はぁ...やっと見つけた
「へー!スゴイ!そんな世界があるのね…その てれび?とか言うのがあったら少しは退屈も紛れそうね!」
目の前で少女みたいなキラキラした目をしてこちらを見ている女性。
これね、実は魔王なんですよ。スゴイでしょ?
お母さん、今私はこの世界で一番強いかもしれない魔王なんていう存在と対談しています。
でもこの美貌を見て誰が彼女の事を魔王だなんて思いますか?元の世界にいたら確実に世界的な女優か歌姫にでもなっていた事でしょう。
今俺は魔王たってのお願いにより元いた世界の話を聞かせてあげていた。
車や飛行機、それにテレビなどの電化製品、そういった俺にとっては当たり前の物だったそれらもこの世界の住人にしてみればどれも革新的で新鮮味溢れる物の様だった。
いちいちオーバーすぎるのでは?と思う様なオーバーなリアクションをしてくれている目の前の魔王を、正直可愛いと思い始めてしまっている自分がいる事に気付く。
まさかこの世界に来て初めての恋愛フラグの相手が魔王?全く笑えないが本当に恋に落ちてしまいそうなぐらいに彼女は魅力的だった。
それに一応だが、俺は今まで異世界から来た事をひた隠しにしていた。だからこんな風に元いた世界の話を出来るのも彼女が初めてだった。
何故だか彼女にはそう言った類の話をしても問題ないだろうと思えたのだ。
(ちなみに別に根拠は無い)
「そんなに退屈なもんかねぇ…別に戦いだけが人生じゃないだろ?それこそ……恋とかしたら楽しいんじゃないのか?」
「退屈よ…。私は…っていうか魔族の女の子達は基本的に自分より弱い男なんかには魅力を感じないモノなの。それに私の事をそういう目で見る奴も今じゃ全くと言っていい程いないし。大体が私の事を恐がるか関わらない様に避けているし…」
その時俺の頭の中には先程の戦闘のダイジェストが流れていた。どんな魔法でも傷つかない耐久力、血の腕を蹴り飛ばした圧倒的な膂力。
――――そして最後に見せた漆黒の瞳。
純粋な疑問だが、彼女から見て弱くない男なんて存在するのだろうか。
(それはそうと恐がるって…どうしてだ?)
まだ俺は彼女の事をそこまで知っているわけでは無いが、とてもでは無いが周りから恐がられる様な女性には見えなかった。
「恐がるって?単純に強すぎるからって事?」
そう問うと彼女は少し恥ずかしそうな顔をして答えてくれた。
「まぁそれもあるだろうけど…。昔ちょっと荒れていた時期があったから…」
(荒れていたって…。まぁ確かにあの強さでヤンチャされたら周りからしてみればたまらんわな…)
彼女の力や威圧感を考慮して考えれば確かに弱い人間とかだったらすれ違いざまに肩がぶつかっただけでも死んでしまいそうだった。
「あぁ…若気の至りってやつね…。――というか今更だが…お前は何歳なんだ?」
単純に魔族の寿命が気になった。エルフが長寿なのはレスティアの兵士から聞いていたが魔族の寿命までは聞いていなかったからだ。
そんなに難しい質問をしたわけでもなかったのに中々返事が返って来なかったので彼女の方を見てみると―――彼女は不満気なジト目でこちらの事を見ていた。
「――え、なに…?」
なんかまじまじと目が合ってしまい気恥ずかしくなってそう言うと、彼女はため息を吐いてようやく答えてくれた。
「はぁ…普通に考えて女の子に歳なんて聞くもんじゃないでしょ?――あとお前って言うのやめて。なんか他人行儀だしちょっとイヤ」
他人行儀だからイヤ。と言われても彼女と出会ったのはつい最近の事だ。
実際ほぼ他人の様な気がしたが、そんな事を言っていい空気で無い事は俺でもわかった。
それに確かにお前なんて呼ばれていい気持ちになる者もいないだろう。
「あー…悪い。気が利かなくてごめんな。一応魔王様なわけだし貴方とか呼べばいいのか?」
「そうじゃないでしょ!な・ま・え!名前で呼んでって事!
私にはクレナード・テレンジアって立派な名前があるんだから!」
「じゃあ――クレナって呼んでもいいか?」
女の子との自然な距離の掴み方に一切の自信が無い俺が、探り探りそう聞くと―――魔王は少しの間目を見開き、やがて嬉しそうに笑った。
「……珍しい呼び方だね。そんな風に呼ばれるの初めてだから少し嬉しい…」
そりゃそうだろう。魔王様の名前を略して呼ぶヤツなんてそうそういるわけが無い。
人間の世界に例えるなら、レスティア王国の王様の事をハルトなんて呼ぶのと同義だろうしな。そんな状況想像しただけでも気まずい。
種族が違うからこそ取れてる距離感なのだろう、これは。
「珍しい…のか?まぁクレナが喜んでくれるなら良かったよ」
「クレナ……ふふ。じゃあキミの名前も教えて?私もキミの事を名前で呼びたいから」
(――――名前か…)
正直少しトラウマだった。実はエドに変な名前と言われたのを少しだけ引きずっていたりする。
前の世界じゃそんな事一切言われた事無かったのに価値観の違いというのも案外馬鹿にならない。
一瞬偽名を名乗る事も考えたが、何故だか彼女には出来る限り嘘はつきたくないだなんて思ってしまった。
「…..レイア――ナガヒサ・レイアって言うんだ……俺の名前は」
これでまた変な名前とか言われたら相当傷つくな…。
特にこの子は素直だ。素直だからこそこの子に変だと言われたらそれがこの世界での真実なのだろうと思えてしまうからだ。
「レイア……―――――素敵な名前ね。よろしくねレイア!」
そう言った彼女の顔は、俺の名前なんかよりもずっとずっと素敵だった。
気を使って嘘をついてくれているのでは?なんて事は一ミリも考えなかった。
この時の彼女が嘘をついていたとしたら俺はもうこの世界で何も信じる事が出来なくなってしまうだろう。
そう思わされる程に彼女の笑顔は晴れやかで裏表の無い眩しいモノだった。
薄々は自分でも気付いていたのだと思う。自分はいつか遠くない未来この子の事を好きになる。と
大変で痛い事や苦しい事ばかりだったこのくそったれな世界でようやく見つけたのだ。と
誰もが俺に冷たかった、そのせいか少しばかりの優しさを与えられても疑う事から入ってしまっていた。
でも―――この子は違う。
この感情だけは本物で―――これが俺にとってこの世界で唯一の光




