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世捨て魔王  作者: R氏
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はぁ...死ねばよかったのに



「――――で、なんの話だっけ?」


「いや普通に無かった事にしようとすんな!!」


 今起きたあまりにしょうもない戦い?を無かった事に出来ないかと強引に話を戻そうとしたのだがサニスの鋭い突っ込みによりその企みは惜しくも阻まれた。


「忘れてくれ…」


「あ、あのっ!」


 すっかり忘れていたが、そういえばこの場には新たにラッシュという男が増えていた事をその声で思い出した。

 つい先日ワイバーンのクエストで死にかけたというのにもう次のクエストを受けに来たというのだろうか。

 

 (元気があると言うか命知らずと言うか……)


「先日はありがとうございました!あの時貴方が来てくれていなければ我々は確実に全滅していました!……本当になんと言っていいか…」


 どうやらあの時の礼を言う為に俺の姿を探していた様だった。少しばかり馬鹿にしてしまった事を心の中で詫びておく。

 

「気にしないでいいよ。俺はただクエストを受けてそれをクリアしただけだから」


「そうはいきません!元々のクエストはワイバーン一体の討伐だった筈です。なのに貴方はわざわざあの場にいた全てのワイバーンを倒してくれた…。―――貴方は命の恩人なんです!」


 (いやそれも単純にクエストの内容を勘違いしていただけなんだよな…)


 だが目の前でキラキラした目を向けてきているこの男にはそんな事を言える空気じゃなかった。


「わかったわかった。じゃあ礼は受け取ったから」


「言葉だけのお礼なんかでは私の気持ちは済みません!是非なにかご馳走させてください!」


 (めんどくさい!こいつ!遠慮とかじゃないんだけどなマジで…)


 なにを隠そう俺は重度の人見知りなのだ。何度も会っているチーム・サニスの面々達ならまだしも、こんなほぼ初対面の男が卓にいては美味しい食事も喉を通らない。

 こんな事なら助けなければよかった……そんな最低な思考に行きついてしまうくらいには困っていた。


 そしてそんな最低な男は更に最低な事を思いついた。


「でも俺はちょっと用事があるからさ。このチーム・サニスの人達にご飯でも奢ってあげてくれない?こいつら俺の仲間だからさ」


 それは仲間を売るという事だった。この気まずい状況を自分一人だけでも抜け出せるというなら仲間達に犠牲になって貰う事もやぶさかではなかった。


「……用事があるなら仕方無いですね…。―――わかりました。貴方がそれでいいと言うのなら!」


「いや何言ってんだよレイア!俺らなんもしてねぇのに飯なんか奢られるわけにいかねぇよ!」

「そうですよレイアさん!私達どんな顔してご飯食べたらいいんですか!」


「大丈夫だ、深く考えるな。ただ―――腹を満たす事だけを考えるんだ…。――――じゃ!」


 俺は唱える様に小声でそう呟くと、すぐさま出口の方へと駆け出す。

 後ろから聞こえるサニス達の非難の声を心を無にして無視する……もちろん大変心苦しかったがあくまでも無視に徹した。



 そして尊い犠牲の上に立ち俺は今、一人外にいた


「自由は素晴らしいな…。さて、どうしようかな」


 (――――飯でも食うか)


 そして30分後俺は昨日のお店の前にいた。


「色々見たけどやっぱりここが安定かな」


 昔からそうだった。自分はどこか一つ気に入った所を見つけると新たに他の場所を探したりする事を全くしなくなるのだ。

 たまに気分が乗ってる時なんかに新しい店に行く事もあったりするのだが、基本的には新しい所には行かない。

 昨日この店に入ったのも他に知ってる店がほぼ無かったからに過ぎない。そして一回目で当たりを引けた以上新しい店を探す事はこれから先しばらく無いだろう。


「いらっしゃいませー!――あ、昨日の!また来てくれたんですね!」


「どうもー。じゃあ今日もお任せでお願いします。もちろん野菜抜きで」


「だーかーらー!野菜も食べなきゃダメですってば!」


 なんて微笑ましいやり取りを交わす。人見知りの俺だがこの子とは何故だか凄く話しやすいと感じた。


 (――――まぁ野菜は食べないけど)


 ちょうどご飯時も過ぎていたからか、客が自分しかいなかった事もあり食事を終えた後二人はしばらく話し込んでいた。


「――そうなんだよね。だからこの街に知り合いとか全然いなくてさ…。だから多分これからもしょっちゅうこのお店に来ると思うよ」


「レイアさんなら大歓迎ですよ!――――実は…私も全然知り合いとかいないんです。それにちょっと事情があって遊んでる余裕とかもあまり無くて……」


 彼女はそう言いながらも笑っていたが、俺は普通に心配になってしまっていた。

 これだけ可愛くて話しやすい女の子に知り合いが少ないなんてどう考えてもおかしい。


 そして―――そこにはその"事情"ってやつが深く関係しているに違いなかった。


 だが俺は踏み込まない。何故なら俺がチキンハートだからだ。もし聞いてみて断られでもしたら二度とこの店に来る事が出来なくなってしまう。

 だからそういう深い話は彼女の方からしてくれるまでは決して聞かないつもりだ。


「そっかー。色々あるね、お互い」


「ですね…。だからもしよかったら仲良くしてください!」


「もちろん。こちらこそよろしくお願いします」


 そう言葉を交わし俺は店を後にした。


 (そろそろギルドに戻っても大丈夫かな?流石にもう食事も終わっているだろう)



 暇だし今回のお詫びも兼ねてサニス達のお手伝いでもしてあげようかね




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