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世捨て魔王  作者: R氏
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はぁ...色々あった



 この森はどこまで行っても暗い。樹木が鬱然と地を覆い、晴れている筈なのに地面は黒く湿っている。


 (よく俺はこんな森を一人で進んでこれたな……)


 今でこそ自分の力に多少の自信がある為気兼ねなく歩き続けられるが、あの時の自分にはそんな自信も実力も無かった。

 ただそれには例え後ろに戻ったとしてもほぼ確実に帝国からの追手に殺されていた為、進むしか無かったというのもあるのだが。

 結局の所、あの時俺の元にあった選択肢は魔物に殺されるか人間に殺されるか。そのどちらかだけだったのだ。

 腕を失くしたショックに加え、何も知らない環境で一人っきりといういう寂しさもあった。


 (……改めて考えるととんでもない状況だったなあの時…。よく心折れなかったな俺…)

 そんな風にどこか他人事の様に考えている自分に少し笑ってしまう。

 あの時は「帝国の奴等……いつか皆殺しにしてやる」くらいの勢いで帝国を恨んでいた俺だったが、今となってはそこまでの熱量は無くなっていた。


 ――――それにはやはり彼女との出会いが大きく関係しているのだろう


 既にそれほどまでに彼女の存在は俺の中で大きくなりつつあった。

 それもその筈、彼女は俺にとってこの世界に来て初めて出来た理解者と言っても過言では無いのだから。


「あー、早いとこ全て片付けてもう一回会いたいなー」


 気付けばそんな独り言が零れていた。


 (……っと、そろそろ人型以外のエリアか)


 こちらの事を警戒しながら睨んでいるどこか懐かしい魔物達の姿が目に入る。

 異様にでかい大蛇に赤い虎、こいつらには本当に世話になった。この森に入ってすぐのあの時―――こいつらを問題なく殺せた事で俺のボロボロに打ち砕かれていた自信が少しだけ取り戻せたのだ。


 ――――帝国の奴等に粉々になるまで砕かれた俺の自信を。


「まぁお前らが外ではどんな扱いをされてる魔物なのかよくわからないから、なんとも言えないんだけどな」


 彼等が外界の者達に恐れられている様な存在である事を切に願う。

 ただ俺の感覚的には、最低でも最初に俺が倒したであろうあの猪型の魔物よりかは強い様に思えたのだが。

 軽い気持ちで始まった回想だったが、ふと心の奥にずっと眠っていた疑問が蘇る。


 (ていうかあいつは結局なんだったんだ?)


 この世界の常識も何も全くわからなかったあの時の俺は、アレの事を駆け出し冒険者達が倒すような低級の魔物だと思っていた。

 だがその後にチーム・サニスの面々と共にゴブリン退治に行った際に、その考えが大いに間違っていた事が判明した。


 何の理由も無いただのイレギュラーだったのかだろうか。

 そうだとしてそんな事が稀にでも起きていたら色々とマズいのでは無いか。

 少しの間色々と思案してみるが、結局のところ情報が不足し過ぎている為考えを中断せざるを得なくなった。


 (……とりあえず戻ったらこの件も調べてみるか)


 そんな事を考えながらも、襲い掛かってきた魔物はきっちりと蹴散らしていく。今となっては俺にとってこの森の魔物など集中して戦う必要も無い雑魚へと成り果てていた。

 そして――――道中数えきれない程の魔物を倒したが、結局一つもレベルが上がる事は無かった。


(流石に300超えともなると中々レベルが上がる事も無いか。こりゃどこでレベル上げをしたらいいのか全くわからないぞ……)


「―――でもクレナと約束しちゃったしなぁ…。次会う時までにはもっと強くなるって…。

 あいつのハードル高すぎるんだよなー…。ちょっとばかし強くなったぐらいじゃ全然満足頂けなそうだし…。

 はぁ…いい狩場も調べなくちゃな…―――あれ?もしかして俺、やる事めっちゃ多くない?」


 それでもやる事無くてフラフラしているよりかは大分マシなのだが。

 なんだかんだ色々と酷い状況ではあるけれど、元の世界でニートしてた頃に比べれば充実してるとも言えなくない様な気がした。


「というか帰ったら何しようか。なんか今更普通にデスクワークとかしてる自分の姿想像できないんだけど…」


 スキルとかステータスの類は勿論無くなるだろうが、体感速度?というかそういう感覚的なモノはどうなるのだろうか。

 もしこの世界で培った経験や勘をそのままで帰れるのならば格闘技なんて始めてみるのも面白いかもしれない。


 しばらくそんな妄想をしながら歩いていたが、ある事に気付きふと冷静になる。


 (――――いや…俺片腕ねぇじゃん…)


 片腕無しから始める格闘技なんて流石にハードモードを超えて最早無理ゲーだった。

 改めてなにはともあれ最優先はとにかく腕を治す方法だ。これ次第で今後の俺の人生は如何様にも変わってくる。

 ヒールの上位互換とかがあれば可能性も出てくるだろうか。だとすると僧侶が多い国に行くのが良いのかもしれない。

 ただ、問題はどの国に僧侶が多いのか。そんな情報を俺が持っているわけもない事だった。


 (王城で兵士さんの話をもっとよく聞いておけばよかった…)


 とりあえずレスティアに戻った際に顔を出した方がいい所は冒険者ギルドと出店のおばちゃんの所ぐらいだろうか。

 

 (ナッシュ村には顔出さなくていいよな…。あの子に会ったら多分俺傷ついちゃうし…)


 改めて考えてみるが本当に自分がなにを悪い事してしまったのか理解ができない。俺は村に対しても彼女に対しても実質的な被害を何も与えていないのだから、あの対応はやはり理不尽で酷いモノだと思わざるを得ない。


 (――――可愛い顔をしてて胸も大きかった。親の店の為なら恐い奴らにも向かっていける親思いのいい子。それに胸も大きかったから是非仲良くなりたかったんだけどな。あと胸も大きかったし)


 ただこれでまた俺が何食わぬ顔でナッシュ村に顔を出しに行ったら一種の嫌がらせみたいだ。

 道中ナッシュ村で休憩を挟むのは諦めざるを得なかった。



「っと、もう出口か。帰りは早いな本当に。――――来る時はあんなに必死だったのにな」


 というかレベルが上がるとここまで魔物の反応も変わるという事に驚きを禁じ得ない。途中までほぼ戦闘無しだった為行きの半分以下の時間で出口まで来る事が出来ていた。




 ――――てかこれじゃクエストとか受けても魔物みんな逃げちゃうんじゃないのか…?




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