はぁ...マジでやばい
「ところで話は変わるんだけどさ、さっき黒いオーラみたいなの出て目の色変わったやつあるじゃん?あれなに?スキル?」
俺はずっと気になっていた疑問を口に出した。
なぜそこまで気になっているのか、それはあれを見た時にいつものスキル取得通知が無かったからだ。
今までどんな魔物のスキルでも取得出来ていただけに今回の事が不思議に思えて仕方なかったのだ。
「あー…あれはね吸血鬼だけしか使えないスキルなの。吸血鬼の血が体内に入っていないと使えないスキルだから流石のレイアでも無理なんじゃないかな?」
「ふむ…なるほど。ってか流石のレイアでもってなんだよ」
「いやいや見ただけでスキル使えちゃうなんて正直ありえなすぎる能力だから!……レイアに会えたのが今でよかったよ…」
(多分あと何年後かに会ってたらほんとに殺されちゃってたかもしれないよ…)
「いやそんな俺を一方的に無力化したお前が言うなよ…」
実際いくらやっても彼女に勝てる気がしなかった。あとどれぐらいレベルを上げれば彼女と対等になれるのか。それは果てしなく遠い道のりに感じた。
「それで?レイアはこれからどうする予定なの?」
これからかの予定、正直迷っている自分がいた。アザレアの森にいる魔王にはもう今の時点でも勝てるとクレナにお墨付きを貰っているし、これ以上の修行はどうやら必要なさそうだからだ。
早く帰って母さん達を安心させてあげたい気持ちは当然あったが、いざ帰れる状況になってみるとこの世界にも多少の心残りがある事に気付いた。
(まずは目の前の彼女――この子ともっと仲良くなりたい…。切実に…)
この世界に来て初めての恋愛フラグに、情けなくも俺の心はかなり揺さぶられていた。
それにレスティアの街で出会った人々。今回の出立の事をほぼ誰にも伝えて来なかった為、いきなりいなくなった事を知り少なからず心配してくれている人もいるかもしれない。
(帝国への復讐は…――――なんかどうでもよくなってきたし最後でいいや。
恋の力は偉大だった。
(まぁまだ好きとかじゃ無いんだけどね!?ちょっと気にはなってるけどそれが好きかどうかって言われたらそれはどうなんでしょうって話ですよ!
そもそも好きってなによ!まずは好きっていう概念の話からしないとな!?)
俺は一体誰になんの言い訳をしてるのか。
「もう修行の必要も無さそうだしな、とりあえずレスティアに戻ってみて世話になった人達に挨拶してこようかなって思ってる」
「そうなんだ… それって急ぎなのかな?やっぱり」
俺がそう言うと彼女は途端に寂しそうな顔になってしまった。
そういえば彼女が友達がいないと言っていたのを思い出す。ようやく出来た対等に話せる相手がいなくなってしまうと考えればそれは当然寂しいに決まっている。
寂しそうな彼女の顔を見ていると、自然にこんな言葉が出てきていた。
「いや別に急ぎってわけじゃないよ。だからもう少しゆっくりしてから行こうかなって思ってる。それにレスティアに戻って少し落ち着いたらまた遊びに来るよ」
「――ほんとに…?」
上目遣いでこちらの事を覗き込んでくるクレナ。
(――――え、好き…)
流石に冗談ではあったのだが、突発的にそんな言葉が浮かんできてしまうのも無理の無いと思えてしまうくらいに彼女の可愛さは凄まじいモノがあった。
この少女を悲しませてしまうくらいならば、多少人生設計を捻じ曲げてしまうくらいしてしまいそうになってしまうから恐ろしい。
「もちろん。じゃあ次はなんの話をしよっか?」
「じゃあねぇ、次はレイアの――――」
それから三日三晩、時折食事と休憩を挟みながら俺とクレナは話し続けた。
本当に色々な事を話した。
――――俺の事も。お母さんの事も
――――この世界の事も。元の世界の事も
――――今までの事も。これからの事も




