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世捨て魔王  作者: R氏
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村娘の杞憂



 お昼時だというのにいつもどんちゃん騒ぎして周りのお客さんにもお父さんにも迷惑をかけていたあの人達、Dランクの冒険者だからみんなは関わるなと言っていた。

 確かに少し前に勇気を出してあの人たちに注意をしたおじさんは彼等の容赦ない反撃を受けて今も家でケガの治療をしているみたいだった。


 こんな田舎だしああいう冒険者っていう人種とはあまり関わり合いのなかった私は、冒険者ってみんなあんな感じなんだろうか…なんて思い始めていた。

 でもそんな時、無謀にもあの人たちに絡んでいく人が現れた。その人はただの村娘の私から見てもお世辞にも強そうには見えない様な普通の人だった。

 また被害者が増えちゃうかもしれない。そう思った私はこれ以上このお店の評判を下げない為と怪我人を出さない為に勇気をふり絞り止めに入った。


 なのに肝心のその人はそんな私の気持ちになんて全然気づいていない様子で飄々とあの乱暴な人たちと外に出て行ってしまった。

 最初こそどうしようか迷っていたけれど、やはり放っておく事なんて出来なかった私は少ししてから彼等の後を追う事にした。


 でも見つけた時にはもう喧嘩は始まってしまっていて私は遠くからソレを見ている事しか出来なかった。

 そして喧嘩が始まって少し経った頃――――私は目を疑った。それはほんの一瞬の事だった 。


 全然強そうには見えなかったその人の周りに突然綺麗な炎の槍みたいな物が何十個も現れたのだ。

 驚いていたのも束の間、私の中にはある疑念が生まれていた。


(魔法って詠唱っていうのが必要なんじゃなかったっけ…)


 例えそれを抜きにしたってあんな数の槍を出せる魔法なんて聞いた事もなかった。



 あれじゃあまるで……魔族――――――薄れかけていたトラウマが蘇ってくる。


 突拍子の無い可能性。だがそう思ってしまうのも無理ないぐらいに目の前の光景はあり得ないモノで、魔法のまの字も知らない私でさえソレが普通ではない事くらいわかった。

 それからはもうDランクの冒険者の人がすぐに降参して、仲間の二人が逃げる様にそそくさとこちらへ歩いてきたので私も急いでお店の中に戻った。

 その後、あの人と戦っていた最後の人も店に戻ってきて皆で急いで荷物を纏めて店を飛び出していった。



 帰り際に「――あれは化物だ…」と呟きながら 


 お店に戻って少しして、落ち着いた私はなんだか急に恐くなってきてしまった。


(あの人が実は人じゃなくて人のフリをしてる魔族だったらどうしよう…)


 先程の炎の槍をこの村に向けて放たれたりでもしたらこの村は一気に壊滅的なダメージを負うこととなる。

 不安で気が気じゃなくなってきた私は、詰所にいる筈のオルフさんに急ぎ会いに行く事にした。


 なぜならこの村で一番強いのがオルフさんだったからだ。


「っオルフさん!」


「ん、どうしたんだいマリーちゃんっ!そんな血相を変えて」


「さっき村に来た人わかりますか?」


「ん?さっきって事はー‥…あーレイアの事かな?あいつがなんかしたのかい?」


(レイアさんって言うんだあの人…)


 どこか彼の名前を口に出した時のオルフさんの表情は穏やかに見えた。

 二人がどんな会話をしたのかはわからないが、そんな様子のオルフさんがどこか能天気な様に思えて自分の中に苛立ちが募っていくのがわかった。


「名前はわからないけど…あの人ってどんな人なんですか?」


「どんなって言われてもなー…まだ会ったばかりでよくわからないけどイイ感じのヤツだと思うよ?冒険者カードも見せて貰ったし怪しいヤツでも無いみたいだしね。まぁ…ちょっと抜けてるところあるけどな」


「冒険者なんですかあの人!?ランクは?やっぱり高いんですか?」


(冒険者だったんだあの人。だったらSとか…最低でもAぐらいかな、それぐらいの人だったらまだなんとか納得がいく…かも)


 ――――などと思っていた私の考えは、オルフさんが笑いながら言ったまさかの答えに見事に粉々に打ち砕かれた。


「なに言ってるのマリーちゃん。あいつは駆け出しのGランクの冒険者だよ」


(G……?GってFの下のG?)


 Gというのは言うまでも無く一番下のランクだ。そんなのはどう考えてもおかしかった。

 あんなに凄い魔法を使える人がそんな下のランクにいる事に疑惑の念が更に増す。

 理由ならいくつかあるのかもしれない。冒険者になったばかりだから、昇級に興味が無いから。


 だがあの人は何かを隠している。直感がそう告げているのだ。

 考えれば考えるだけあの人の異質ぶりが浮き立ってくる。


「でもなんであいつGランクのくせにアイアントードを狩れるだなんて思ったんだろうな……多分すぐに無理だと気付いて戻ってくると思うよ。マリーちゃんも気になるんだったら一緒に待っとくかい?」


 やはりオルフさんはあの人の実力に気付いていないみたいだった。


 ――――それとなんだかさっきからオルフさんが生暖かい目で私の事を見ている様な気がするのは気のせいだろうか。

 まさか私があの人に一目惚れしたとかそんなとんでもない勘違いをしてるんじゃないだろうか。


「――――オルフさんなにか勘違いしてませんか…?別に私が気になってるっていうのはそういう意味ではな「いいんだいいんだ!マリーちゃんもそういうお年頃って事だろう…。何も恥ずかしい事なんてないんだ」……」


 (面倒くさいしもう放っておいてもいいかな……こっちはそれどころじゃないっていうのに…!)


 でもとりあえず私も彼の帰りを一緒に待つ事にした。あの人が変な行動をしたらすぐにでも周りに知らせられる様に。




 それからしばらくしてあの人が帰って来たのは夕暮れ時だった





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