第十一話「血蛭鎧のプリエステス」
「よし、このまま警察に向かおう」
『そうだな』
ぼくたちはなるべく信者より離れた、ところから帰ろうとした。
「クルスさん!」
そう声がして振り向くとレリーさんがいた。
「ああ、レリーさん、ここに来られていたんですね。 実は警察にみてもらいたいものが......」
「本当ですか......」
レリーさんのその手が懐に伸びた。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ」
その瞬間、銃声が響いた。 僕の頬を銃弾がかすめた。
「ぐっ! なに、このネコ」
こちらに向けようとするレリーさんの腕に、ミーシャが噛みついている。
「......なぜ、あんなにお姉さんを止めていたのに」
「教団の邪魔はさせない......」
こちらをにらむレリーさんの目は怒りで満ちている。
「あなたたちが神をおとしめるものたちですね」
ふりかえるとジステマとプリエステスがいた。
「なんでここに......」
「神を騙すことなどできません。 あなたも神の奇跡をみたでしょう」
「あれは神の奇跡なんかじゃない。 あれはディシースト、ただの肉体だけの空っぽの存在だ」
「......おろかな。 この世界の醜い人間と同じ、もうかまいませんプリエステス、あのものたちに慈悲のこころで、真の人間にしてあげなさい」
「......はい」
そう静かに答えたプリエステスは、指輪をこちらになげた。
「......彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【砂大蛇】《デザートサーペント》」
すると砂があつまり、大きなヘビとなって蛇行して迫ってくる。
「矛蜻蛉」
打ち出した弾丸はトンボとなってヘビの胴を切り裂く。 だが崩れた砂はすぐにもとにもどった。
(あの指輪が星幽石か。 体が大きくて星幽石の場所がわからない! 再生も早い!)
『砂猿』
砂からつくられたミーシャのサルがヘビをおさえた。
『長くはもたないぞ! やつの星幽石を壊さないと!』
(あの大きさの中から星幽石を見つけるのは難しい。 カエルだと小さすぎる、アリでも見つけるには時間がかかる。 それなら)
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【水井守】《アクアニュート》」
ぼくは鞄の水筒の蓋をはずして弾丸をいれるとなげた。 水はイモリとなりとなりヘビへと当たった。
「ミーシャ!」
『おお!!』
ミーシャのサルがヘビを殴りつけ砕いた。 砂のヘビはもどろうしているが崩れていく。
(水に濡れて崩れた箇所は固まって戻らない! あれだ!)
崩れた場所に宝石のようなものが見えた。
「跳弾蛙!」
銃をはなつと跳ねた弾丸はカエルとなり、その星幽石を打ち砕く。 ヘビはその場に崩れ去った。
「そんな...... 神の使いを、プリエステス」
「......はい」
「神のために、なんとしてもあのものたちを滅ぼしなさい」
「......はい。 彷徨える魂よ、我が声に答えよ」
プリエステスはそう答えると、ジステマの胸をその腕で貫いた。
「なっ...... がはっ」
ジステマは驚いた顔のままうなだれるように絶命した。
「そんな! ジステマさまを! なんで!」
「......神のために命令を実行します。 【血蛭鎧】《ブレッドリーチメイル》」
胸につけていたネックレスをくだくと、大量のジステマの血がヒルとなり、プリエステスを包んだ。 ジステマはミイラのようになっていく。
『なんだよ! あれはネクロマンシーか!?』
プリエステスは全身黒い鎧をきたようになり、こちらに向かってくる。 そしてミーシャのサルを砕いた。
ぼくはとっさに銃を放つが鎧に弾かれた。
「何て固さだ! あれは血液の鉄分を鎧にしているのか!」
(あんなことができるのは普通の人間じゃない! こいつも人型のディシーストか!)
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 【血蛭剣】《ブラッドリーチブレイド》」
突進してくるプリエステスの腕が剣のようになった。
「くっ!」
かすったがなんとかかわした。
(ヒルを操って形を変えてるのか! ただあの鎧を貫く威力は被覆鋼弾燕だけだ。 でも貫通できるかわからない。 あの鎧を弱めないと......)
「ミーシャ! あのヘビを頼む!」
『でもあんな鎧を貫けないぞ!』
「かまわない! たのむ」
『この疲労ではもうあまり使えないってのに...... しかたない! 彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 【砂鎖蛇】《サンドバイパー》』
ミーシャがしっぽに巻いた鈴を地面に着けた。 地面が盛り上がるとヘビが砂からうまれ、プリエステスに巻きつくと、体をのぼりその鎧に噛みついた。
(甦らせたディシーストはもとの魂の性質をもつ。 それなら!)
「神の任務遂行の邪魔です......」
プリエステスは鎧に噛みついているヘビを弾いた。
『やっぱり効かない!』
「いや! 彷徨える魂よ、我が声に答えよ! 被覆鋼弾燕」
(ミーシャの鎖蛇は出血毒をもつ、あれは血液を溶解させる! あれがかんだ箇所の鎧は!)
ぼくが放った弾丸はツバメとなって胸にあたり貫くと、星幽石が砕ける音がした。
「ま、また神への信仰が邪魔され...... る」
そういうとプリエステスの身体は、ぼろぼろと砂のように崩れていった。
『やはり、こいつもディシーストだったな』
砕けた星幽石をみて、ミーシャがいう。
「ああ」
「ジステマさまがいなくなれば、もう、スタリオは......」
そういうと、レリーさんは伏せて顔を覆って嗚咽した。




