第2章 その32
よろしくお願いします。。。
「ねえ。ということは……うん。こんなこと聞くの失礼なんだけど……」
エティは包帯の上からバングルを装着し直してからも、しばらくの間、聞きづらそうに言い淀んでいたが、やがて首を傾げて言った。
「今のゴルドは──衛士よりも弱いってこと?」
「! そう……」
「それはないですよ。
守護者様は皆様ご開通の前からご自身の内包している量に従って精霊魔法をお使いになれます。
ゴルド様は一番その量が多いんです。
開通前やエティ様がいらっしゃらない場合の戦闘で即戦力になれるのはゴルド様ですよ」
「……」
ゴルドは、エティの疑問に明るくした表情を、キーペの解説で暗くしてうつむいた。
エティはそれが気にはなったが、何となく追及もしづらくて、結果としてスルーしてしまった。
それでも心の片隅にそれは長く残って、いつかはちゃんと話さなくちゃと彼女の中でくすぶり続けた。
それは、先ほどから変わらない、彼を『守らなければならない』という感情とともに。
* * *
こくり。
こくり……。
ソリの中で膝を抱えて座りながらうたた寝しているのはエティだ。
味気ない夕食を終えて時間が来るまで待っている間、エティのように仮眠を取るものと、フィーレたちのようにカードゲームで暇を潰すものとに分かれた。
キーペはどちらでもない。
見た目一番年若い少年神官はシートにもたれて天窓を見上げ、星月をじっと見つめている。
満月には足りないが半月よりは太っている。
そんな月が中天にかかり、宵空がわずかに明るく見えるようになるとキーペが告げた。
「始まりましたね。
皆様、行きましょう」
仮眠組が集まっていた一台目のソリではエティ以外は皆、キーペのその言葉ですぐに起き出した。
両腕を上にあげて伸びをする者。
肩に手を置いて頭を左右に傾ける者。
ひと足先にソリから出て屈伸する者など、様々だった。
態勢の割によく寝入っているエティを見て、キーペはそれまでのかたい表情を崩さずに彼女へ近付いた。
その安らかな寝顔を見つめるキーペは切なげに眉間にしわを寄せた。
それを顔を左右に振ることで面から追いやり、彼はエティの頬に触れた。
「エティ様。エティ様……時間ですよ。
起きてください」
「ん……? っ!」
目を覚ましたエティは、すぐ目の前にキーペの無表情な顔があって驚きに身を引いた。
が、彼女のすぐ後ろには壁があり距離を取ることは叶わなかった。
「おはようございますエティ様。
すぐに出られますか。
月闇の刻が始まっています。
二時間ほどで終わりますので──お早く」
何かを察したか、キーペのほうから彼女から距離を取りつつ手を差し出した。
エティは少年神官のまだ育ち切らない手のひらに自身のそれを重ねて、ソリから出ながら答えた。
「あの岩場までここから五分もかからないわ。
それでも急ぐなら、所要時間がそこそこかかるってこと?」
「ええ。属性の相性もありますが、長ければ一時間といったところでしょうか」
「相性ねえ。あたしの無属性が吉と出るか凶と出るか分かんないわね」
「……エティ様」
「ん?」
ソリから出て離そうとした手をつかみ直されたエティは、目を丸くして彼を見下ろした。
その表情はいつになく無の境地。
エティは首を傾げて彼の顔を覗き込んだ。
キーペには気がかりがあるようです。
そこ引っ張って次週お楽しみに!
…していただけるとうれしいのですが。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。




