はぁ...ボス?
――――辺り一面に散らばる骨の残骸に様々な武具。この地で激しい戦闘があったのは見るに明らか。だが近くに立っている者の姿は無い。
何も知らぬ者がこの場を訪れたなら骸骨同士の仲間割れでもあったのかと思う様な異様な光景。
だが現実は違う。この戦いの勝者は、既に遥か先へと進んでいただけなのだ。
まるでお前らなど路傍の石ころと同じだとでも言う様に。
この程度の戦いに勝利の余韻もなにも無いのだと。
これは戦いではなく、ただの狩りなのだ。と
――――遥か先に見える背中はそう語っていた
「剣にもだいぶ慣れて来たなぁ。でもちょっと骸骨達が弱すぎるな。
あとどれぐらい進めば敵のランクは上がるんだろうな」
魔力付加の扱いにも慣れ、剣の扱いにも慣れてきた俺がそんな舐めた事を呟いていたそんな時だった。
――――前方の上空から2メートル弱はありそうな大剣が飛んでくる。
明らかに魔力付与の為されている大剣。そんな物騒な物の遠距離からの投擲。そんなモノの直撃を食らえばいくらレベルの上がったこの身体と言えどひとたまりも無い。
受け止める―――そんな選択肢は一瞬にして脳内からかき消され、反射的に剣の飛んできた方角の反対側へと跳躍。
ドゴォォォオン!!
恐ろしいまでの速度を伴った大剣はそのまま地面へと直撃し、辺り一面を砂埃と衝撃波が襲う。
躱す前の自分がいた地点、そこに出来ていたのは半径5メートルはあろうかと言う巨大なクレーター。
それを横目で一瞥しこの剣の持ち主であろう存在を出迎える為、俺は剣を構え正面を見据える。
「――――なんだか凄いのがお出ましっぽいな」
【「魔力付加LV3」を取得しました】
(なるほどね、これだけでもわかる。恐らくこの大剣の持ち主は今まで俺が腐る程倒してきた骸骨剣士達の上位互換の様だな)
やがてうっすらと姿が見えて来たその相手の事を観察する。
まず体躯は3メートル程、それに加えガタイも先程まで蹴散らしてきた骸骨達とは明らかに一線を画している。
全身に黒を基調とした仰々しい鎧を着込み、左手に持った剣を下段の位置に構えこちらを凝視している。
「――――て事は…二刀流か」
このサイズの剣を2つ、情報は他にも色々とあったがこれだけでも中々に面倒くさい戦いになるであろう事は予想出来た。
正直、奴が剣を拾う前にこちらから襲い掛かってやろうか。など色々考えたがそれはなんとなくだが気が乗らなかった。
――――慣れないモノを持っているからなのか。俺の中にも妙な武士道の様な物が芽生えてしまっていたのかもしれない。
そして、奴が悠然と剣を拾うと同時にこちらも剣を構える。
辺りは異様なまでの静けさに包まれている。手に汗が滲む様な凄まじい緊張感に包まれながらも、このいつ崩れるかわからない静寂をどこか心地よく感じている自分がいる事にも気付いた。
「――――気分は一端の剣士だな…」
そんな事を呟き、なんとなく気恥ずかしくなり少し笑ってしまう。
当たり前だがこの世界に来たばかりの頃は闘いなんてしたくもなかったし、争い事なんて無ければそれに越した事無いだろ。なんて思っていた。
だが目的が出来、力を付け、度重なる闘いの日々の中に身を置いている内に自分がどんどんと変わっていくのを感じた。
これが本来のお前の姿なのか?と誰かに問われても答えなんてわからない。
(でも俺は――――今のこんな自分も嫌いじゃないかな)
――――突風が吹いた。今の風によって枝から飛ばされたのか、一枚の葉が二人の間を飄々と揺れながら落ちていく。
そして、その一枚の葉が短い旅を終え地面へと辿り着いた時
――――二つの地面を蹴る音が響いた




