はぁ...ちょっと可哀想
「……さて。レイアのおかげでクエスト自体はもうクリアなんだけど…どうしようか」
そう、元々の今回のクエストの内容はグロウウルフ三体の討伐。そしてさっき俺が倒したグロウウルフの群れは優にその数を超えていた。
前回の反省を踏まえ今回は火属性の魔法を使う事もしなかったので素材も十分手に入っている。
だから正直な話もうこれ以上この場所に残る必要は無いのだ。
だが俺の本当の目的はクエストのクリアなどでは無い。
「帰るにはまだ少し早いし、どうせなら少しみんなのレベルでも上げてから帰らない?」
余計なお世話だと思われるかもしれないし、断られる可能すらあったが俺としてもこれは譲れない案件だった。
これから先、彼らと一緒にいられる時間は限られてくる。その前に少しでも強くなっておいて貰った方がこちらとしても安心できるからだ。
とても驚いた様子で俺の方を見る三人――――そして
「えっ、……いいのかい?」
「そこまでして貰うのは流石に悪い気が…」
「……」
三者三様の反応、正直この程度の魔物何百体来た所で俺が死ぬ事はまず無い。多少の面倒くささこそあるがそれよりも俺がいない間にどこかでこの三人が野垂れ死んでしまったりされる方がよっぽど嫌だ。
それにこの程度の相手を強いと言っている彼らの前に、もしあの黒猪が現れたりしたら彼らの全滅は間違いなく避けられない。
勿論そんなものは滅多に起こり得ないイレギュラーだろうが、そんな可能性を少しでも下げる為にも多少強引にでも彼らには強くなって貰わねばならなかった。
「別に俺は暇だし構わないよ。そもそもお前らって今何レベルぐらいなの?」
「多少のばらつきはあるけど大体30弱って所かな?それよりも…レイアのレベルの方がよっぽど気になるよ」
(30!?まじか……Dランクの冒険者でも30ぐらいなのか…)
思っていたよりもだいぶ低かったその数字に多少の驚きこそあったが、この世界においては俺の方がイレギュラーなのだろう。
(俺のレベルか…。しばらく自分のステータスなんて見ていないけど多分350ぐらいだったかな?)
今の話を聞いた上でそんな数字を言ったならとんでもない反応をされる事は確実だろうし、流石の彼らでも不気味がられそうだからやめておく。
ただの村娘の反応であれだけ心に来るんだ。もし彼らに不気味がられでもしたら心に負うであろうダメージは計り知れない。
「なるほど…。ちなみになんだけど…一流の冒険者って言われる様な人達は何レベルぐらいなのかわかる?」
「うーん…。それは人それぞれの意見だと思うけど。確か元SSSランクの冒険者だったうちのギルドマスターは180ぐらいだったって聞いた事があるよ。まぁ……そんな化物じみたレベルの人なんてほぼいないんだけどね」
SSSランクという事は最高位の冒険者という事だ。そんな位に座する者達でさえ180なのだ。
350という数字がいかに異常なのかが窺い知れる。そしてそんな俺でさえ全く敵う気のしないクレナがいかに化け物なのかも改めて理解した。
「なるほど。流石だなギルドマスターは。まぁ流石に俺のレベルもそこまでじゃないからそんなに気にしなくていいよ」
「ったりめぇだろ!お前が実は180レベルなんです。なんて言い出したら顎外れるわ!」
「でもレイアさんだったら別におかしく無い様な気もするから不思議……」
女の勘は鋭いと言うがあながち間違いでも無いなのかも知れない。少しだけヒヤッとしたが彼女も確信があるわけでは無いのだろう、それ以上言及してくる事は無かった。
「ちなみにグロウウルフってのは何レベルぐらいの冒険者だったら倒せるんだ?」
「一応40ぐらいが適正レベルって言われてるよ」
「じゃあ今日で40ぐらいにはしとくか。そうしたらお前らだけでここに来ても大丈夫って事だろ?」
「どんだけハードな修行させる気なんだよお前……」
「流石に数時間で10レベルも上げるのは無理じゃないかな…」
返ってくるのは、何言ってんだこいつ…。みたいな反応だった。
だが俺も最初の頃はポンポンレベルが上がっていた記憶があるし、そんなに難しい事だとも思えなかった。
「そもそもいくらレイアさんが強くても私達の攻撃がグロウウルフに当たらないと思います…。グロウウルフはとても素早い魔物ですし…」
(なるほど……そういう事か)
確かに壁役がいたとしてもそもそも攻撃が当たらなければ経験値など入らない。彼女の懸念はもっともな事だった。
だがそれすらも恐らくは問題無い。要は俺が獲物を動けなくしてしまえばいいって事だ。そして動けない獲物に止めだけ刺して貰えばいいわけだ。
適正レベルの魔物が相手ならばそんな事は到底不可能かもしれない。だが俺とグロウウルフの差は果てしない程広い。それならばそんな狩り方も容易にこなせるに違いない。
「それは大丈夫だと思う。俺があいつらの動きを止めとくから」
「……何する気だよ…」
「なんか少し不安になって来たよ…」
「まぁまぁいいからいいから」
不安そうな三人を連れてしばらく歩く。俺の計画を遂行する為には出来る事なら獲物が孤立していた方が都合がいい。
その為一体で行動しているグロウウルフを探す事30分―――ようやく一体で行動しているグロウウルフを見つけた。
「じゃあしばしご歓談を」
そう言い残し駆け出す。先日のワイバーンとの戦闘と先程の戦闘でわかった事だが、クレナの森以外での魔物相手には基本的に魔力付与は必要無さそうだった。
なので普通の状態でダッシュしグロウウルフの元へと駆け寄る。魔力付与をしていない状態でさえ奴等は俺の速さにまるで気付けていない。
無事獲物の元へと辿り着いた俺は蹴りでグロウウルフの前足を纏めて払う、そして突然の意識外の攻撃に成す術も無く倒れたグロウウルフの全ての足に極小のアイスニードルを突き刺し――――磔にした。
「……ギャンッ!――グルルルゥ…グルゥ……」
最早そこに先程までの獰猛な魔物の姿は無かった。突然の事態に最初こそ威嚇する様に唸っていたが、もうどう足掻いた所で自分は動けないという事実に気付いてからは怯えた様な戸惑った様な鳴き声をただ上げるだけだった。
「なんか……ちょっと哀れだな…。まぁしょうがないよな。これも弱肉強食って奴だ」
もう二度と自分の足で自由に動く事の出来なくなった魔物に向かいそう呟く。
止めを刺して貰おうと三人の方を振り返ると、そこには――――唖然としているリーナちゃんと乾いた笑みを浮かべるアスロ、そしてムスッとした表情でこちらを見ているサニスがいた。
「おーい。止め刺しちゃってくれー」
「「「色々とおかしい!」」」
そんな場違いな非難が、魔物だらけの山岳地帯にこだました




