかってた」


「そう、この町の人はみんなおうちにいるんだね」


「うん、怖いばけものがくるんだ」


「ばけもの?」


「そう、ぼくのミルクもそのばけものに食べられちゃった」


 悲しそうにそういってミーシャをなでている。


(ばけもの、ソアラさんがいっていた変容した動物のことか)


「トール!」


 後ろから、少女がそう声をかけた。


「お姉ちゃん!」


 そうトールと呼ばれた男の子は嬉しそうにこたえる。



「クルスさんはその若さで軍人さんなんですか」


「そうなんです」


 サリカさんが驚いたようにそういった。 ぼくたちは話を聞くため、トールの家に招かれていた。


「サリカさんは工場で働いているんですね」


「......ええ、ここらじゃあそこしか仕事もないですから」


 いいづらそうにサリカさんが答える。


「それでクルスさんはここに何をされにきたのですか?」


「どうやら失踪事件が起こっていると、更には奇妙な動物の目撃例があるとも、ここの噂についてなにか聞いていますか?」


「失踪ですか...... 確かに人がいなくなる、そういう事が近隣で起こっていますが、ただここが嫌で逃げていったのかと思ってました」


「ここがいやで?」


「ええ、ここは帝国領と隣接してますから、戦争が起これば巻き込まれますし、特に仕事もないんです。 私たちも移っても生活のあてがないのでここにいるだけですから......」


 ミーシャと遊ぶトールをみながら、サリカさんはそう呟いた。


(まあ、御両親は前の戦争でなくなっていると言ってたし、仕方ないことか......)


「他におかしなことは...... トールがばけものが猫を食べたといっていましたが」


「なにかの動物がネコを襲ったのかと...... ここは大型の野生動物も多くいますし」


 そういってサリカさんは口を結んだ。

 

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