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世捨て魔王  作者: R氏
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はぁ...アサンスキ



 ようやく目的地に着いた二人。どうやら帝国も日本とは違い靴を脱いで家に上がるという習慣は無い様だった。


「おかえりユージン!…あら、お客さん?」


 そう言って俺達二人を出迎えてくれたのはこれまた驚く程美人なお姉さんだった。綺麗な茶色い髪を綺麗にボブカットで揃えていて、整った鼻筋に優し気に垂れてはいるがパチリとした茶色い瞳。


「ただいまサラ。そうだね、一応お客さん?かな」


 そんな感じで軽く俺の事を紹介する友人君。


 (って一応ってなんだ一応って!完全に客だろうが!こちとらお前が一緒にいてくれって言うからわざわざこんな所まで来てんだぞ?おい)


「どうもどうも。俺の事は気軽にレイアさん好きとでも呼んでくれ」


「レイ・アサンスキさん?でいいんですか?よろしくお願いします!」


 小ボケを潰された事よりも初対面の相手の言葉を何一つとして疑わないその人間性に惹かれた。垂れ目がちではあってもハッキリとした二重、どことなく優しさを醸し出す愛嬌のある顔。


 (――――うん…。控えめに言って結構タイプです)


「彼女はサラ。僕の妻なんだ、仲良くしてあげてね」


 (……やっぱり全然可愛くない。ブス、いやドブス。

  よくよく見たらそばかすだらけな上にデブで出っ歯だったわ)


「へー、いいねぇ人望もあって力もあってお金まであって更にはこんな綺麗な奥さんまでいるなんて……最強だね友人くんは!」


 (妬ましい…お前が妬ましい…。どうしてこんなにも差がある?

  まさかお前の称号【勇者】だったりする?だとしたら納得だわ。勇者?の俺とは大違いだわやっぱり)


「そんな事無いよ…。そもそも力に関しては確実に僕よりレイアくんの方が上だしね」


 更に彼は謙虚さまで持ち合わせていた。流石にここまで要素が揃えばモテるのも納得だった。

 だがこうなるといよいよケチの付け所も無くなってきた為思考をシフトするしか無い。

 (嫁自慢などいいから飯を持ってこい飯を)


 多少の卑屈感は否めないが今持っている手札の中で、唯一優位にこの場を進める事が出来るであろう要素は多少強引にこの場へと連れてこられた事くらいだった。


「え、アサンスキさんてお強いんですか?すごいなぁユージンよりも強いなんて!」


 (……誰だよアサンスキさん…)


「いやいやそんな事無いと思うよ。というか友人くんご飯…」


「今作らせてるからもう少しの辛抱だよ。ところで料理が出来るまで少しお話でもしないかい?」


 そう言い少し真剣な表情に変わるユウジン。彼の立場を考えれば少しでもこちらの情報が欲しいであろう事は想像に難しくない。

 こちらとしても出生以外ならば聞かれて困る事も特に何も無い為断る理由も無かった。


「いいよ。別にやましい事なんて何も無いから何でも聞いてくれたまえ」


「僕もそう願ってるよ。――――じゃあまず今まで君はどこにいたんだい?それだけの力を持ってるのにレイアなんて名前は一度も聞いた事が無いんだ。これはとても不自然な事だと思うんだ」


「不自然て言われてもな…なんてことはないよ。

 俺はごく普通に生活していたよ。旅をしながら色々なモンスターを狩ってたらいつのまにかレベルが結構上がっちゃっててさ。

 その後にレスティアで冒険者を始めたんだけど、初級冒険者は薬草採取とかゴブリン退治とかのクエストしか出来ないみたいですぐに飽きちゃったんだよ」


 (まぁ…半分ぐらい本当だしセーフだろう)


「旅をしてたらいつの間にかそんなに強くなってたって?

 ありえるのかそんな事……じゃあさっき詰所で君が使ってたあの魔法…あれはどこで覚えたの?」


 どこで覚えたかと言われたらレスティア王国の王様の目の前なんだが、そんな事を馬鹿正直に言ったところで意味もわからないだろうし不信感を募らせるだけだろうから当然言わない。

 だがずっと思っていた事なのだが、サイズはともかく基本はただのファイアーボールなわけなのに周りの反応が些か過剰だった様な気がしてならない。


「どこで覚えたって…あんなのただの大きいファイヤーボールだろ?」


「ファイヤーボールだって!?―――あの初級の?違うよ。あれは上級魔法のインフェルノという魔法だ」


 (いやいや本当にファイヤーボールなんだけど…

  というかそもそも上級魔法ってなんぞや?インフェルノとはなにかね?)


「インフェルノ?ごめん、俺そういう魔法の種類みたいなのってあんまり詳しくないんだよ。魔法の種類ってそんなに沢山あるものなのか?」


「詳しくないって…普通わからないのに使えるわけないんだけどなぁ…

 ――――魔法には初級、中級、上級、帝級、超級、神級があって、だいたいの魔法使いが使えるのは中級まで。

 上級魔法を使えたらもうその人は一流の魔法使いと言って差し支えないレベルだって言われてるんだ」


 こちらの言い分に納得した様子は1ミリも見えないが、優しい友人くんは渋々ながらも説明を始めてくれた。


「ちなみに超級と神級は使える人間は今の所確認されていないんだ……十賢なんて大層な呼び名で呼ばれてる僕も上級までしか使えない。

 ――――なのに君はそんな上級魔法を無詠唱で使ったらしいじゃないか。だから正直それはとても異常な事なんだ。

 まぁだからこそアルシェ様の目に止まって君は今この国に入れてるわけなんだけど…」


「…アルシェ?」


「アルシェ様は十賢と十剣の設立者だよ。現在この広いクレナディア帝国で一番強いと言われている人だ。

 さっき僕が、君の事で上に判断を仰いでくるって言っただろう?その時に向かった先がアルシェ様の所だったんだ」


「て事はこの世界全体でもトップクラスの実力者って事か……是非会ってみたいな。会えたりする?」


「普通はそう簡単に会える人じゃ無いんだけど…。幸か不幸かアルシェ様はレイア君にとても興味を持っている様子だったから多分そのうち会えると思うよ」


 なんだか俺にとっていい方向にしか話が進んでいない気がする。

 幸運のパラメーターが低い筈の俺からするとそれが逆に恐かったりもする。


「そのアルシェって人はどうして俺に興味を持ってるんだ?

 自分で言うのもなんだが…本当になんなんだが、俺は今の所この国に迷惑しかかけてないと思うんだが?

 その人はこの国のお偉いさんなんだろ?どうしてそんな人が俺を帝国内に入れてくれたのかわけがわからないんだが」


「迷惑かけてるって自覚はあったんだね……他の上層部の人達の事はわからないけど、少なくともアルシェ様はそういう小さい事は気にしない人なんだ。

 ただ強い人にしか興味がないって感じかな――――そういう意味では君とアルシェ様は少しだけ似ているのかもね」


 話だけ聞いているとただの戦闘狂の様にしか聞こえない。それに友人くんは何か勘違いをしている様だがこちらはただ技を盗みたいだけなのだ。


 (そんな戦闘民族とは一緒にしないで欲しい)


 そんなこんなでだらだら話をしていると、メイドの様な恰好をした人達が沢山の料理を持ち入ってきた。


「っおー!?」


 そこに並んでいたのはまさしくご馳走であった。

 ちょっと材料がなにかはわからないから日本の料理をベースに説明するが、まずは500gはあるんじゃないかってぐらい肉厚なステーキ。

 分厚い肉はミディアムに焼かれ、カットされた断面からはこれでもかというくらいの肉汁が溢れ出ている。

 そしてその横にあるのは白身魚のムニエルみたいな感じだろうか。出来立ての様で美味しそうな香りを含んだ湯気がこれでもかと立ち昇っていた。


 俺が今まで食べてきたのはよくわからない肉串や干し肉ばかりだった為、正直よだれが止まらない。

 薄緑のオイルみたいなのがかかっているからこの世界にもオリーブオイル的な物があるのかも知れない。

 さすがに白米は無いみたいだったがパンは元の世界のそれと大差無い様に思えた。


 後は―――野菜もいくつかあったが野菜は嫌いなのでノータッチで。



「ッ――!うっま!」


 (なんだこれ!こんな上手い肉食った事無いぞ!

  別にうちは貧乏ってわけじゃなかったし高い肉もそれなりになら食べた事はあるんだけどな。

  でもなにか違う…というか矛盾してるんだよな。めっちゃ脂が乗っているのにそれがすぐに溶けずにずっと口の中に残ってる感じ)


 最早意味が分からな過ぎて食レポが出来ない。俺はここに来てようやく出会う事が出来た異世界の御馳走というモノにひたすらに感動していた。



 とりあえず旨い!終わり!





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