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世捨て魔王  作者: R氏
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その頃、各地でⅡ



「どういうおつもりですか?クレナード様」


 そう訝しげな目で私の事を見ているリスト。彼女は気分屋の私に愛想をつかす事も無くずっと傍に付いてくれている珍しい魔族だ。

 自分で言うのもなんだが私は相当にわがままだと思う。そのわがままのせいで被害を受けたり、最悪の場合は命を落とした者だって少なくはない。


 でも実際それは仕方のない事だとも思う。

 魔族の世界において強者は絶対、弱者は強者の機嫌を伺いながら生きていくのが当たり前。その上で機嫌を損なって命を落とす者がいるのも仕方の無い事なのだ。


 ――――だから私がわがままなのも仕方が無い事。


 だって私強いしね。冗談抜きで私より強い奴とかいるの?って本当に思う。

 強いて可能性をあげるとすればあっち側の大陸を仕切ってる"あいつ"ぐらい。

 だが世間では私とよく比べられているというもう一人の魔王と呼ばれる存在、あんな"紛い物"には間違っても遅れを取る事なんてあり得ないのに。

 正直あんなのと私が同列に語られている事すら腹立たしい。


 まぁ奴は自分の森から出る事はまず無いし、間違っても私に攻撃なんてしてこないだろうから今は放置しているが……そろそろ目障りだし消してしまおうか。なんて事も密かに考えたりしていた。


 私がこの辺りの頂点に立ってからしばらく経った。

 一番上になってもそれはそれで退屈だった。圧倒的な力でこの座に君臨した私に歯向かってくる様な奴も今はいない。


 退屈を紛らわしてくれる様な面白い存在はしばらく現れていない。

 私に反旗を翻したあの馬鹿は人間共となにか企んでいるみたいだけど正直眼中にも無い。


 ――――このままじゃ退屈で死んでしまう。


 なんて考えていた時に彼が現れた。

 最初こそただの虫が家に入り込んだ位の感覚だった。でもその侵入者はよくよく見ているととても興味深い存在だった。

 人間のくせに魔物のスキルを使えているのも不思議だし、到底人間の域を超えた異常な魔力。

 更にこれは私の予想でしか無いが、多分あの人間は他者のスキルを真似て使う事が出来る。


 そんな人間今まで見た事が無かった。いや―――魔族ですらそんな奇異な存在はいないだろう。

 あの人間がこのまま強くなり続けたら――――いつぞや私の所にも届き得るのではないか。


 そんな事を私は考えていた。だから私はあの人間を生かし、更には自らの居城まで呼んだのだ。

 別に餌は太らせてから食べたい。とかそんな事を考えていたわけじゃない。


 ただあの人間の事がもっと知りたかった


 ――――今まで見た事無い存在


 ――――私の知らない世界


 それらにただただ興味が尽きない。



「……はやく会いたいなぁ。もう一度」


 まぁその為にもまずは目の前にいるダークエルフをなんとか言いくるめないと……。

 こちらの事をジーっと見て返事を待ち続けている彼女を見て、ついため息が漏れた。





―――― ―――― ――――





「お父様!あの勇者見習いはどこに行ったんですの!?」


 そう声を張り上げ、ずかずかと王の居室に立ち入る存在がいた。

 こんな不敬な事、下手をすれば斬首モノだったがこと彼女に置いてはそれが許される

 何故なら彼女の名はカーレット。今現在の王家において唯一の娘にして、子の中でも王の寵愛を一番に受けている存在だからだ。



 ――――私は怒っていた。それが何故なのかはここしばらく城内であの勇者見習いの姿を見ていなかった事が関係していた。


 そもそも私はあの勇者見習いへの周りの人間達の態度に常日頃から不満を抱えていた。

 周りの人間達の今までのあの勇者見習いへの扱いを見ていた身としては、もしかしたら殺してしまったのでは無いか。とさえ思えてくる。


 こちらの都合で勝手に呼び寄せ、いきなり魔王を倒せなどと無茶な命令をし、その癖彼の助けになる様な事は一切しない。

 その結果、彼は修行の為にとここを出て行った…と私お抱えのメイドから聞いたのがつい今朝方の事。

 私が思うに、恐らく彼はこの場所に居づらかったのではないだろうか。だから修行の為なんて嘘をついて出て行ったのだ。


 だがそう思うのも当然だ。

 騎士や魔術師は皆彼と必要以上に親しくなるのを拒んでいる様だったし、お父様やお母様、更には他の貴族達も彼の事を見下し決して対等に扱おうとはしていなかった。

 兄様達は特に興味こそ無い様な感じだったが、彼と話している所も一度も見ていない


 まぁそれに関しては私も偉そうに何かを言える様な立場ではないのだけれど……。実のところ私だって別に彼と親しかったわけでは無い。


 話した事も無ければ目だってほとんど合っていない。

 でもそれは見下していたからとか腫れ物として扱っていたからでは決してない。


 ――――いかんせん私は人に話しかけるのが苦手なのだ…


 王族だから。と言ってしまえばそれで済む話なのかもしれないが今までは大体周りの方から近付いてきてくれていた為、こちらから誰かにアプローチなどする必要がなかったのだ。


 そのせいで彼の事を不憫には思いつつも、話しかける様な真似は出来なかった。

 それでも私は皆みたいに彼の事を見下したりもしていないし、なんなら申し訳ない事をしたとも思っている。

 だからもしお父様が彼に酷い事をしているのならば、私が彼を探し出して直接謝ってこよう。


 そう思い、私は今お父様の前に立っていた。

 彼の事を聞いてもいつもはぐらかされていたけれど今日こそは絶対に引かない。



 意を決して私は、目の前で驚いた表情でこちらを見ているお父様の顔を見据えた。





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