閑話Ⅱ
俺は小学生の時に事故にあった。
ただ自転車で信号待ちをしていただけだった。赤信号から青信号になったのをしっかりと確認して自転車を漕ぎ出す。
まだ幼かった俺は想像もしていなかったんだ。赤信号だろうと無視して渡ろうとする様な自分本位の人間もいる事を。
恐らく車はすぐに気付いたのだろう、横断歩道を渡ろうとしている小さな自転車に。車は俺にぶつかる直前に急カーブを試みる。
――――その甲斐あってか直撃の未来だけは回避された。
だがぶつかる直前の急ハンドルでは自転車を完璧にかわす事など到底出来なかった。
衝突する車の左先端と自転車のカゴ。当たったのが一部の付属部とはいえ、1tを超える重さを持つ車の体当たりを食らった俺は衝撃で自転車から投げ出された。
どれだけ大げさに言ったところで決して死ぬようなケガでは無かった。擦りむいて血は沢山出ていたが、後は打撲くらいのものだった。
それからはあまり覚えていないが救急車が来て、気付いたら病院の診察台の様な所に寝かせられていた。
少しして駆け込んでくる両親。父親は真剣な顔で誰かと電話していて、母親の方は俺の姿を見るや否や泣き出してしまった。
不思議な事に、痛みもそこまで感じていなかったし何がなんだかわからず物事がどんどん進み混乱していた俺は――――母親の涙を見て初めて事の重大さに気付いた。
――――気付けば大粒の涙が頬を伝って手の甲を濡らしていた。
ケガが痛み出したわけでは無かった。ただ母親の涙を見て、自然と込み上げてくるそれを我慢する事が出来なかったのだ。
「…どうしてお母さんが泣くの?」
すると母親は涙を拭いて笑いながら言った。
「玲亜が生きててくれて嬉しいからかなー。
それとね?――玲亜が痛いとお母さんも痛いの。玲亜にはまだわからないかもしれないけどね」
――――少しだけ
ほんとに少しだけだったけどお母さんの言ってる事がわかる様な気がした。
お母さんの涙を見て俺も涙が出てきたって事は、今お母さんが言った事と似たような事なんじゃないか。って思ったんだ。
こんな事があったからか、俺は自分の身体を以前よりも大事に思える様になった
なんだかもう――――俺だけの身体じゃない様な気がしたから
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