はぁ...歩くのしんどい
「あーレイア!てめぇどこ行ってたんだよ!めっちゃ気まずかったんだからな!」
「ほんとですよレイアさん酷いです…!」
「まぁ奢って貰ったんだしあまり文句は言えないけど、確かに気まずかったな…」
ギルドに着いた瞬間に詰め寄ってくるチーム・サニスの面々。たしかになんの関係も無い人にいきなり食事を奢られる事になって素直に喜べる図太い神経の持ち主の方が少ないだろう。
むしろ何を話したらいいのかもわからないだろうし、嬉しいどころか最早ただただ辛いだけの時間だったであろう事は想像に容易い。
改めて少しだけ申し訳ない気持ちになった。
「ごめんごめん。―――お詫びにこっそりクエストの手伝いするから!」
そう言うと、途端に彼らの機嫌は良くなった。
「え、本当ですか!?それは助かります!」
「じゃあとんでもなく難しいクエスト受けてきてやるからそれで許してやるよ」
「なんでもいいぜ。速攻で終わらせてやるわ」
「じゃあとりあえず適当なクエスト見繕ってくるよ」
そう言いアスロが依頼板の方へと歩いて行く。彼らの反応を見るに以前懸念していたランクの違いという問題は思ったより深刻な問題では無かった様に思えた。
むしろ彼らが心配していたのは俺の身の事だったのかもしれない。あの時はまだ俺がワイバーンを倒せる程強いなんて知らなかったわけだし、その上片腕も失っていたのだ。
今考えてみれば友人としては当然の心配だった。
その後アスロが戻ってくるまでの少しの間、俺達は世間話に花を咲かせていた。
「――――これなんかどうだい?」
その後アスロが戻ってきたのは10分程経った頃だった。アスロが持ってきた依頼は『グロウウルフの討伐』というクエストだった。
(なんか聞いた事のある様な名前だな…。覚えてないけど)
「おー!アスロにしては攻めたな!いいのかよ?これCランク上位のクエストだろ?」
「正直僕らだけだったら絶対に受けないけどね。でもワイバーンも倒せるレイアがいるなら多分大丈夫だと思う」
「正直ちょっと恐いかも……」
「まぁ俺が攻撃を受けるから大丈夫だよリーナちゃん。じゃあそのクエストにしようぜ。早速行く?」
「レイアさん…ありがとうございます…!頼りにしてますね!」
「よっしゃー!じゃあ早速行くかー!」
「じゃあこのクエストを受注してくるね」
そしてそれから30分後、すぐさま準備を済ませた一行はグロウウルフの生息地である山岳地帯へ向け出発した。
「グロウウルフってどんな魔物なんだ?正直全然知らんのだが」
「グロウウルフを知らないのかい?結構有名な魔物だと思うけどな…。
グロウウルフはBランクへ上がる為の登竜門とも言われている大きな狼型の魔物だよ。このグロウウルフを問題無く倒せる様なら次の――そう、いわゆる一人前と言われるBランク冒険者になれるんだ」
「そうなのか。でもお前らはDランクだろ?だいぶきついんじゃないのか?」
「流石の俺も一人でグロウウルフを抑えるのは無理だな……」
いつになく弱気なサニス、そんな彼の様子を見るにやはり結構強い魔物の様だ。不安になっている三人には悪いが個人的には少しだけ楽しみに感じていた。
(クレナの森にも気色の悪い三つ目の狼がいたけど、どっちの方が強いんだろう)
「もちろん無理だよ。だからレイアがいるこの機会に挑戦してみるんだ」
「でもレイアさんは魔法使いですよね?だとしたらやっぱりサニスが一人でグロウウルフを抑えるしか無いんじゃない?」
「っげぇ、そうだった!レイアお前魔法使いじゃねぇか!」
(いや忘れてたのかこいつら…。これで本当に俺が近接無理だったらサニス死んでたかもしれないんだぞ…)
「いやお前ら俺がさっきBランクの奴ら蹴散らしたの見てただろ…。今はもう近接戦も問題無く出来るよ」
「そうだよ。僕はさっきの喧嘩を見てこのクエストを受けても平気かな?って思ったんだ」
「そうだった!そういえばこの前の喧嘩でも素手で三人ぶっ飛ばしてたしな!まじでどんだけキツイ旅してきたんだよお前……」
流石にアスロはちゃんと考えていた様で安心した。どれだけ慎重に事を運んだとしても所詮は冒険者なのだ。ちょっとしたミスで命を落とす可能性は十分にある。
もしちょっとしたくだらないミスで彼らが死んでしまったりしたら俺は悔やんでも悔やみきれないだろう。
(その可能性を少しでも減らす為にも今回は気合い入れないとな)
サニスに言われて改めて思い返す。この数か月の間に俺は帝国のトップ戦力達と戦って、その後は水竜と戦って、スケルトンの集団と戦って、魔族とも戦って最後には魔王と戦ったのだ。
(こうやって羅列してみるととんでもないラインナップだなマジで……)
――――――よく生きてたな俺
「確かにまぁまぁ凄まじい旅だったかもな……。というかあとどれぐらいで着くんだ?」
久しぶりにこんなに長い間歩いた為かどこか少し疲れてきた気がする。ステータス的に考えるならこの程度で疲れるわけなど無い為恐らくは精神面から来るモノだろう。
やはり慣れというのは恐ろしい、最近は街の中以外は飛んで移動するのが当たり前になっている為長時間歩くのはどうしても億劫に感じてしまう。
「ちょうど見えて来たよ!グロウウルフはあの山の中腹辺りに生息してる筈だ」
「そういえば何体倒せばいいんだ?」
「とりあえず三体倒せたらクエストはクリアだね」
(三体か……。あっという間だな)
グロウウルフはあのワイバーンよりも低ランクに類されている魔物。ならばそんな相手を三体倒す事など一瞬で終わってしまう。
(わざわざこんな遠くまで来て、それだけで「はい終わり」なんてのは少し味気無さすぎるな。だったら前々から考えてた通り今回はみんなのレベリングも並行して行う事にするかな)




