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世捨て魔王  作者: R氏
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はぁ...誰?



「酒場酒場…っと、あれかな?」


 レスティアの冒険者ギルドの中にあった酒場よりもだいぶ質素な感じではあったが、村の中央辺りにそれらしき雰囲気の建物を見つけた。

 時間は限られている。もしこのまま夜にでもなってしまえば流石に狩りだなんだと言っている場合では無くなる。


 さっそく酒場の扉を開いてみると、すぐにそれらしき奴等を見つけた。

 扉が開いた事にも気付いていない様子のその冒険者達はまだ昼過ぎだというのに随分と楽しそうにどんちゃん騒ぎをかましていた。

 見た感じあからさまにマナーも悪そうだし、店の人や周りの客にもだいぶ煙たがられている様に見える。

 だが腐ってもDランクの冒険者、そんな奴等に注意出来るような者がこんな小さな村にいる筈も無かった。


「ぎゃははは!何言ってんだよお前馬鹿じゃねえの!?」「いやあの女ぜってぇ俺の事好きだって!」「おーい酒が空だぞ!さっさと追加の酒を持ってこい!」


 冒険者ギルドの酒場ならまだわかる。周りも皆冒険者の為、粗雑な言葉遣いも目立たないし何かあれば喧嘩して個人間で済ませればいいのだから。

 だがここは普通の村の酒場だ。そんな場所で誰も文句を言ってこないのを良い事に横暴にしている奴等の姿は正直不快に映った。


 (あんな感じの奴等だったら別に気を使って下手に出る必要もなさそうだな)


「ちょっといいかな。あんたらがアイアントード倒せるって聞いたんだけどほんと?」


 突然見知らぬガキにタメ口で声をかけられたのだから無理もないが、そいつらは露骨に不機嫌そうな表情を浮かべこちらを睨みつけてきた。


「あ…?てめぇ誰だよ。たりめぇだろうが!俺らを誰だと思ってやがる!D級PTのスケロドル様だぞ?」

「そもそもあんなの倒せねぇやつの方が信じられねえよ。あんな雑魚俺のサンダーランスでいちころよ。い ち こ ろ」


(いちいち癇に障る喋り方をする奴等だな…こういうのがいるから冒険者って悪いイメージを持たれがちなんだろうな)


 やはりトードというだけあってアイアントードは水属性の様だった。今の自分の魔法のレパートリーの中に雷魔法は一つも無い。

 そうなってくるとやはり、この目の前の大口を叩いている魔法使いのサンダーランスという魔法を覚えておきたいところだ。 


「そうなんだ。じゃあ悪いんだけどさ、そのサンダーランスって魔法一回見せて貰えないかな」


「あぁ?なんで俺がんな事しなくちゃいけねぇんだよ!てめぇみてぇな弱そうな奴に魔法を教えてたらあと一年はこの村にいなくちゃいけねぇだろうが」

「ぎゃはははったしかに!こいつめっちゃ弱そうだしなぁ」


 変に気を使う必要も無い。と判断したこちらの要望もだいぶ不躾ではあったが、それにしてもここまでの煽りで返されればやはり腹立たしくも感じる。

 ランクとしては格上だとしても奴等からは強者特有のオーラの様なモノを微塵も感じなかった。

 こちらとしても悠長に構えている時間は無い為、奴等が確実に降りないであろう提案を持ちかける事に。


「じゃあ俺とあんたで勝負しない?それで俺が勝ったらサンダーランスって魔法を見せてよ」


 先程まではこちらの事を不快には思っていただろうがそれでもまだ嘲る様な笑みを浮かべていた冒険者達。だがその余りにも舐めた提案を持ちかけられた瞬間、明らかに雰囲気が変わった。 


「何言ってんだてめぇ…?てめぇ如きが俺に勝てる気か?ちょっと世間を知らなすぎんじゃねえか?ガキぃ」


 ここまで来て提案を躱されるわけにもいかない為、俺は意図的に一線を越えた。


「いいからやんのかやらねぇのかハッキリしろよ。まさか―――びびってんの?」



 ――――その瞬間、テーブルが勢いよく宙に浮きひっくり返った。


 あの化け物の本物の殺気に当てられ続けた俺にはこんな程度の殺気なんとも無かったが、周りのお客さん達は単純な恐怖からか、それとも巻き込まれない様にか揃って皆俯いていた。


(……なんかすいません…)


「…ころす。表出ろや」


「いいよ。早く行こう」


 そんな今にも一触即発の空気だった二人の間に、突如一人の女性が駆け込んできた。


「やめてくださいっ!これ以上…お父さんの店に迷惑をかけないでくださいっ!!」


(……いや誰?服装や言動から察するに―――酒場の娘さんとかか?)


 娘さんなんて言っても歳はこちらと大して変わらないぐらいに見えるが。

 少し気の弱そうな垂れガチの瞳に綺麗に整った鼻筋。絶妙なバランスで配置されたそれぞれのパーツに、髪は綺麗な栗色を長めのボブカットにしてある。

 大きな声を上げて俺達の間に割り込んできたその子の身体は、よく見てみると少し震えていた。

 どう考えても普通の女の子にしか見えないこの子が、こんな張り詰めた空気の中に飛び込むには尋常じゃない勇気が必要だった事だろう。


 泣きそうな顔をしていたその子を安心させる為に、出来る限りの優しい表情を作り笑いかける。


「大丈夫だよ。すぐ終わるしお店に迷惑もかけないから」


 そう声をかけると、彼女はとても驚いた様な表情を浮かべていた。


「おい!さっさと来いよ!」



 まだ彼女の様子が気になってはいたが、外からそんな怒鳴り声が聞こえて来た為俺は外へと向かった





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