第十九話「裏切るの矢」
「やったか......」
「なんてな」
「なっ!」
グールが立ち上がると、体には新たなヒレが現れていた。
「骨にディシーストを使ってるのに、複数あることを想定しないわけないよな。 だから全部は使わず残しておいた」
「くっ!」
「まさか、弾を二つ連結していたのか。 ヒレを全部使わせられるとはな。 お陰でそこら中、骨がくだけた...... だが、これでもお前たちは殺せる」
そう残った片腕のヒレをこちらに向けた。
『そううまくいくか。 彷徨える魂よ、我が声に答えよ』
「なんだと!? まだ!」
『【骸黒豹】《デッドバディブラックパンサー》』
ミーシャの体が大きくなり、クロヒョウの姿へとかわっていく。
「はめたのか......」
グールがヒレを構える。
『そういうことだ!!』
ヒョウとなったミーシャが素早く左右に跳躍して、爪で腕のヒレを切り裂く。
「ぐあっ!」
ミーシャがグールをその前足で殴り付ける。 グールはそのまま気絶した。
「これでよし」
気絶させたグールを拘束する。
「おーい!」
そういいながら、ソアラさんがクネアらしき人物を引きずって歩いてきた。
「無事だったんだね」
「ああ、なんとかな。 かなり毒を食らったがな...... もう術は使えねえ」
疲労困憊な様子でソアラさんはその場に座り込んだ。
『あとは、ベルトか』
「あいつの相手はレイスか厄介だな...... 大丈夫かよ」
「確か、レスル族だっていってたね」
「ああ、少数民族だ。 古代からネクロマンサーの秘術をもつゆえに迫害されてきた民族。 だから遥か昔からたびたび政府への反乱を起こした。 レイスはその族長だ」
『国への反乱に加わったのはそのせいか』
「多分...... でも反乱といっても、たった五人と囚人たちで何をするつもりだったんだろう」
「やはり、帝国が関与しているのかもな」
(それも考えられるが、なにか引っ掛かる)
『......この音』
ミーシャがなにかを感じた。
「おーい......」
傷だらけのベルトが、体中にタトゥーをいれている巨漢の男の手をしばりつれてきた。
「はぁ、なんとか捕らえられたよ」
「よくやった! ベルト」
『これで全員捕まえたな!』
「ああ、あっちにおいてきたグールをつれて早く町へと帰ろう。 気になることがあるんだ」
「ん? なんだクルス、気になることって」
ソアラさんが怪訝な顔でいった。
『ブロストを殺したもののことか』
「ああ、この四人はあとから合流にきた。 彼を殺した人間は誰なんだ?」
「でも四人は国への反乱を起こそうとしてたから、帝国人のブロストは邪魔になったとか」
ベルトは首をかしげる。
「本当かよ!」
ソアラさんが驚いていった。
「......そうだね。 その可能性はある。 でもブロストは内乱が起こることは歓迎するだろう?」
「やはり帝国の関与は邪魔なんじゃないか。 自分たちでことを起こさないと、この国をおとしても結局帝国に介入されるしな。 利用するだけして殺したとか」
ソアラさんはそういった。
『そもそも、どうやってこの国を内乱に導くつもりなんだ。 囚人に暴れさせ国民に暴動でも起こさせるつもりか』
「いや、それはいくらなんでも場当たりすぎるだろ」
ミーシャとソアラさんがそうはなしている。
(そこだ。 ......でもいまは)
「どうしたんだい? クルス」
ぼくが歩き出してしゃがむと、ベルトは不思議そうにきいた。
「......ベルトはどうしてネクロマンサーになったんだ」
「急になんだい? 前にいっただろう。 僕はこの国を守るため......」
僕は立ち上がると、ベルトに銃を向けた。
「おい! クルス、なんのつもりだ!」
「ミーシャ、ソアラさん、ベルトからはなれて構えるんだ」
「なにを......」
『ソアラ離れろ』
ミーシャに促されて二人はこちらにむかった。
「なんの真似だよ...... クルス」
「ブロストが殺したのは君か」
「なっ! ありえないクルス! ベルトが裏切るわけがない! こいつは子供の頃から軍にはいってんだぞ!」
『話してくれクルス』
「そうだよ。 なにがなんだかわからないよ」
ベルトはそういっているが、焦るでもなくその落ち着いた表情はかわらない。 その目は覚悟をした目のように見えた。
「それならなぜ、君はあとからきたのに、四人が反乱を起こすと知っていた」
「............」
「それを知っているのは、ぼくとミーシャだけだ。 ブロストを殺したのが君なら、それを知ってるのもうなづける」
「おい嘘だよな! ベルト! そいつから聞き出したんだろう!」
「............」
ベルトは答えない。
「......彷徨える魂よ、我が声に答えよ」
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 散弾蟻」
「【駄津矢】《ニードルフィッシュアロー》」
袖下から放たれた矢は細い魚となって、ぼくの肩に刺さった。
「ぐっ......」
「てめえ! ベルト! くっ......」
「無理しないでよ。 ソアラさん、もう体力も限界だろ。 あいつらとやりあって無傷なわけない。 そのまま黙ってみててよ」
ベルトがこちらに両腕を向けると、その袖から細い矢が装填されているのが見える。 そしてその腕にはタトゥーもあった。
(あれは......)
「いつからだ...... いつから裏切ってた」
ソアラさんがそうきいた。
「ふふっ、裏切ってたわけじゃない。 最初からさ。 ぼくはもともとこの国を滅ぼす気だったからね」
「やはりベルト。 君はレスル族なのか」
『レスル族!?』
「はは、ご明察、ぼくはレスル族とのハーフなんだ。 だけどぼくたちはすべてを奪われた。 家も家族もリプルも...... 集落ごと焼き払われた。 この国の奴らによってね!」
そうベルトは憎しみの目でこちらを見た。




