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世捨て魔王  作者: R氏
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はぁ...幻術?



「じゃあ先にどっちかが気を失うか参ったって言うまででいい?」


「あぁいいぜ。まぁそれで攻撃をやめるかどうかはその時になってみるまでわからねぇけどな。発動しちまった魔法は急には止められねぇからよぉ」


 Dランクの魔法使いは如何にもな悪そうな笑みを浮かべそんな事を言ってくる。


(――――それってルール確認した意味なくね…?)


 だがそんな事をヤツに言ったところでまともに話にならないのは目に見えている。最早こいつの頭の中に『生意気なガキを殺す』以外の事は無いのだろう。


「じゃあそこの剣士さん。開始の合図頼むよ」


 当然の様に店内からついて来ていたスケロドル?のメンバーであろう剣士に開始の合図を任せる。


「はじめだ!」


 任せるや否や開戦の合図が告げられる。そしてまるでそうなる事がわかっていたかの様に呪文の詠唱を始める魔法使い。


(やっぱりどいつもこいつも腐ってやがる。類は友を呼ぶと言うがその通りだな)


「أنا أسافر وحدي أنا لا أسافر وحدي」


 それなりに高威力の魔法を使おうとしているのか、フライング気味に詠唱を始めていた魔法使いの詠唱はまだ続いていた。

 まじまじと詠唱している魔法使いの姿を見ていると、やはり無詠唱が如何にチート性能なのかがよくわかる。 


(――――どうしようかな。とりあえず魔法見てみたいし待った方がいいのかな…)


 そう考えてはみたものの、流石に雷の速度で魔法を放たれれば避けるのはまず不可能だ。

 そんなリスクを冒さずともこの勝負に勝てば魔法は見せて貰える約束なのだ。となれば親切に魔法を撃たせてやる必要も無い。 


「―――ほい」


 そう結論を出した俺はとりあえずファイアーボールを一つだけ具現化し魔法使いの方へと放った。


「っな!無詠唱!?」


 すると、魔法使いはせっかく頑張っていた魔法の詠唱を中断し横っ飛びでかろうじて躱した。


「ざけやがって…だったら…っ!أنا أسافر وحدي أنا ل」


 止まっていては一生邪魔され続ける事に気付いたのだろう。魔法使いは俺とは真逆の方へと駆け出した。そして驚くべき事に奴は走りながら詠唱を始める。

 マルチタスクというやつなのだろう。こちらにも気を配りながら詠唱を続けている目の前の魔法使いの姿を見て、俺は素直に賞賛していた。


(やっぱり奴も只者ってわけでは無いんだな。少なくとも今の俺にはあんな器用な真似は出来ないだろうな)


 だがこうなってくるとなんだかこの戦いが長引きそうに思えてきた。

 なんだかんだで中々の時間を食ってしまっている為これ以上の時間の浪費は避けたい。戦いを続けていれば他にもナニか驚く様な事を見せてくれる可能性もまだあったが、今回は一気に力の差を見せつけ相手の心を折る事にした。


 ボボボボボボボボボボボボッ!!


 突如として俺の周りに出現した二十個の炎の槍、そんなわけのわからない光景を目の当たりにし唖然とする魔法使いとその仲間達。

 あまりの衝撃に魔法使いは再び詠唱を止めてしまっていた。


「で、まだやる?降参するなら"これ"消してあげてもいいけど」


 優しさでそう告げた俺に対し、目の前の魔法使いではなく周りの仲間達からヤジが飛ぶ。


「はったりに決まってる!あんな数のファイヤーランスありえねぇっ!どうせ幻術かなんかだ!騙されんな!」


 聞き慣れない単語が聞こえてきた。


(幻術……そんなものもあるんだ。是非使ってみたいな)


 勝負の最中ではあったが最早俺の興味は目の前の魔法使いよりも、まだ見ぬ新しい魔法の方へと向いていた。

 だが余計な事を吹き込み、目の前で愕然としている魔法使いのやる気を再び上げられても面倒だ。

 外野を手っ取り早く黙らせる為に、喚いているスキンヘッドの剣士の方へ火の槍を一つ飛ばす。


「――――なっ!」


 まさか自分の方へと攻撃が飛んでくるとは思っていなかったのか、冒険者とは思えない鈍重な反応でギリギリ攻撃を躱す剣士。


 ドーンッ!


 当然幻術などでは無い為そこには一メートル大のクレーターが生まれていた。

 口ではなんだかんだと言っていてもやはり恐いものは恐いのだろう。慌てて避けた剣士の姿が変に滑稽に見え笑いを誘った。


「ふふっ、幻術だとしたら地面にそんな穴が開く事はないんじゃないかな?――――で、どうする?」


「――――ま…、参った!降参するっ…」


 最後の慈悲で聞いているのが伝わったのか。そう言い膝から崩れ落ちる魔法使い。

 そしてそれは奴にとって正しい判断だった。一応俺はヒールも使える為、死なない程度になら怪我させてもいいと考えていたからだ。


(なによりもこれ全部飛ばしてたら、村への被害もあっただろうし良かった良かった)



 それからすぐにスケロドルの他の面々を散らし魔法使いと二人っきりになると、店内の時とは別人の様に萎らしい顔になった魔法使いが尋ねる。


「で……俺は何をすればいいんですか?」


「じゃあさっき言ってたサンダーランスって魔法を一回空に向かって撃ってみてくれない?」


「……わかりました。أنا أسافر وحدي أنا لا أسافر وحديأنا أسافر وحدي أنا لا أسサンダーランス!」


 長い詠唱を終え空に向け魔法使いが手をかざした瞬間、黄色とも白とも取れる様な美しい色をした槍が空へと駆け上る。


(――――すげー…綺麗だな雷魔法…)


 だが思っていたよりもソレは普通の速さだった。ファイヤーランスより少し早いぐらいのその速度に多少のガッカリ感は否めなかった。


(まぁさすがに本物の雷と同じ速さだったら強すぎるか…)


「おー!凄いなっありがとう!じゃあもういいよお疲れ」


「えっ、もういいんですか?教えるって言ってませんでしたっけ?」


 まさかのお役御免に面を食らっている様子の魔法使い。それも至極当然の反応なのだが細かい事情を話してやる義理も時間も無い為、多少強引ではあったが会話を終わらせる。


「いいからいいから。じゃあ俺はもう行くからあんたも戻っていいよ――――あとさ、楽しむのはいいけどあんまり周りに迷惑かけない様にしろよ?」


 最後にそう告げ、詰所の方へと走り出した俺の事をポカンとした表情で魔法使いは見ていた。



「さー、さっさと狩りまくって帰って寝るぞー」




 そして一人ポツンと取り残されたDランクの魔法使いは誰に言うでもなく呟く。


「なんだったんだ…無詠唱にあの魔力量…


 S級――――もしくはそれ以上…?」





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