第2章 その36
よろしくお願いします。。。
精霊神殿にやってくる志願兵は、その場で適性診断を受ける。
そこで衛士の素養が認められると、救世に命を捧げる覚悟の有無を問われる。
最後の判断は当人に委ねられるが、得られる報酬や名誉のため、断って志願を取り下げる者はほとんどいないのだという。
「衛士ども、ばかばっかりね」
「そう言わないでください。
それだけ日に日に凍てついていく星の在りようが問題視されているんです」
「この星の……」
エティとキーペの会話を黙って聞いていたワーテルは、ソリの一台目に少年衛士の骸を載せてから三台目に向かって歩き出した。
エティが彼の背中に礼を述べると、彼は振り向かずに肩の上から彼女へ向けて手を振ってみせた。
キーペが一台目にエティを促す。
エティはキーペに話の続きを促しながらソリに乗り込んだ。
説明が続く。
捧命の儀式を経て兵士から衛士にクラスチェンジした者は、その瞬間からヒト以外のものに変化する。
その代償として、そのままでは侵害者の存在を知覚できないところを、自身の五感のいずれかを強化して、敵の位置や行動を把握できるようになるのだと。
「衛士の方は生きている間もコインに変化できます。
この状態で持ち運ぶと食事や睡眠が無用になるんです。
だから今回の探索行にも衛士の方以外にもコインを十枚ほど持ってきています。
ぼくたちはコインの衛士に慣れているので彼らの生き死にに疎いんです」
「どんな大義名分を並べ立てても、人間であることを辞めてまで死ぬことを望むなんて間違ってるわよ。
慣れちゃだめ。
コインにしないで人間に戻してよ。
ああ、でも十人も急に増えたらソリに乗り切らないかしら?」
衛士のこれまでの有り様を根本から否定するエティ。
彼女はヒトがヒトでなくなることががまんならず、そこから正そうとする。
しかし、三台のソリの二台目には食料や衣類が積んである。
一台につき七名乗れるが一台目は少年衛士を寝かせているのでもう余裕がない。
三台目にはあと三人乗れるが、もう一台必要ということになる。
エティが難しい顔をしているとキーペが困り顔で言う。
「エティ様。
慣れてください。
これまでコインシステムに異を唱える乙女はいなかったのに、どうしてそこまで……」
そのキーペのセリフでいよいよ怒りが頭頂部に届いたエティは目を吊り上げて怒鳴った。
「だめったらだめよ!
コインじゃないわ、元は人間だったのよ!
救世がなんだって言うの!?
何回も救世に失敗しているのは、そうやって一人ひとりの命をおろそかにしているせいじゃないの?
少なくともこのあたしが役目についている間は、衛士を盾にすることは禁止よ!
誰に何を言われても変わらないから!」
「……分かりました……。
ではどちらかお選びください。
衛士の方を盾にしないことを優先して、この状態のまま神殿に帰るか。
コインを人間に戻すことを優先して、ソリを調達するために予定通りゼーソンの街に向かうか」
「目的は果たしたわけだし、一刻も早く帰ったほうが余分な侵害者からの襲撃は防げるわけね。でも、コインはコインのまま……ちなみに、ここからだとどっちが近いの?」
「ここからなら神殿のほうが近いです」
「……帰りましょ。キーペ。
早くこの子、弔ってあげたいし」
エティは、まるで眠っているだけのように見える少年衛士の頭を、そっと撫でてから前を向いた。
今まで我慢してた分、エティが止まらなくなってます。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!




