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世捨て魔王  作者: R氏
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はぁ...キモ



 どこかでDランクの魔法使いが盛大な勘違いをしているなんて夢にも思っていなかった俺はその頃――――



 色々と困惑していたオルフに大体の場所だけを聞き、アイアントードが大量にいると言われている湖に来ていた。

 その湖はナッシュ村から半刻程離れた所にあり、そこにあったのはかなり異様な光景だった。


 もし俺が生まれ落ちたのが最初からこの世界だったのならこんな気持ちにはならなかったのかも知れない……だが如何せん俺の中でのカエルという存在は全長が5cmから10cm程度、田舎の方に生息するとされている大きめのカエルですら全長30cm程度が限度だった筈だ。


 ――――それなのに今俺の目の前にいるカエルの様な見た目をした生き物は恐らく全長で言えば2m以上はある様に見えた。


(ストレートに言うとまじでキモイ……)


 オルフの説明によるとこの魔物達の足が大変に美味らしく、市場では割といい値で取引されているらしいが個人的には絶対に食べたくない代物だ。

 今からこいつらを倒して足を持って帰らなければいけない。というのは中々に気が滅入りそうな事ではあったが、それでもゴブリン達の臓物の海に比べれば幾分かはマシな様にも思えた。


 早速俺は覚えた?ばかりの魔法を使ってみる事に。


 ――――自分の手のひらから光り輝く槍が射出された瞬間は軽く感動を覚えた。

 美しい光の槍が狙い通りアイアントードの腹部へと突き刺さる。するとアイアントードの体が「ビクンッビクンッ」と痙攣したかと思うとそのまま大きな体を仰向けにし息絶えた。


「……こっち見んなマジで」


 生存確認をする為に近くまで歩いて行く、すると既に動きは無かったが大きくギョロッとした瞳は未だに見開かれたままだった。

 万が一にも反撃など食らいたくもないし、生きている魔物の足を引きちぎるなんて悍ましい所業が俺に出来る筈も無い。念の為に二発のサンダーランスを撃ち込んでおく。

 そして魔物が完全に息絶えたのを確認してから足を根元の方から切って収納する。

 デカいカエルの足を切断して持って帰るなんて元の世界にいた頃には考えられない奇行だが今は四の五の言っている場合では無い。この足が無ければ今夜の俺は宿無しなのだ。


(生きるって…。大変なんだな…)



 それから俺は持ってきた大きな鞄がギチギチになるまでカエルの足を詰め込み村へと戻ってきた。


「………おもッ」


 村に着いたのはもう日も暮れ空がオレンジ色に染まりきった頃だった。

 衛兵というのは夜まで出ずっぱりなのだろうか、村の入り口まで辿り着いたところで遠くにオルフの姿が見えた。

 こちらがオルフに気付いた様にオルフの方もこちらへと気付いた様で、目が合ったところでオルフがこちらへと駆け寄ってきた。


「おーいっ!遅かったじゃないかレイア!全然帰って来ないから心配してたんだぞ!」


 今日出会ったばかりの人間の事をここまで親身に気にかけてくれるオルフの優しさに、疲れていた心が少しだけ楽になった様な気がした。


「悪い悪い。カエルの数が思ったより多くてさ…」


 そんな会話をしていると、詰所の奥の方にもう一つの人影があるのに気付いた。

 一目しか見ていない為に確証は無いがあれは恐らく宿屋の娘だろうか。 

 今は夕飯時で店も忙しいであろう時間だ。何故彼女はこんな所にいたのだろうか。


「その袋の中ってまさか…?」


「ん、カエルの足に決まってるだろ?お前が言ったんだろ?カエルの足が高く売れるって」


「いや言ったは言ったが…だってお前Gランクだろ?アイアントードなんて倒せる筈ないんだが…」


 当然の様にオラフの視線が俺が抱えているパンパンの鞄の方へと向いた。

 そもそも何故あの魔物の討伐が困難と言われているのだろうか。今回の自分の狩り方はあまりにチート気味ではあったが、逆にあの魔物にどうすれば負けるのかが俺には想像出来なかった。


「酒場にいた冒険者に教えて貰った雷系の魔法を撃ちこんだら簡単だったよ。魔法使いだったら皆大して苦も無く狩れると思うよ」


 笑いながらそう言う俺に、オルフでは無く後ろにいた宿娘が返事をした。


「そもそも普通のGランクの冒険者に雷系の魔法なんて使えないって事なんじゃないですか…?

 それに―――さっき貴方と揉めた冒険者さん達が言ってました。あいつは普通じゃないって!化物だってっ…!」


 後半に近付くにつれ鬼気迫る様な表情で声を荒げていく宿娘。

 俺達の諍いに割り込んできた時も必死な表情をしていたが、その時とはまた違った様子の彼女の必死さに少し気圧される。

 だが少なくとも彼女と俺は敵では無い。むしろ宿の関係者ならば一番懇意にしたいくらいだ。 


「あいつらの言う事なんか真に受ける必要ないよ。とにかく俺は今日の宿代も無いぐらい貧乏だからさ、この大量のカエルの足を買い取ってくれない?君のとこの酒場でも"コレ"使うでしょ?」


「……確かにアイアントードの足は料理に使いますけど……わかりました。じゃあとりあえずお父さんの所まで案内するので着いてきてください…」


 そう言い彼女は1人で先に歩いて行ってしまった。


「なにがなんだかわからんが…仲良くしろよ?」


「俺だってよくわからんわ…まぁとにかく行ってくるよ」


 困惑する残された男二人、だがこの二人ではいつまで経っても原因の究明も解決策を導き出す事も出来そうに無かった。 

 やがてオルフは同情する様な視線を俺に送りながら自分の持ち場へと戻って行った。


(――――とにかく俺も行くかー)


 そう思い村の方を見てみると、胸の前に両手を当て不安そうにこちらの様子を伺っているう宿娘がいた。


「はやく来てください…」




 ――――え、俺の事嫌い?






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