はぁ...暗鬱
――――どれだけ歩いたのかわからない。
進んでいるのは確かだろう。だが辺りは漆黒、先程まで辺りを照らしていた魔石灯も徐々に無くなり辺りはどんどんと暗くなって行った。
先程の魔王との対面もある。それらは俺の心を底のない穴に落ちていくような暗くて恐ろしい気持ちにする。
すると突然ナニカの断末魔が聞こえた。
「――――ァァアアァッ……」
その瞬間、心臓が胸の外へ飛び出そうとしているかの様に激しく動き出す。
先程までの骸骨達との戦闘の後すぐに今の声が聞こえていたら恐らくここまで動揺する事は無かった。
だが辺りを覆う深淵、今自分がどこにいるのかも曖昧なこの空間は気付かぬ内に酷く俺の心を不安定にさせていた。
(――――それでも進むしかない、端からそれ以外の選択肢など無いのだ)
そんな時だった、目の前にソレが現れたのは。
そこにあったのは魔物の死骸。だがただの死骸では無かった。
その体躯は少なくとも20メートルはあり色は赤みたいにも見え、また白の様にも見える既存の色では表現するのが難しい様な色をしていた。更に数も1つでは無く4つ程の巨躯が乱雑に積み重ねられていた。
「――なん…だよこれ。ここら辺にはこんなサイズの魔物がうじゃうじゃしてるってのか…?」
そう口には出したが、本当は自分でも気付いていた。
――――問題なのはそこじゃないという事に。
問題なのはそんなサイズの魔物達を一方的に屠れる存在がいるという事なのだ。置いてある死骸はどれもボロボロだった。最早元がどんな魔物だったのかもわからない。
それはまさしく圧倒的な力の差で一方的に蹂躙されたかの様に見えた。
俺だって曲りなりに今まで色々な魔物と対峙してきたのだ。そんな俺だからこそわかる――――こいつらは相当に強い。
そんな魔物達をここまでボロボロに出来る様な存在――――俺はそいつに勝てるのだろうか?
言い様の無い不安が頭を過る。
「――――いや、勝てるか じゃない。勝つしかないんだ」
魔王と同じだ。そいつと出会うまでに出来る限り強くなる。もしかしたら今のままでも勝てるのかも知れない。
だが魔物相手に油断は命取り、なにかを一つ間違えるだけで次に目を覚ます時にはそいつの腹の中で消化待ちかも知れないのだ。
「ッパーン!」
気合いを入れる為、自身の頬を強く張る。
思ったよりも強く叩きすぎて赤く腫れた頬をさすりながら俺は歩き出した。




