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世捨て魔王  作者: R氏
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はぁ...母さん(第二)



 長い空の旅を続けながら俺は、改めて冷静にこの世界の事を思い返していた。

 

 この世界にいくつかある大都市。流石に大都市ともなれば中々の繁栄具合を誇っていたが、それ以外の所は基本的には街よりも村という感じの印象を受けた。特に高い建造物も無ければ立派な門があるわけでもない。

 これまでにいくつか見つけた集落はどれも街と呼んでいいのかどうか微妙な感じのモノばかりだった。


 そういえばナッシュ村にはそれらしき物が見当たらなかったのだが、そういう普通の村にギルドの様な類の施設はあるものなのだろうか。


 (流石にあるよな…?ギルドが無ければ冒険者も来ないだろうし集落の危険度も上がってしまうだろうし)


「いやー、それにしても飛行魔法って便利だなー…来る時なんかひたすらダッシュだったしな…」


 だが流石にレスティアに入る時は地上からの方がいいだろう。飛行魔法は結構レアだと聞いたし変に注目されても面倒なだけだからだ。


 (まぁ、今となっては本当にレアなのかどうかも疑わしいとこだけどな)


 そういえばレスティアに戻ってからのスケジュールは一体どの様な感じになるのだろうか。自由にしてていいと言われるのか、それともすぐに魔王討伐に行けと言われるのか。

 (まぁ、そんな事言われても断るけどな)


 何度でも言うが今の俺の最優先事項は腕の修復だ。腕が治らない限りは文字通り大手を振って元の世界には帰れない。

 改めて考えると帝国の奴等は本当に面倒な事をしてくれた。若干怪しかったとは言え、普通いきなり腕を切断したりするだろうか。


 (―――思い返すとやっぱりちょっとむかついてきたな…)


 俺の顔面を派手に殴り飛ばしてくれた女には結構な痛い目をみせてやったが、肝心のアルシェにはなんの報復もしていない。

 後は善人ぶって嘘の情報を吹き込んでくれたユージンの奴にもなんかしらの仕返しをしなくてはならないだろう。


 やはりどうポジティブに考えても面倒な事にしかならない気がする為レスティア王城には顔を出さないべきだろうか。

 会ってしまえば確実に何かしらの命令はされるだろうし、腕の治療に注力する事も出来なくなるかもしれない。

 色々考えた結果、レスティアに着いたらとりあえずギルドに直行して色々と情報収集をする事にした。


「……俺の腕見たらユーリさんビックリするだろうなぁ」


 (怒られそうだなぁ…。やっぱギルドも行きたくないなぁ…

  でもそんな事言ってたらどこも行けないしなぁ…)


 目まぐるしく表情を変化させながら叱咤してくる金髪のお姉さんの事を思い出すと少しげんなりしてきた。


「あー…クレナに会いたい」


 思えばあの城にいる間だけだったのかもしれない、この世界で本当に居心地がいいと思えたのは。

 だがクレナ程では無かったがやはり出店のおばちゃんやチーム・サニスの奴らには会いたいと思った。基本的に居心地の悪かったレスティア王国で仲良くやれていたのは彼らだけだった。


 色々あって心身共に疲弊している今、チーム・サニスと一緒に簡単な冒険でも行くのはいい気晴らしになるかもしれない。


 (リーナちゃんなら今の俺のこの荒んだ心も慰めてくれるはず……)


 それからしばらく寝ずの空の旅を続けていると、今までの集落とは明らかにレベルの違う大きさを誇る大都市が見えて来た。


「お、いよいよ見えて来たかレスティア」


 特になにかいい思い出があるわけでは無かったが、それでもこの場所がこの世界での俺の故郷みたいな所であるのは間違いない。流石に多少なりとも感じるモノはある。


 変に騒がれてもイヤなのでとりあえず降りて歩いて詰所に向かう。そしていつも通りギルドカードを見せて、中に入れて貰ったはいいのだが


 (――王都まで遠いんだよなぁ…飛んで行きてー…)


 あの時は頭の中も色々とごたついていて街をのんびり見る時間も余裕も無かった。だから今回は街の観光でもしながらゆっくりと王都を目指す事にした。

 あの時と違い今の俺はこの国以外の国も知っている。こう改めて見てみるとクレナディア帝国との違いとかもあって中々面白い。


 まずは人種。レスティアにいるのは面白いぐらい人間だけだった、獣人なんてのもいないしエルフやドワーフなんてのも勿論いない。

 この国が何故ここまでそこにこだわっているのかはわからないが、それは単純に損をしている様に思えた。

 それはつまりエルフが知ってる様々な知識やドワーフの技術もこの国には無いって事だからだ。

 そんなんじゃもしいつかクレナディアと本気で揉めた時どうなるかわかったもんじゃない。


 (まぁ俺が知らないだけでこの国にも色々と強みがあるのかもしれないけどな)


 個人的な感想だが街並みはレスティアの方が綺麗に思えた。クレナディアはどこかごちゃごちゃしている様なイメージがあったのに対し、レスティアは綺麗な建物と最低限生活に必要な物だけが並べられているといったイメージだ。

 そしてそれには貴族が幅を利かせているのかどうかが深く関係ありそうに思えた。


 俺個人の意見としては他国との戦争や魔王問題、そんなごちゃごちゃしている時に貴族かどうとか平民がどうとか言ってる場合では無いとも思うのだが。


 (そういう面も含めると俺はやっぱりクレナディアの方が好きだな。


 ――――もちろん上層部は大っ嫌いだけど


「戻ってきました王都!――――うわー!懐かしい!」


「――お!アンタはいつぞやの駆け出し冒険者じゃないかい?」


 懐かしの王都の街並みを眺め感傷に浸っていると、どこからか懐かしきおばちゃんの声が聞こえてきた。

 だが周りを見渡してもそれらしき人影は無い。


 (――――もしかして……。おばちゃん…逝ってしまったのか…?

  それでも遠くの地から一人帰ってきた俺を見つけてわざわざ声をかけてくれたのか…?

  ありがとうおばちゃん……俺…あんたの事忘れないからな)


 俺が目を瞑り両手を合わせていると頭上から怒鳴り声が飛んできた。


「なにやってんだい!こっちだよ!こっち!」


 真後ろの建物の二階から懐かしい顔が叫んでいた。


「なんだー。生きてたのかおばちゃん。ただいま」


「なに物騒な事言ってんだい!冒険者じゃないんだからそう簡単に死んでたまるかい!」

 まぁそれも当たり前の事なのだが。流石に老衰とかするような歳では無いだろうし街中じゃ魔物に襲われるなんて事も無い。


「そんな所でなにしてんの?ついに出店だけじゃ生きていけなくなったから空き巣でもしてんの?」


「だからなに物騒な事言ってるんだっての!ここは私ん家だよ。仕込みをしてる所さ!」

「なーんだ。そういう事か」


「なんでつまらなそうなんだい…まぁいいよ!旅から戻って来たんだろ?ご飯でも食わせてやるよ。ちょっと上がっておいで!」


 実は特に何の準備もせずに出立してしまった為、満足な食事もしばらく取れていなかった。

 だから今は何よりお腹がすいていた。やはり俺の目に狂いは無かった。


 (やっぱりアンタが第二の母さんだよおばちゃん…!)


 建物に入り二階に上がると、わかりやすい様に部屋の前でおばさんが待っててくれた。

 その後今更だがお互いの自己紹介も兼ねて少し話をした所、おばさんの名前はフレルと言うらしい。

 フレルさんが振舞ってくれた料理はどれもとても美味しかった。もちろんこの間旅に出る前に安く譲ってもらった様な干し肉では無かった。


 それはユージン邸で食べた様な豪華な料理では無かった。だが不思議と温かさを感じる味だった。

 これがお袋の味ってやつなのかな…。なんて一人で浸ってたのはここだけの話。



「それはそうと……、触れない様にしてたけどやっぱり気になるね…その腕」


「あーこれ?別にいいんだよ気にしないで、ただの事故だからさ」


 俺は出来る限り明るく言ったつもりだったのだがフレルさんの顔色は優れない。心配してくれているのか、なんだか少し申し訳ない気持ちになる。


「やっぱり冒険者なんかやめたらどうだい?もしよかったら普通の働き口ぐらいならいくつか紹介出来るよ?

 ――――あんたの事が心配なんだ。会った時から言ってるけどあんたは全然強そうに見えないからね」


 (今ではだいぶ強いんだけどなぁ俺…)


 だがやはり心配してくれる人がいるというのは素直に嬉しい。

 改めて思い返すと、あの冷たい城を出て初めて人の優しさに触れる事が出来たのはこの人と出会った時だった。

 そもそもだがどうしてこの人はこんなにも俺に優しくしてくれるのだろう。


 疑問に思った俺は素直に聞いてみる事に。


「フレルさんはどうしてそこまで俺に優しくしてくれるんですか?」


「――――あんたが弱そうでほっとけないってのも本当だよ。でもね…私の息子は冒険者になって死んじまったんだ。だから……勝手にあんたに息子の面影を重ねているのかもしれないね。いい迷惑かもしれないね。ごめんよ」


 フレルさんはどこか申し訳なさそうに俺に真実を告げる。

 だが正直そんな事で謝らないで欲しかった。別に理由がなんであろうと俺がこの人に助けられたのは事実だったし本当に感謝していたからだ。


 それに――――内心では少し面白いと思っていた。「俺にとって二人目の母さんだな」なんて思っていたら向こうにとっても俺は二人目の息子だったのだから。


「そんな事気にしないでくれ。俺は本当にフレルさんに感謝してるんだから!じゃあこれからも第二の息子と思って存分に可愛がってくれ!」


「――――バカだね…じゃあ絶対に死ぬんじゃないよ?死んだら許さないからね!」


「わかった――――絶対に死なないよ」



 (あーやばい。この人めっちゃいい人だ…)


 またもこの世界に未練が増えてしまった。

 この人も俺が突然いなくなったりしたら心配するのであろう事が容易に想像できた。


 帰る時、この人にだけはしっかりと事情を話してから帰ろう。




 ――――俺は密かに心に決めた





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