第二十一話「白き聖者の伝承」
他の部隊の活躍もあり、囚人たちのほぼすべて捕縛か殺害された。
唯一、グールだけはさっきの混乱に乗じて逃げきったらしく、その姿を消した。
「......ベルト」
ソアラさんはベルトの矢を握りしめている。
「部族のためか......」
「......あいつは優しかった。 国を滅ぼすなんて言ってたけど、本当なのかわからない。 私らを殺せるのに殺さなかったからな」
そういうと悔しそうに口を結んだ。
「レイスは自我ある人型ディシーストの組織のものだったのか」
黒ずんだ大きな星幽石を見ながらライミーアさんはそういった。
「わかりませんが、監獄への攻撃が奴らの仕業なら、その可能性はありますね」
『ああ、ベルトがいっていたレスル族の秘術をしる必要があるな』
「カイル隊長に話をきこう」
「......レスル族への襲撃」
カイル隊長は怪訝な顔をした。
「カイル隊長もしらないんですか?」
「ああ、その話はきいたこともない。 そんな作戦があれば気づくはずだがな」
腕組みして考えるようにいった。
「ということは、上が情報を隠蔽している」
「......もしくは、軍を装った何者かがいたか」
ライミーアさんとシュリエさんがうなづく。
『どうなってるんだ』
「......レスル族を調べるしかないな」
隊長はそうつぶやく。
「どうやってだ隊長、そんなこと調べようがないだろう」
「そうだよカイル隊長、あなたが上に掛け合うの」
シュリエさんとライミーアさんがきくと、カイル隊長が首をふる。
「仮に上層部がしってても教えんだろうな。 だから...... クルス、ミーシャ」
そうこちらを真剣な顔でみた。
『本当にここ?』
ぼくたちは首都の外れの区域にきていた。 そこにはボロボロの大きな建物がある。
「ああ、ここだよ。 四番隊の本部」
『四番隊ってネクロマンサーの研究部隊だろ。 変人が多いっていう』
「古代のネクロマンサー研究なら、四番隊が詳しいらしい。 レスル族の秘術についてなにか知ってるかもしれない」
建物の敷地にはいると、何かの気配がする。
『おい......』
「ああ、なにかがいる」
ぞろぞろと犬猫がでてきた。
「これは...... ディシーストか」
『やるしかないな』
ぼくたちがかまえる。
「ま、まってください。 攻撃はしないで!」
そう建物から慌てて人がやってきて、犬猫たちの前にたつ。
「君は」
「私は、四番隊のシーナともうします」
そう丸メガネの少女は頭を下げた。
「これは?」
「ええ、警備用の自立ディシーストなんです。 まだ不完全なので敵だと認識したようです。 あなた方は六番隊ですね。 きいていますので、こちらに」
『自立ディシースト。 術者が動かさなくていいのか』
「ほあ!」
『なに!?』
「猫がしゃべった! これが自我のあるディシーストですか!」
「ああ、ミーシャだよ」
「ふああああああ!!」
『ちょっ!』
シーナはミーシャを抱いて、色々眺めている。
「すごい!! 本当に自立して会話している...... 本当にいたんですね。 自我のあるディシーストって!」
感動したように興奮して話した。
『興奮してるところ悪いけど、もう離してもらっていいか』
「はっ! すみません! つい!」
「四番隊は研究者なんだよね」
「え、ええ、ネクロマンシーを研究していますね。 あとは各隊の装備なども開発してますよ。 ネクロマンシーはまだわからないことだらけなんですよ」
『そうなの?』
「もちろん! 大体、魂を移せるなんて、いまだ魂の存在すら確定されてないのに、不思議でしょう! それに移した素体に元の生態の特性まで持ち合わせるのですよ! 物理的にありえません!」
「まあ、確かにこの術は原理がわからないよね。 それで自我のあるディシーストについて四番隊はなにかわかってるの?」
「そうですね。 各地の神話や昔話、文献などをしらべると、そのような事例はあるようです。 とはいえ、本当にいたとは......」
そういってシーナはミーシャを熱いまなざしでみている。 ミーシャはぼくの足の後ろに隠れた。
「ですが、各隊や政府などの情報を総合的に判断すると、自我のあるディシーストとみられるものがいることは確定でしょうね」
「その文献などから、わかることは」
「そうですね。 かつて現れると大災害をもたらすと、彼らのことを昔の人は【白き聖者】《ホワイトセイント》とよびおそれたようです」
「白き聖者......」
『ふーん。 災害をおこしてるって、そいつらの目的は』
「わかりませんが、彼らへの人々の恐怖はおおきく、悪魔のようにかかれる場合も、神のように崇め恐れられる場合もありますね」
(恐怖や畏怖の対象、それが今現れている自我のあるディシーストか......)
「ここは隊長室です」
そう説明すると、名残惜しそうにミーシャを見ながらシーナは離れた。




