第二十話「血鋸刺鮭の贄」
「レスル族が......」
「ああ、ぼくが五才のときだ。 突然、集落に軍が攻めてきた。 リプルのお陰でぼくだけ生き残った。 だから軍の特殊部隊に入隊したんだ。 いつか復讐するためにね」
「軍が攻めてきた...... 一体なんのために」
ソアラさんは自らを落ちつかせるようにきいた。
「......レスル族のネクロマンサーの門外不出の秘術をえるためだ。 それを拒否したから、見つけるために集落ごと皆殺しにしたんだ......」
そうベルトは拳を握りしめるとこちらをみすえる。
「......たった五人で国なんて落とせやしない」
「そうだね。 普通のやり方なら、でもレスル族の秘術なら可能なんだよ」
そういうと笑みを浮かべた。
「なっ!? そんな!」
『ありえない! なにをするつもりだ』
「ふふっ、悪いけどこのまま逃げさせてもらうよ。 君たちはもう戦える力もないだろう」
レイスはしばられた縄をぬけ、ベルトの後ろにたつ。
「さあレイスさま、いきましょう」
レイスは無言で石が連なったネックレスをはずす。 そしてそのままその腕でベルトの胸を貫いた。
「えっ......」
「なっ!?」
「ベルト!!」
「な、なぜ...... レイスさま」
「......このものたちを生き残らせるわけにはいかない。 それにもはや貴様は不要」
「不要......」
「......奴らともども贄となれ。 彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【血鋸刺鮭】《ブラッドピラニア》......」
ベルトの体から流れる血液にネックレスの石がおちると、何匹かの赤い魚となって地面を泳ぐ。
「......なっ!! なに! これは! きゃああああ!!」
「......なんだ!? こいつ! くそっ!! くるな!! がああああ!!」
目覚めたクレアとリガントに魚たちは食らいついた。
レイスはベルトの体を雑に投げ捨てた。
「やめろ!!」
するとクレアたち三人はあっという間に魚に食いつくされた。
「なんてことを!!! ベルトは部族のためにここまでしたのに仲間だろうが!」
ソアラさんの怒号が響いた。
「......仲間などではない。 ただの贄だ。 お前たちもな」
「やるぞ! ミーシャ、ソアラさん! 彷徨える魂よ、我が声に答えよ」
『わかった! 彷徨える魂よ、我が声に答えよ!』
「ゆるさねえ! 彷徨える魂よ、我が声に答えよ!」
ソアラさんの腕に巻いた紐が、のび白いヘビとなってレイスにむかうが、土にもぐった赤い魚はそのヘビを食い散らかした。
「くそっ!」
『こいつらすばしっこい上にかみつく力が強い』
クロヒョウとなったミーシャも足元の魚に苦戦しているようだ。
(ソアラさんもミーシャも限界...... いまぼくが使えるものは、さっき拾ったこのつぶれた弾、一発だけ、やるしかない!)
「被覆鋼弾燕」
隙をつき、レイスの頭を撃ち抜いた。
『やったか!』
「いや、魚が動いている! これはまさか!!」
頭を撃ち抜いたレイスは立ち上がってきた。
「こいつもディシースト!! そんな!?」
「......全員、我らの贄となって滅べ」
赤い魚が地面から一斉に現れた。
(逃げられない!!)
その瞬間、銃声がすると地面が光り、無数の赤い魚は砕けた。
「これは!?」
「間に合ったみたいだね」
後ろからライフルを肩にのせ、金髪の女性が馬にのってやってきた。
「ライミーアさん!」
それは六番隊、副隊長のライミーアさんだった。
『ライミーア!』
「二人ともずいぶん手酷くやられたね。 私の家族を痛め付けてくれたようね、この落とし前はつけてもらうよ」
そういってライミーアさんはレイスを睨み付けた。
「......ぬかせ、誰が増えようがかわらん。 すべて贄となれ」
赤い魚が集まり巨大な鮫のような大きさになった。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。【電気鰻弾】《エレクトリックイールバレット》!」
ライフルから放たれた数発の弾はウナギになり、巨大な赤い魚にあたると、バチバチと轟音を響かせ光った。
「ぐあああああああ!!!」
レイスも光を放ってさけんでいる。
「あれはなんだ!? 雷か!」
ソアラさんがきいた。
「ああ、ライミーアさんの電気ウナギだ」
『血液は電解質があるからな。 あいつとライミーアは天敵だ』
レイスは煙をたてながら倒れた。
「クルス、こいつはなにものなの」
「ええ、実は......」
ぼくはライミーアさんに事情を話した。




