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世捨て魔王  作者: R氏
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はぁ...新幹線?




 ――――あの衝撃の事実の発覚から5分程経過した頃


 俺は馬鹿みたいに口を開けて目の前にある崖を凝視していた。


 (どうして俺がこんな馬鹿みたいな顔で崖を見ているかって?)


 ――――何故ならこんなとこに崖なんか無かったからだ。



 今の自分の実力に興味を持った俺は、だだっ広い荒野の中で一際目立っていた巨大な岩山を見つけた。

 魔法の大きさや数を見るだけなら空にでも撃てばいい話なのだが、大事なのは『見かけだけじゃなくて威力も伴っている』という事だと考えた俺はその岩山に向けて特大のファイヤーボールを5つほど飛ばしてみる事にしたのだ。


 すると――――岩山に魔法が着弾すると同時に、身体ごと後ろに吹き飛ばされそうになる程の爆風が発生した。

 そして爆風により舞い上がった砂埃が霧散し切った後――――そこには山ではなく崖があった。

 見上げる程にそびえ立っていた岩山は跡形も無く消え去り、更にはその地面部までもが抉り取られた様な異様な光景が目の前に浮かんでいた。


「…なにこれ、こわ…」


 (こんな魔法いつ誰に使えばいいんだよ…

 やはりサイズだけで無く明らかに威力も上がっている。単純にレベルの補正と魔力と知力の補正が魔法の威力にプラスされてるって考えていいのか?)


 そこであの賢者が言っていた事を思い出す。

 成長の速度もそうだが、その際の上がり幅も普通の人と比べてどうのこうのと言っていた様な気がする。


 という事は――――例えば俺と全く同じレベルの魔法使いがいるとしよう。

 だが恐らくその魔法使いは同じレベルの俺に比べ魔力の量や知力の数値、魔法の威力の何もかもが如何程か低いという事になるのだろう。


 (これが勇者補正ってやつか。エグイな…)


 いくら『魔王を倒す』という責務があるからと言って、こんなチートな存在がいる事を知ってしまえば俺だったらまともに努力をする事をやめてしまうかもしれない。



 (――――いや多分俺はそんな存在がいなくてもやめてるんだろうな)


「……ニートだったしな、俺」


 なぜだろうか先程までは自身の思いがけぬ力に少なからず高揚していた筈なのに急に気分が落ち込んできた。


 (この話はもうやめるか……)


 そういえばスキルも増えていたのを思い出す―――確か説明には


 【Exist Skill】


 この世界に存在するスキル。自身が実際に見た事のあるスキルを自身のステータスに具現化する事が可能


 と記してあった。


 (…まず質問があるんだがスキルを見る。というのはどういう事なのだろうか)


 武技であったり剣士や近接職が使うわかりやすいスキルならば想像もつくのだが、実際今の自分が欲しいモノはそういう系のモノより


【魔力自動回復LV5!】  とか


【魔法攻撃力増加LV5!】 とか


【状態異常耐性LV5!】  とかのスキルなのだが。


 (見れなくね?そういうのは諦めろって事かな?それとも持ってるヤツを凝視しといてそのスキルを発動するまで待つとか?)


「なんか若干ややこしいな……まぁそんなんでスキルが増えるなら全然ガン見するんですけどね?」


 色々なことを考えたからか身体が不思議な疲労感に包まれていた。恐らく体力的にとかでは無いのだが先程の出来事は中々にインパクトが強すぎた。

 帝国に着いたら次こそはゆっくり休みたい。出来る限り早く元の世界に戻りたいとは思っているが、それで身体を壊していたら元も子もない。


「それにいちいち忘れがちだがこれは異世界転移なんだよな。地球の誰もが憧れてたあの!せっかく異世界に来たんだから少しは楽しまないと損だろ!」


 改めて自身の置かれている状況の希少度を思い出したはいいのだが、その為にはもっともっと強くならなくてはならない、折角訪れた異世界だというのに誰かに行動を縛られたくなど無い。


 とにかくスキルの方に関しては一人ではどうしようも無い、とりあえず帝国に着き次第情報を集めて強そうな奴を見つけてそいつを延々とストーキングでもする事にしよう。


 (生憎俺はこの世界では失うものなど何も無いからな)


 そして話は少しだけ変わるが、これだけ素早さも高くなったのならば走って行けば今までの半分くらいの速さで帝国に着けるのでは無いのだろうか。

 そんな事を思いついた。


「ちょっと試してみるか。疲れたらやめればいいし」


 誰に言うでもなくそう言い駆け出した俺は愕然とする



 ――――なんだこれ…


 それはまるで別世界の様だった。よくフィクションの物語の中で空を飛ぶ魔法を使った者達がするリアクションとでも言えばわかるだろうか。

 俺も今まさにあんな感じのリアクションをしていた。感動するのに空を飛ぶ必要なんて無かった。

 こんな速さで走る事だって元の世界では到底ありえないのだから、ただ早く走っているというだけでこんなにも視界が変わるという事に驚きを禁じ得なかった。


 もしかすると新幹線の先頭にくくりつけられたらこんな景色なのだろうか。

 なんて馬鹿みたいな事を考えてしまうぐらいには俺は驚いていた。


(てかさ…。どうでもいいけどこれ転んだら俺死ぬんじゃね?

 いやまぁ体もだいぶ丈夫にはなっているんだろうけどさ……それでも衝撃は受けるだろうし出来る事なら超高速で転んで数十メートルも転がる。なんてのは遠慮願いたい…)


 誰も見ている者などいない事は勿論知っていたが、俺は出来るだけ自然に少しだけスピードを落とした。



 べ、別に恐かったとかそんなんじゃないんだからね!





大いに励みとなりますので高評価とブックマークの方よろしくお願い致します!


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