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世捨て魔王  作者: R氏
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アーナの後悔



 ―――時は少し遡る



「あー!あいつ本当に死んだのかなー」


 この大陸に住まう者なら誰一人として知らぬ者などいない場所がある。

 それは―――クレナードの森。魔王クレナードの領地にして、人間界とあちら側の境目とも言われている恐ろしい場所だ。

 その中に現存する魔物は全てがAランク以上とも言われ、もしその中の一体でも森の外に出てくる様な事があれば大事件になる事は間違い無い。


 そして、そんな魔の森の前でイライラした様子で独り言を言っている彼女の名はアーナ・クラスト。誉れ高きクレナディア帝国十賢の一人。


 「――――ったく、なんで私がこんな事を……」


 彼女は今、クレナードの森の入り口にて見張りの任を任されていた。

 なぜこんな危険な場所で見張りをする必要があるのか。それは一月程前の事だった。



 通常通りの業務に就いていた彼女の元に突如上司からの呼び出しがかかった。

 その上司の名はアルシェ・フェリゴーラ。この国の実質No2に君臨する男。

 十賢と十剣を統括する彼はアーナにとって直属の上司の様なモノだった。


 アルシェからの招集に応じたアーナに聞かされた内容、それはレスティア王国からの刺客が現れたとの事だった。

 そしてそいつをクレナードの森の前まで誘き出す事に成功した為、今現在国内にいる十賢の力を総動員し確実に処理せよ。と続いた。


 現在クレナディア帝国領内にいた十賢は彼女を含めて四人。頭を使うのが苦手で難しい事は基本考えない、だが力は一級品のクダン。

 冷徹で有名だがアルシェだけには従順なイエラ。そしてつい最近十賢に入ったばかりでアーナとは口も聞いた事の無い無口な女。

 

 正直に言ってアーナは今回の招集自体を不満に思っていた。何故ならこんなに人数を集めなくとも、自分一人いればレスティアの刺客ぐらい蹴散らせると思っていたからだ。


 そして――――実際にその刺客は大した事の無い者だった。常人には中々習得が難しいと言われている飛行魔法と、たまたま手に入れたであろう無詠唱。

 そいつはこの二つを持ったせいで少し勘違いしてしまっただけのただの馬鹿だった。

 それがその刺客に対しアーナが抱いた素直な感想。魔法の練度も低いしLVも100未満。こんな奴の為にアルシェ様に加え十賢を四人も動員するなど戦力と時間の無駄遣いにも程があると思っていた。


 「――――……くくっ」 


 ふとあの時の事を思い出し笑みが零れる。こちらが同じ様に飛行魔法や詠唱破棄を使った時の相手の表情を思い出したのだ。

 まさかあの程度の実力で自分が最強だとでも思っていたのだろうか。

 

 くだらない任務でわざわざ呼び出された事にムカついていた私はその刺客の顔面を思いっきり殴り飛ばした。

 すると奴は最後の力を振り絞ったのか、馬鹿げた量の魔力が込められた異様にデカいインフェルノを出現させた。

 流石にあれだけのサイズのモノを無詠唱で出した事には皆驚いていた。だが―――それも一瞬の事だった。


 帝国でアルシェ様にしか使えない魔法"ディスペル"でその特大の魔法を消された刺客はそのまま片腕をはねられ地面へと落ちて行った。

 そこに至るまでにも十賢達に散々痛めつけられていたし、流石にあんな状態ではどうあっても逃げられないだろう。と、正直私は油断していた。


 だがその刺客は事もあろうに、自らの魔法の爆風に巻き込まれる事でその場からの離脱を図ったのだ。

 あれ程の魔法を使い、残りの魔力も僅かだったろうし何より出血も酷かった。あんな状態であの爆発に巻き込まれれば間違いなく死ぬに決まっていた。


 (それでも……あいつはその手段を選んだ)


 もしかしたら何か策があり、死なない自信があったのかもしれない。

 だからこそ私は"あいつが生きている"という僅かな可能性を疑い、あれからずっとこんな所で一人見張りをしているのだ。


 (あの時、一番近くにいた私が油断していなければ確実にあいつを殺せていた。もしあいつが生きてレスティアに帰る様な事があればそれは間違いなく私の責任だ)


 ―――それはとてもじゃないが看過出来る事ではなかった。こんな低難易度の任務で輝かしい己の経歴に土をつけるなどあってはならない事だからだ。

 本来ならばあの場にいた四人で交代で見張る筈だったのだが、私は自らアルシェに志願しその役目を一任して貰ったのだ。

 十賢の者達は同僚ではあったが決して仲間などでは無い。互いが互いに信用も信頼もしていない。

 もし他の者が見張りをしている時に万が一にでも逃されでもしたらたまったもんじゃない。


「でも流石にそろそろ飽きてきたな…。これだけ長い間出て来なきゃ流石に死んでるか…?」


 そんな事をぼやき、私が帝国に戻ろうとしたその時だった――――声が聞こえた。




「やっぱいるよな。そりゃ」





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