表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/43

プロローグ

よろしくお願いします。。。

 その日、エティはちょっと疲れていたのだ。


 冒険者ギルドで受付嬢をしている彼女は、ダンジョンから帰ってきた冒険者たちの求めに応じて、彼らの冒険者レベルの判定を行うのが主な仕事となる。


 その日はダンジョンから帰ってくるパーティが多くて、三十人近くの冒険者を相手にレベル判定を行っていた。


 レベルも浅い初心者はすぐに終わるからそう疲れないで済むのだが、問題は中堅から熟練の冒険者だ。


 中堅は実際のレベルに見合わない変なプライドを持っている者が多く、せっかく行った判定にいちゃもんつけてきて「そんなに低いはずはない。もう一度やり直せ」と怒鳴ってくるのだ。

 何回やっても結果は同じで、むしろ下がることもあるので終わりごろにはすごすご引き下がるのだが。

 困ったものである。


 熟練の冒険者はさすがにそんなことはない。

 高いレベルをはじき出す自身のレベル判定に、はにかむように笑うナイスガイが多い。

 が、高レベルの判定はエティの類まれなる受容能力があってこそだ。

 体内にある『力』の器が極端に広いエティだからこそ正確な判定ができるのである。

 それを知っているからギルドメンバーも冒険者たちも高レベルの判定は皆、エティに持ち込んでくるし、もちろん断れない。


 そのためエティはその日、疲労困憊だった。

 ちょっとした昼休憩のつもりが、二時間も眠り続けてしまうほどに。


 だからだと思うのだ。

 家に帰って窓辺にあるベッドに倒れ込んだ途端、すべてをなげうって熟睡してしまったのは。


 * * *


 夢を見た。


 と、思った。


 もちろん夢に違いない。


 ベッドで眠っている自分の周りを取り囲んで大勢の声が聞こえるような気がしたのも。

 手や頬に何かが触れるたび、それが自分との繋がりに変わったように感じたのも。

 誰かが誰かを軽く殴るような、じゃれるような物音が聞こえた気がしたのも。


 全部、夢だとばかり思っていたのに。


 びー。


 音が鳴る。


 音が鳴る。


 それはとても無機質な。

 けれども心がこもっているような。

 それは目覚ましのアラームというよりも、劇場の開演ブザーの音をエティに思い起こさせた。


 * * *


「あ。お目覚めになりましたね」

「!??」


 エティは目を開いてまず声にならない悲鳴を上げた。


 知らない誰かが部屋にいる。


 自分が知らないどこかの部屋に寝ている。


 慌ててベッドの上で飛び起きて体勢を整えようとすると、これもまた知らない寝間着を着ていた。

 真っ白い何かが頭から垂れさがっている。ウィッグか? と思って引っ張ると地毛を引いている時と同じ感触がした。


「落ち着いてください。大丈夫ですか? ぼくの言葉、分かります?」

「……! 分かる、わ。あんただれ? ここどこ? あたしどうなったの?」

「ひとまず、あなたのお名前を教えていただけますか? ぼくのことは『キーペ』とお呼びください」

「ああ、もしかしてまだ夢を見ているのかしら? それなら分かるわ。……あたしはね、エティよ」

「エティ様。夢から覚めていただくために、ぼくと少しお話していただきますね」

「夢から覚めるため?」

「はい」


 ぱっちりした目元を穏やかに笑ませた愛くるしい面立ちの少年は、そう言って話し始めた。

恋愛メインの話は不慣れですが最近よく読むので書いてみました。

プロローグいかがだったでしょうか。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ギルドで冒険者レベルの判定をする仕事、中堅にいちゃもんが多かったり、熟練レベルでは判定する側も受容能力が求められる、というのは、たしかにそうなのかも知れないですね。主人公が、冒頭から少し疲れている、と…
 これは、ファンタスティック世界からゲーム世界への異世界転生とかそんな感じでしょうか。  なんか今までと作風を変えてそうな雰囲気ですね。  続きを楽しみにします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ