クレナードの高揚
「――ナード様っ!…クレナード様!」
先程から声を荒げているのは魔王クレナードの側近であり同時に右腕の役割も果たしている『リスト』という女の魔族。
いつもは冷静な彼女だが、今は見るからに動揺していた。
実力者である彼女もクレナード同様、森の守護者である水竜の魔力が消えた事に気付いたのだろう。
(――――でも…、今はそれどころじゃないの)
クレナードは自身の持つ遥か遠くの景色を鮮明に見る事の出来る『千里の魔眼』で事の顛末を一部始終見ていた。
そしてそこで見た光景は彼女にとってあまりに衝撃的なモノだった。
人間と竜の戦い――――本来ならば戦う事などあり得ぬ筈の両者、何故ならそもそものポテンシャルがあまりにも違い過ぎ到底勝負になどなる筈が無いからだ。
だが長い激闘の末、勝利を収めたのはなんと人間の方だった。
未だかつて単身で竜を倒す人間など見た事の無かったクレナードは、戦いが終わったその後もその人間から目を離す事が出来ずにいた。
(ありえない…。あれは人間が使える魔法の領域を明らかに超えている。そもそもあの魔法はなに?どうしてあの人間は水竜と同じ魔法が使えたの?)
此度の侵入者はたかが人間1人、あの森に入り込んだ所で勝手に死に行くだろうと思っていた。
だがあの人間はしぶとくも生き延び続けていた。
いや、生き延びているどころの話じゃない。ついにはあの森の守護者とも呼べる水竜をも倒してしまったのだから。
確かにあの森にいる魔物達は大した強さではない。
流石にそこいらの冒険者共に負けるような弱さでも無いが、魔大陸の中では比較的低ランクの魔物達。
――――だがあの水竜は違う。
あれは数少ない竜種の端くれ。例え相手がSランクの冒険者だろうと負ける事などあり得ない。
(――――面白い。……面白いわ『アレ』)
「リスト。貴方に任せるって言ったけどあれは忘れなさい。――――もう少しだけアレの好きにやらせてみるわ」
「……よろしいのですか?」
「なにが?もし何かマズい事になりそうだったら私自ら行くわ。――――それとも……私の言う事に何か不満でもあるの?」
そう言いリストの方をみやる。すると彼女は一瞬だけ動揺した様子を見せたが、すぐさま平静を取り戻し答えた。
「申し訳ございません。出過ぎた事を申しました」
久しぶりに面白いモノを見つけたクレナードは高揚していた。
最近は特に面白い事もなくしばらくの間退屈をしていた。だからこそ久しぶりに『西のあいつ』の領地にでも行ってみようかなんて思っていたが――――やめだ。
――――アレの結末を見届けたい。アレが私にもたらす変化を知りたい。
それまではひとまずなにもかも後回しでいい。
「さぁ…。もっと私を楽しませてね」
紅い色の髪をした美少女は、遠くの水辺で寝そべる1人の人間を見つめ光悦な表情を浮かべる
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