はぁ...転職?
「らっしゃいっ!――ってあんたは昼間の…」
「どうもどうも。お忙しそうでなによりです」
昼間とは違い酒場はかなりの賑わいを見せていた。昼間の様なイヤな感じの酔っ払いの姿は無く、仕事終わりの村人達が集まり楽しそうにテーブルを囲んでいた。
(この時間にいないって事は、あいつらはもうここの宿を引き払ったのか?それとももうこの村から出て行ったのか?)
「いやー昼間は助かったよ兄ちゃん!今だから言えるが正直あの冒険者たちには困っててなぁ。一昨日ぐらいにあいつらの素行を見かねて注意したヤツがいたんだが……そいつはあいつらにぶっ飛ばされちまって今も家で療養中なんだ…
それ以降あいつらに関わろうとするヤツは誰一人いなくてな、だから兄ちゃんが絡まれた時はヒヤッとしたが、あの後戻ってきてすぐに荷物を纏めて出て行ったあいつらを見た時はスカッとしたもんだ!」
(そんな事があったのか―――あいつら思ってた以上に悪い奴等だったんだな…)
腐っても冒険者だ。戦いを生業にしている者がそうでない者に手を上げるなんて最低にも程がある。
今回に限っては絡んだのは間違いなくこちらの方ではあったが、そんな話を聞くと今回の自分勝手な行いもあながち間違いでは無かったのかも。なんて思えた。
「そうだったんだ。何故か娘さんが全然俺と話してくれないから余計な事でもしちゃったのかと思ってたよ」
「マリーが?あぁ、あいつは素直になれないだけだと思うよ。悪い子じゃないんだがちょっと気弱で心配性すぎるとこがあってな…」
宿娘の名前はマリーと言うらしい。心配というレベルでは無く警戒の域の様に思えるのだがそこは深く追求しない事にした。
(というかあいつら……最後の最後まで余計な事を…)
「まぁそれはいいや。実は俺あまり手持ちが無くてさ、衛兵さんにカエルの足が高く売れるって聞いて取りに行ってきたんだけど……これここで買い取ってくれないかな」
そう言い鞄からカエルの足を取り出した瞬間、店主の顔つきが激変した。
「ッ!――これアイアントードの足か!?是非とも買い取らせてくれ!これは唐揚げにするととても美味しくて大人気なんだよ!
でも如何せん取りに行ける人材が村にはいなくてな……
おーいみんなっ!今日はアイアントードの唐揚げが出来るぞー!」
まだ取引の途中だと言うのに早速お客達に宣伝を始めた店主。正直言い値がいくらであろうと取引するつもりだった為、特段問題は無いのだが少々気が早すぎる様にも思えた。
(……カエルの足だぞ?)
そんな俺の心の声こそが的外れだとでも言うべく所々から歓声が溢れ出す。
「おいほんとかっ?久しぶりだなぁ食べるの…こっち3つくれ!」
「俺もあれ好物なんだよ!こっちには4つだ!」
「あーあ、あいつ今日遅番か。可哀そうになぁ…じゃあその分俺が食っといてやるか!俺にも2つくれ!」
アイアントードの名前を出した途端に殺到する注文の嵐、オルフの話に一切の誇張が無かった事が証明された。
(――――でも俺はあの本体を見ちゃったからな…どうしても食べる気にはなれそうに無いな…)
「ありがとな兄ちゃん、こんだけあるなら銀貨10枚でどうだ?」
「――銀貨10枚!?」
ゴブリンをあれだけ倒した時の報酬が銀貨5枚弱。そう考えるとこの程度の数の足で銀貨10枚は破格と言わざるを得ない。
やはりサンダーランスとの相性が抜群だっただけであの魔物は中々に強いのかもしれない。
「えっと…うん、問題ないよ。あと宿も借りたいんだけど今ここの宿って空きあるかな」
「ちょうどあいつらが使ってた部屋がまだ空いてるからそこで良ければいいぞ!兄ちゃんには色々助けられたし今日の晩飯と明日の朝飯込みで銀貨1枚で構わねーぜ」
「それは太っ腹だな。じゃあそれでお願いしようかな。あ、それとお腹減ったからもう夕飯をお願いしてもいい?何があるかわからないしメニューは任せるから――― あ、カエルはいらないからっ!」
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