第二十三話「レスル族の生き残りのフィオ」
「ここですか」
ぼくたちはヤバーク山の下にある街まできていた。
「ええ、私たち四番隊が保護しているんです」
そうシーナさんが、ミーシャを抱えて嬉しそうに答えた。
『私の体の管理をしてくれているから特別だそ』
「はい! それでお二人の装備どうですか?」
「ああ、すごいよ。 前の任務で持っていたツバメ、カエルたちが使えなくなったから、新しい星幽石の補充ができてたすかったよ」
提供された腰のナイフをみる。
『だな。 私もヘビ、サル、ヒラメは限界だったから、魂を解放してあげられた』
ミーシャは両足首に巻かれた赤と青の宝石のついたり布をふっている。
星幽石が完全に砕けると修復はできない。 ぼくたちは手持ちの多くを前の戦いで失っていた。
「それはよかった。 四番隊は装備も開発しています。 それは私が作ったものなんですよ」
『ほう、優秀だな』
「い、いえ、そんな」
「シーナさんはどうして軍に?」
「よくある戦災孤児です。 帝国が攻めてきて町が焼かれたとき、隊長に助けられたんです」
『ふーん、あの隊長、なんか弱そうで戦えなさそうなのにな』
「やめなよ」
『あっ! あれは!』
「だめだ!! シーナさん! とめて!!」
「えっ!?」
ミーシャは暴れだした。
その目線の先に、ケーキ屋がある。
「まって! ミーシャ!」
『いやだ!! もう味のない食べ物はいやだ!! たべる!!死んでもいいからたべる!! 邪魔するならここでクロヒョウになるぞ!』
そういって脅すので仕方なく、チョコをさけたケーキをたべさせた。
「うまい! うまい! 最高!!」
パクパクとケーキをむさぼるように食べている。
「大丈夫かな」
「まあたべても大丈夫だとおもいますが、ネコは苦味、酸味、塩味、旨味しか判断できないはずなんですけど」
シーナさんは不思議そうにミーシャが食べているのをみてる。
「気分なの! 匂いでも感じるし!」
そういって、ミーシャがたべ終わり、手をペロペロとなめると、こちらのケーキをじっとうかがっている。 その目は狩人のようだ。
(ただ心配だから、やめさせよう)
「ああ、そうだ。 人間用のケーキだとネコってすごく太るんだよね」
「え、ええ、ネコは人間のように糖分を分解できないですから」
シーナさんがそういうと、ミーシャは耳をピクッと動かし、テーブルのしたで丸くなった。
「かなり高いところに住んでるんだ」
山道を登りかなり歩いた。
「はぁ、はぁ...... ええ、元々彼女はここに家族と住んでいたのです。 それが何者かの襲撃により家族が殺され、心を閉ざしてそこから動こうとしません」
「襲撃、やはり軍かな」
「わかりません。 ですが、隊長がたまたま訪れていたため、彼女は助かりました」
(やはり秘術のことなのか......)
『それで検問があったのか』
「ええ、我々四番隊の保護下ですから、隊長はたびたびここを訪れ警護しています」
「なぜ家族とここに?」
「はぁ、それがよくは...... ただなにかがあり、集落に住めなくなったのではと考えています。 ひぃ、はぁ......」
『ほらほら歩いた歩いた。 黒き使徒に選ばれた精鋭だろ。 情けないぞ』
ミーシャは人の肩に乗って勝手なことを言っている。
「すこし休憩を...... あれは」
すこし離れたところに粗末な家があり、その周囲を囲むように堅牢な建物がある。
「あれが彼女──フィオの家です。 建て替えをすすめても拒否するので、周囲を囲っています」
『あってくれるのか』
「わかりませんね。 命を救ってくれた隊長にだけ、言葉をかわすことはありますが、他のものには話しすらしませんから」
『大変だな』
「......でも気持ちもわかる。 私もそうだったから」
そうシーナさんはうつむいた。
「まあ、話を聞いてみよう」
家の前の井戸から水を汲むぼくと同じぐらいの年齢の少女がみえた。
「あっ! フィオさん! あの!」
ぼくが声をかけるも、こちらをみて、すぐ家のなかに入ってしまった。
『急に声をかけるな。 相手がびっくりするだろう』
「そうですよ!」
二人にしかられる。
「......ごめん」
『全くがさつすぎるぞ、丁寧なくせしてたまにお前はそういうところがある』
「もう少しやさしくしてください」
さらに怒られた。
「わ、わかったよ。 今度はゆっくり話しかけるから」
家に近づき、ドアをなるべくゆっくり音をたてずたたく。
「あ、あのフィオさん。 ぼくたちはレンブラント隊長から話を聞いてやってきました。 すこしだけお話をしていただけませんか」
反応はない。
「やはり、無理ですか」
シーナさんは肩をおとした。
『まあ、集落を追われ、その上家族を目の前で殺された。 頼るものもないんじゃ、簡単には人を信用できないな』
(それもそうだ。 だが、ミーシャのこともあるが、ここしか手がかりがない。 なんとか話を...... あれなら)
「実は、ベルトというレスル族のハーフの少年が殺されたんです」
そういうと、ドアがゆっくりあいた。
「ベルトが死んだ......」
そうフィオさんは驚いた顔でこちらをみている。




