第十七話「平和を拒むもの」
「やけ死ね!!」
リガントは燃える刃を振り上げ、距離をつめてきた。 ぼくは拳銃を向ける。
「撃たせるかよ!」
振るわれた刃をとっさに拳銃でうける。
「くっ!」
(熱っ! だめだ! 攻撃がはやい! 銃を撃つすきがない!)
「そら! そら! さっさと焼け死ね!」
連続で切りつけられ、銃をたてに防戦するしかなかった。
「近接戦闘は苦手のようだな! 死ね! 滅ぶこの国とともにな!」
(滅ぶこの国!?)
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ!」
銃口をリガントの頭に向ける。
「撃たせねえって言ってるだろうが!」
そういってリガントは熱刃を振り下ろした。
「【蜻蛉三叉】《ドラゴンフライトライデント》!」
拳銃の形が三股の槍のように伸び、リガントの肩を貫く。
「がっ!」
さらに槍を振るうと、リガントはガスライターを投げつけ距離をとった。
「て、てめえ...... 誘いやがったな」
「投降しろ。 その肩ではもう戦えないだろう」
「へっ...... どうかな」
ブンブンと音がする。
(なんだ...... 羽音、近い!)
「熱っ!!」
反応して回避したが、何か黒いものが横をすり抜ける。 それは燃える黒いハチだった。
「上!?」
それが上に群れで黒雲のように飛んでいる。
「蜂!!」
「そうだ。 俺の【炎炭蜂】《ファイアコールビー》で、骨まで焼きつくしてやるよ」
空に飛んでいたハチが降りてきて、ぼくの周りをまわり始めた。
「くっ! 熱い!」
(あの黒いのは石炭か...... さっきはこいつを大量に周りに飛ばしていて、ぼくの弾丸を防いだのか)
矛で振り払うもハチは速い上に小さく当たらない。
「そんなもの当たるか! ゆっくり蒸し焼きにしてやれ!」
ハチたちが近づくとぼくの周りを球体のようになり、ブンブンと羽を激しく羽ばたかせた。 やけつくような熱風がぼくを襲う。
(これは蜂球のようなものか! このままだと本当に蒸し焼きにされる! だけど近づくと距離をたもたれる! だがもう少し温度を......)
熱で意識が朦朧とする。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ......」
「無駄だ! 距離をつめるのも当てるのもな!」
「水井守」
鞄から水筒を投げつけ、水のイモリをつくりだす。
「そんな水じゃ! こいつを消せやしねえ! 」
水のイモリは熱風で一気に蒸発していく。 それは白く辺りを包んだ。
「水蒸気! やつはどこだ!」
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ...... 散弾蟻!」
「おっと、散弾! 俺を狙ってるのか。 だがお前も蒸気の中なんだ。 声だけでそんなものは当たらん!」
ハチの羽ばたきで白い蒸気も晴れていく。
「うっ......」
ぼくは槍を落として、その場に膝をついた。
「くくくっ、もう弾もないか、打つ手なしだな」
「お、お前たちは、何をしようとしている......」
「どうせ死ぬなら教えてやろう。 国とりだ! この国に内乱を起こす! そしてこの国を支配する!」
「な、なぜだ...... やっと戦争が終わったのに」
「だからだ! この力をふるってのしあがるのさ!!」
「......そんなことをしてなんになる」
「俺たちネクロマンサーは争いでこそ、その力をいかせる! なのに平和になったら俺たちの存在意義はどこにある!? ただの化物だ! いきる場所すらねえ!」
そういいながらリガントはちかづいてくる。
「......そうかもしれない。 でもそうはさせない...... 彷徨える魂よ、我が声に答えよ」
「なにネクロマンシー!? どこに武器が!」
「【熱蜻蛉矛】《ヒートドラゴンフライハルバード》!」
隠し持っていたガスライターをつけて、それを投げつけた。
「それは俺の!!? 防げ! ハチども!」
「遅い!」
ガスライターの炎のトンボは矛のような形となり、高速で飛ぶとハチが戻るよりはやくリガントの足を貫く。
「ぎゃあああああ!」
リガントの足がもえ転げまわった。 ぼくは近づき気絶させた。
「五人はこの国で内乱を起こすつもりだったのか...... そんなことができるのか。 いやいまは......」
ぼくは歩いてむかう。 遠くで激しい音がしている。
「あれは......」
ちかづくとミーシャの石のサルとヒラメが男と戦っていた。




