はぁ...雑魚キャラ?
「――――きったね…」
俺は血と水でビショビショになった自分の体を見つめ呟く。
流石にあのままでは風邪を引くと思い、僅かに残っていた湖の水で身体と服を洗い火魔法で暖を取っていた。
この場所に来た当初は神秘的な湖に優しく注ぎ込む日差し、この森に入って以降嫌って程エンカウントし続けてきていた数々の魔物達、それらの姿も無いこの場所はとても美しく、心が穏やかになっていくかの様な錯覚を覚えさせる程の神秘さを醸し出していた。
それが今となっては――――周りの木々は魔法の余波で軒並みなぎ倒され、湖の水位も当初の半分以下に。
そして極めつけは辺り一面に飛び散っている水竜の血。
そんな今の景観は下手をすれば周りの暗い森の中よりも悍ましく見えた。
「――――なんか申し訳ないな…」
この惨状を作り上げたのが自分だと思うとなんだか申し訳ない気持ちが込み上げてきた。
「まぁいっか…。どちらかと言えば俺は絡まれた側、いわば被害者みたいなもんだしな。頭の固いあの竜が悪い!」
元はと言えば人の領地に勝手に入り込み、そこで武者修行などと言い手当たり次第に魔物を狩りつくしていたこちらが明らかに悪いのだが――――そんな事とうに忘れているかの様に心の中で全ての責任を亡き水竜に擦り付けていた所で――――不意に視線を感じた。
(……なんだ?)
ソレは今までの魔物達の殺気とはどこか違う様な気がした。こちらを舐る様な目つき、どことなく悪寒に近い様なナニカを感じた。
「はぁ…。次から次へと…ほんとに退屈しない森ですねここは。
とりあえず――――行くか」
ある程度魔力も回復したしこれ以上ここに居座る理由もない。
何故かここには魔物も現れない為本当にする事が無い。だから俺は湖を越え森の更に奥へと進む事にした。
ここ最近をずっと森の中で生活していたからなのか、先程までと何ら変わらない森の様子にどこか落ち着く様な感覚を覚えた自分に少し驚きつつも苦笑いが零れた。
「いや流石に順応しすぎだろ俺…」
するとこれまた聞き覚えのある懐かしい呻き声が茂みから聞こえた。
「グルルルゥウ!」
(殺した赤虎の数もそろそろ100に届きそうだな…。もし絶滅しちゃったらごめんな)
全くと言っていい程気持ちのこもっていない謝罪を心の中で呟き、作業の様に赤虎の命を刈り取る。
【LVが上がりました】
「――――――は?」
予想だにしていなかった展開に思わず動きが止まる。今倒したのは赤虎1匹だけ、あまりにも簡単に上がったLVに喜びよりも戸惑いの方を強く感じた。
「――――ふむ…。単純に考えると……99から100になる時だけが他の時とハードルが違うのか?
て事はシンプルに考えるなら次は199LVの時にまた上がらなくなるのかもな。
まぁなる様にしかならないか、今考えてもどうせわからない事だし今はとりあえず置いとくしかないな」
(それにしてもそろそろここの魔物達じゃ物足りなくなってきたな。ちょっと一気に奥の方行ってみるか?)
自身の周りを風の刃で囲み全速力で森を駆け抜ける。戦う必要の無さそうな魔物はそのまま無視し、飛び掛かってくる無謀な魔物は風の刃で迎撃していく。
そんな感じで順調に進んでいた俺が歩みを止めたのは――――剣や杖を持った様々な骸骨の姿を発見した時だった。
「スケルトン…か?」
目の前の存在はどう見てもスケルトンそのものだった。
なら何故疑問形なのか、そこには元いた世界での知識が大いに関係していた。
あちらの世界でのスケルトンという存在はかなり低級の魔物だった様に思える。それがこんな明らかに強そうな魔物達と同じエリアにいる。
その事がかなり異質な様に思えて謎の不気味さを感じさせていた。
「とりあえずちょっと近付いてみるか…」
――――好奇心だった。と言えばそれで終わりかもしれない。
正直どうせ雑魚だろう…とも思っていたし突然襲い掛かって来たとしても、いくらでも対処の仕様はあると思っていたのも事実。
だがそんな甘い考えは次の瞬間に粉々にぶち壊された。
冷静になって考えてみればわかった筈なのだ。この場所は先程まで自分が歩いてきた森の―――更に深部。
そんな場所で先程までの魔物達よりも弱い魔物が生きていけるわけなどないのだ。
――――ザン!
紙一重だった。剣を持った骸骨が横薙ぎに一閃、突然の事に反応が遅れた俺は胸の薄皮を斬られ少量の血を流しながら急ぎ後退した。
「――――まじ…?」
(…え。こいつら全部この速さで動けんの…?
普通にやばくないか?これ…)
中には弓を持っている骸骨までいた。その為空に逃げるのも今回ばかりは得策では無い様な気がした。
剣をここまで早く扱える骸骨がいるのだ。あの弓が威嚇目的の飾りだとは到底思えなかった。
【「魔力付与LV1」を取得しました】
スキルの取得通知が鳴る。そのスキル名はどことなく見覚えのある様なありふれた単語だった。
(魔力付与…ってあれか。武器に魔力を流して威力を上げるってやつだよな)
使い勝手の良さそうなスキルではあったが今の自分に特別必要なスキルとも思えなかった。
なぜなら今の自分の戦い方は基本的に魔法主体の素手戦闘であり得物を使っての戦闘経験などほぼ無いからだ。
(ん…?――て事はあいつらの武器、あれ全部に魔力が流れているのか?だとしたらまともに食らったらちょっと笑えない事になりそうだな)
「……とりあえず離れますか」
大きく後ろへと跳躍しながらアイスニードルを30個程具現化、着地と同時にそれを飛ばす。
そんな迫りくる氷柱を難なく躱していく骸骨剣士達。だが後ろにいた骸骨弓手達には直撃していた。
その光景に俺は一つの情報を手に入れた。
(そうか、こいつら全部個体差みたいなのがあるのか)
まず剣士達は最初のこちらへの攻撃然り、基本的に機敏な様だった。まともに戦っていては中々に骨が折れるのは間違いない。
そんな事を考えていると剣士達の後方から今俺が使ったモノと全く同じ様な魔法が返ってくる。
「――っちぃ!そうか杖持ってる奴もいたなっ!」
目には目を、魔法には魔法をとでもプログラムされているのか。その魔法は間違いなくアイスニードルだった。
迫り来る氷柱を急ぎ土の壁を具現化する事で防ぐ。
(――――めんどくさいな…。これは後ろの後衛達だけでも先に倒しちゃった方がいいかも知れないな)
先程よりも大きなアイスニードルを具現化しそれを横一列に並べる。その幅およそ50メートル、こう並べてみればそれは最早攻城兵器の様にも見えた。
そしてそれを――――全て同時に放つ。
辺り一帯の地上2メートル圏内を大量の氷柱が埋め尽くす。それを剣士達は跳躍して躱したが、弓手と魔法使いにこれらの回避は不可能だった様で少ししてからレベルアップの通知が届いた。
「……なるほどね。お前ら攻撃力はあるけど防御力は低いのか」
(――――それならばいくらでもやり様はある)
本能的にこのまま遠距離で戦うのはマズいと悟ったのか、剣士達が一斉にこちらへと走り出す。
その速さは凄まじく、並みの魔法使いであれば詠唱が間に合わず切り裂かれ息絶えていた事だろう。
だが詠唱を必要としない俺の魔法の前では奴等の攻撃力も無力に等しかった。
「一度でも俺との距離を開けた事が間違いだったな」
突如現れた炎の壁、それは一片の隙間無く奴等を囲う。四方を塞ぐ壁のその高さは10メートル以上は優にあり跳躍して外へ逃げる事も不可能。
そして極めつけとばかりにそれらはゆっくりと狭まっていく。
こうなれば奴等は何も出来ずに死を待つのみ。防御力もある敵だったら無理やりにでも魔法を突破してくるだろうが、防御力の低い奴等にその作戦は取れない。
(我ながら理不尽だと思うわ……。でもこんなの見ちゃうと剣士がどうやって魔法使いに勝つのか想像も出来ないな)
普通の魔法使いにはこんな芸当、到底出来る筈も無い事を――――彼はまだ知らない。
――――それから5秒後。静かになった辺りにレベルアップの通知が鳴り響いた
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