第2章 その29
よろしくお願いします。。。
「おい!」
隣にいる大人衛士のもう片方がたしなめたが、口答えしたほうは愉快そうにエティの反応をうかがっている。
エティは両のまぶたを伏せてあごを持ち上げると、ふん。と鼻で笑って言い返した。
「聞いたわよ。あんたたち侵害者に襲われたらなす術ないんですってね。
一回限りの使い捨ての盾になるより、隅っこで声援でも送ってたらどう?
そのほうがずっと価値的よ」
「エティ様!? 言い過ぎ」
キーペが取りなそうと一歩踏み出したが、時すでに遅かった。
大人衛士が売り言葉に買い言葉で急速に話の内容をふくらませる。
「ああ、ああ!
そこまでおっしゃるならお言葉通りにさせていただきますよエティサマ!
それで守護者の誰かがおっ死んでもオレらのせいじゃねえからな?
忘れんなよ!?」
「先輩! 命を大事にするのと敵に立ち向かうのとは両立できると思うんです!
だから」
少年衛士が亀裂を埋めようと口添えを試みる。
だが回答はにべもなかった。
「うるせえぞ新入り。
ど素人にカンタンにほだされやがって。
命を大事に?
どのツラ下げてそんなセリフ言えるんだ。
オレらは皆、死ぬことを恐れないって誓って集い合った兵士だ。
だからこそ『衛士』を名乗れる。
それを忘れたか」
「うるさいわよ腐れ衛士。
きれいごとに心酔して死を美化したくせに図々しいわ。
役に立たないことが分かっているのに同行したがるなんて。
ただの自己満足じゃないの?
頼むから侵害者が出てきても割り込んでこないでよね」
「行かねえよっ!!」
「エティ様! ぼくは命を大事にしながらお守りします!」
大人衛士が完全にへそを曲げた横から身を乗り出した少年衛士は、ぐっとこぶしを握ってエティに詰め寄った。
エティは正直、この少年衛士のことが少し心配だった。
本当に分かってくれているのだろうか。
対抗手段がない敵を相手に、はたして何ができるだろうか?
できれば大人衛士たちと一緒にどこかへ隠れていてほしいのだが。
しかし、非常時に取る行動というものは、結局は本人にとって納得がいくかいかないかがすべてだ。
今ここで説得しても聞いてもらえない気がする。
エティは少し考えて、負けたようにこう言った。
「ああ、ありがと……無理しないでね」
「はい!」
少年衛士はエティの言葉をそのまま受け取ってしまったようで、うれしそうに満面の笑みを浮かべた。
痛そうに頭を押さえた大人衛士のひとり。
連れの暴言をたしなめようとしていた、多少常識的なほうの大人衛士が少年衛士に近付いて声をひそめた。
「おい新入り。侵害者に対して俺らができることなんてないぞ……! 忘れたか?
本当に死にたくないなら、俺らと一緒に隠れとけ!」
「ありがとうございます先輩。でも大丈夫です」
「大丈夫じゃねえだろ! お前な」
「皆さま、ソリの準備ができましたよ。行きましょう!」
更に言い募ろうとした衛士は遠くから聞こえてきたキーペの出立の声に阻まれて仕方なくソリに乗り込んでいった。
エティは言おうと思うと本当に歯に衣着せないひとなのです。
ああもう、良い大人なのに…。心配ですね。
気がかりを残しつつ今年の想定外乙女はこれが最後の更新です。
続きはまた来年お目にかけましょう。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!
良いお年を〜。




