はぁ...恥ずかしい
「うー…っん――よし!行くかー」
許可が下りた次の日は最低限の荷物を準備してもらったり、一応世話になった騎士や魔術師達、あとは使用人の人達への挨拶回りに使った。
伸びをしながら王城の出口に向かっている途中、俺を待っていたのかそこにはローブを羽織ったつるつる頭の賢者が立っていた。
「来たか―――わかっていると思うがお前は私達に勇者として召喚された身、恩を仇で返す様な事は間違ってもしない事だ。まぁ貴様も元の世界には帰りたいだろうからそんな事はしないとは思うがな」
「もちろんですよ。出来る限り早く魔王を討伐出来る様に日々精進します」
俺がこいつらに何の恩をもらったのかは皆目見当もつかないが、別にわざわざ波風を立てる必要もないし社交辞令で流す事にした。実際帰りたいのは事実だったし。
「わかっているのならそれでいい」
ちなみになんだが俺は元々こんな礼儀正しいキャラではない。
今現時点で自分がそこまで強くない事はわかっているし、もし相手を怒らせて拘留されでもしたら色々と詰む為とりあえずは猫を被っているだけだ。
――――強くなって帰ってきたら必ずぶん殴る。
「おー!すごいなこりゃ!マジで異世界来たって実感するわー!」
そんなこんなでここは城の外。窓から見ただけではわからなかったがこの街は本当に綺麗だった。
白とベージュの様な色を基調にした尖った建物が沢山並び立っている。
…………
――――自分の語彙力の無さに涙が出る。
「なにかしらあの恰好」
「異邦人じゃないのか?」
「イヤね~。品が無くて…」
街行く人々、俺とすれ違った者は十中八九皆振り返る。それは恐らく俺の服装のせいなのだろう。
城の中で着ていた服は今朝全て返却した為、今身に着けているのは召喚時に身に着けていた物だ。
至ってシンプルな普通のデニムに白い無地のTシャツ、その上から黒のパーカーを羽織っている。当然ながらこの世界では唯一無二のファッションスタイルだろう。
そしてそれが周りから見てオシャレに見えているのかそれともただの奇抜で珍妙な恰好をした変人に見えているのかは、周りから聞こえてくる陰口によって明らかだった。
――――まぁそりゃ浮くわな
「どうするかな、ちょっとだけもらったなけなしの金で安い服でも買うべきか?――――いや、ここは敢えてこれで行くか……染まったら負けだ!郷に入っても郷には従わん!これが社会という名のビッグウェーブに乗る事を拒んだフリーター魂よ!」
ひそひそ…
こそこそ…
――――とは言ったものの……すれ違う度に誰もが振り返るのは流石にちょっと恥ずかしい。
表参道の様なお洒落な街並みに浮浪者が1人混じっていたらこんな感じで見られるのだろうかって感じの視線だ。
とりあえず急いで貴族街から出る事を決めた18の――――冬?
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