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第十三話「帝国の影と筒抜けの行動」

「なるほど...... そのディシーストたちは星幽石を集めていたか」


 カイル隊長は腕を組みうなづく。


 ぼくたちは首都【アリトリエ】にある黒の使徒ブラックアポストルの六番隊の本部に来ていた。


「他に情報は」


「他の地域でも、真人教の信者が爆死する事件がおこった。 新聞などは狂信的自殺と報じている」


『そんなわけあるか! 同時に死んでんだぞ!』


 ミーシャはジリジリさわろうとよってくるカイル隊長を、毛を逆立てて威嚇していった。


「ふう、隙がないな...... ああ、多分、報道に上から何か圧力がかかっているな」


「......混乱を避けるためか。 それとも...... それで隊長、黒い錠剤の成分は?」


「ふむ、成分は小さな星幽石と石炭だ」


(星幽石はわかるが、石炭...... あの二人のネクロマンサーの術か。 ぼくのところでは爆発しなかった。 不発か......)


「そちらも色々調べたいが、今はその暇はない。 三番隊に任せよう」


『なんだよ。 他に事件でもおこったのか?』


「ああ、各地の刑務所でも爆発事件がおこった」


「真人教ですか!?」


「それはわからん...... ただ厄介なことがおこっている」


「囚人が逃げ出したということですか」


「ああ、そうだ。 しかもベルシア監獄でもな」


「なっ!? ベルシアって...... ネクロマンサーが囚人の特殊監獄!」


『戦争時の帝国の捕虜なんかもいる三ヶ所あった特別な監獄のひとつだろ』


「そうだ。 それらの囚人が逃げ出したようだ」


「じゃあ、あのリジェクトたちが関わっているのか」


『やつらは帝国につくられたものたちかもな』


(それなら帝国は、やはり人の蘇生を可能にしてるということなのか......)


「正確なことはわからん。 ただ今は脱走したネクロマンサーたちを捕らえるのが先だ。 今他の隊員もでている。 お前たちも三番隊と連携してやつらを捕らえろ」


「わかりました」


『ああ』


 そしてカイル隊長はミーシャにすりより鼻をかまれた。



『それで合流地点がここか』


「ああ」


 目の前に、黒き使徒ブラックアポストルの洋風の建物がある。


 ぼくたちはベルシア監獄の近くにある、セベトという町に来ていた。 


「三番隊との合同任務、昔訓練であったことはあるけど......」


『三番隊といえば治安維持...... まさかあいつとじゃないよな』


「知ってる人がいるの?」


『......まあな』 


 黒き使徒ブラックアポストルは六部隊で構成し、それぞれ任務があった。 一番隊は精鋭で構成され、二番隊は諜報、三番隊は治安維持、四番隊は研究開発、五番隊は防衛、ぼくたち六番隊は遊撃部隊だった。


 二階建ての建物に入ると、目の前に大きな階段があった。 その横に通路があり曲がり角がみえる。


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【柔形蛇】《ソフトスネークウィップ》」


 通路を歩くと、目の前に三本の長い鞭が迫る。 かわして銃を向けるが、目の前に人の姿はない。 三本の白い鞭が落ちているだけだった。


『まだだクルス!』


 そのミーシャの声でみると、鞭だと思っていたのはヘビで、噛みつこうとあり得ないほどその体を伸ばした。


(素体はゴムか!)


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 水井守アクアニュート


 鞄からだした水筒から水のイモリを放ちそのヘビをとらえる。 そのまま奥へと放った。


「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【鋼穿山甲】《メタルパンゴリン》」


 奥から球体が水のイモリを弾いて高速で転がってきた。


 それをミーシャの石のサルが回転を止めた。


(これは......)


「ほう、まあまあ、やるな。 さすがライミーアさんのいる六番隊だな」


 奥から、軍服の前を開けた勝ち気そうな少女と、同じく制服をきた見知ったふくよかな少年が現れた。


「やるなじゃないでしょうソアラさん。 ごめんクルス、つい試すって言われて」


 ふくよかな少年はそういった。 ぼくは前の合同任務でこの少年、ベルトと顔見知りだった。


「ああ、大丈夫。 ぼくはクルス、こっちはミーシャです」


 そうぼくが紹介すると、ソアラさんはこちらに近づくと、ミーシャに顔を近づけた。


「ふーん、本当にネコだな。 ちったあ、かわいげがでたんじゃねーのミーシャ」


『うっさいソアラ! まさかあんただったとはね』


「知り合いなの」


『ああ、昔ネクロマンサーの訓練生で女子の同期よ』


「そうだ。 私とこいつはいつもトップを競ってた。 それがこーんなかわいいネコちゃんになってるとはね。 ぷははははっ」


 ソアラさんは地面で笑い転げてる。


『この!!』


 引っ掻こうとしたミーシャをソアラさんは軽々とかわす。


「おっと、そんな短い手足じゃ、昔みたいには届かないね」


『きーー』


 ミーシャは地団駄を踏んでいる。

 

「まあまあ、任務だから」


「そうだよ。 ケンカしてる場合じゃないよ」


 ぼくとベルトは二人でなだめた。



「はあん? 今そんなことになってるのか」


「ぼくたちは治安維持任務についてるから知らなかったね」


 二人は驚いている。 ぼくたちはリジェクトたちのことを話した。 カイル隊長からも話す許可をえていたからだ。


「二人から三番隊に伝えてほしい」


「わかった。 でもなんで上からじゃないんだい?」 


「バカかベルト、そりゃあれだろ。 上に帝国側のやつらがいる可能性があるからに決まってる」


 そうソアラさんはいいきった。 ベルトもあっ、という顔をした。


(やはり、みんなそう思ってるのか)


「......そうなんだ。 どうやらぼくたちの行動がやつらに筒抜けみたいなんだ」


(そうディジーズのいた建物に、ぼくたちがいくのがばれていた。 更に神殿でぼくたちがいたことをリジェクトは驚いてもいなかった。 行動がばれていたとしか思えない......)


 そうカイル隊長は考え、上に細かくは連絡をしていないらしい。


「確かに信用できそうなのは、お前ら六番隊、最精鋭の一番隊か、ウチの部隊、四番隊の変人たちぐらいだもんな」


『ああ、二番隊は諜報、とはいえ秘密主義で情報がほとんど渡してこない。 五番隊は防衛だが、元々犯罪者と噂される異端部隊。 二隊ともなにをしてるかわからない連中だ』


「ああ、ただ、二番隊と五番隊はあと二ヶ所ある別のネクロマンサー監獄へと派遣されたらしいから、ここにはいない」


 そういうと、みんな安心したのかほっとため息がでた。


「でも諜報が怪しいなら、この国もうどうしようもなくない?」


 ベルトが不安げにいった。


「まあ、国内なら軍と対になる国安もあるから大丈夫だと思うけど......」


「だな。 だがお前らも遊撃部隊といいながら、主な任務は捜査だろ。 それこそ警察や国安でよくないか?」


「元々一番隊員だったカイル隊長が、一番隊の【ロード】総隊長の命で作った部隊だからね。 起こる事件に機敏に対応できるように制約なしで行動できるらしい」


「へえ」


「まあネクロマンサーの事件は警察も通常の軍じゃ対処できないからね。 そういう部隊も必要なんだろうね」


「まあ、それもそうか」 


 ソアラさんとベルトの二人は納得するようにそういった。


(そう、でも総隊長がわざわざ六番隊をつくったのは、何か起こると予期していたんじゃないか。 そう思えてならない)


 いやな考えが頭をよぎった。

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