はぁ...沁みる
(――――なんだろう…とても気まずい…)
夜飯を食べ終えた俺は、少し外の風に当たりたくなり村の外れへと足を運んでいた。
すると、特に何かをするでも無くただ横になっていた俺の元へと来客が訪れた。
それはマリーだった。俺が店を出る頃には店内も落ち着きを見せ始めていた。酒場が落ち着いた事で彼女にも時間の余裕が出来たのだろうか。
そんな事を考えながら、もう何度目かもわからないがチラリとマリーの方を見やる。
そう、彼女は現れたはいいが一向に口を開かないのだ。
(――――え…、用無いなら帰ればいいのに…)
このわけのわからない沈黙にそろそろ心が限界を迎えそうだったその時
「あ、あのっ!」
「はっはいっ!」
「「………」」
突然の呼びかけに思わず上ずる声、そして再び沈黙。
女々しくも上ずった声に対しても一切触れられる事は無かった。こういう場合実は逆にイジッてくれたり笑われたりする方が助かるのだが、そんな関係値でも無い俺達にはあり得ないifだった。
「マリーちゃんだっけ…?なにか用があって俺のとこに来たんじゃないの?」
「…はい」
やがてマリーは意を決した様にようやくその重たそうな唇を開いた。
「貴方ってなんなんですか…?」
受け取り方によっては傷付きかねないそんな唐突な疑問。彼女の真意も意図もわからず再び少しの間が訪れる。
「質問の意図がちょっとよくわからないんだけど…。ただの通りすがりの冒険者なんだけどな」
「どうしてうちの村に…?それにGランクって…嘘ですよね?」
(――――あ、もしかしてDとの戦いを見られてたのか?だとしたら疑っているのも恐がっているのも納得がいく)
「嘘じゃないよ?もしかして昼間のやつ見てた?」
「――――ッ!」
あれだけ大っぴらに揉めていたわけだし、それを遠目に覗き見られていたからといってその行為を咎めるのはお門違いもいいところ。
それより少しばかり強い魔法が使えるくらいの事でそこまで恐がるものなのだろうか。
「そんなに怯えないでよ…まず、俺はつい最近冒険者になったばかりだからGランクなんだよね。それにこの村に来たのもほんとにたまたまだよ」
「レスティア王国にもクレナディア帝国にも中途半端な距離のこの村にたまたまですか…?」
彼女の疑問は一見正当性のある質問にも思えるが、そんな事を言えば正当な理由でこの村に来ている者などいなくなってしまうのでは無いだろうか。
旅人はもちろん行商人や冒険者、様々なケースがある筈だ。だがそんな事は長らくこの村に住んでいるであろう彼女自身も当然わかっている筈。
恐らくだが今はこちらへの不信感と恐怖?のせいでまともな思考が出来ていないのかもしれない。
「あー…もともとレスティアにいて、ちょうど今クレナディアに向かってる所なんだ――――ほら、なんもおかしくないでしょ?」
別にやましい事も無いし嘘は1つも言っていない。俺が努めて優しくそう言うと彼女はようやく少しだけ納得した様な表情を見せてくれた。
「たしかに…。じゃあ明日にはもう村を出るんですか?」
「そのつもりだよ」
「わかりました…。じゃあひとまずは信じます――――それじゃあ今日はゆっくり休んでください…」
(……おいおいどんだけ嫌われてるんだよ俺は!)
それは遠回しに「仕方ねぇから今日はうちの宿で寝てってもいいけど明日には出てけよ?カス」と言っている様なモノであった。
(普通村の迷惑になってるチンピラ冒険者を追い払ったらさ、そこで崇め奉られてモテモテになったりするもんなんじゃないの!?
もしかしてあれってイケメンなのが前提で起きる現象だったんですか?人間大事なのって中身なんじゃないですかねぇ!?)
「ちゃんと明日には出立するから大丈夫だよ…――――とりあえずこんな夜更けに一人は危ないからもう帰んな?」
「…そうですね。お時間とらせてごめんなさい。――――おやすみなさい」
「おやすみ」
――――あーあ…夜風が目に沁みやがる
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